ハナコ・ブーヒー登場
1
国会の周りをデモ隊が取り囲んでいる。五万人はいるだろうか。
それを高いビルの窓から眺めている数人の男もいる。彼らは、ピピカドラグィラルを召喚した場にいた者達の一部だった。
「チッ、うるさい奴らだ。愚民どもは黙って我々に従っていればいいものを。まあ、マスコミには報道しないよう言っておいたから、国民に運動が広がっている印象はないだろうがな」
「あまり奴らの声が大きくなると、面倒ですね。ピピカドラグィラルを使ってみてはいかがでしょうか?」
「ほう、ピピカドラグィラルか……。しかしあまり派手にやると、いろいろまずかろう」
「ピピカドラグィラルのニンゲン蒸発光線で蒸発させられた者は、人々の記憶や文書などからも消えるのです」
「ほう、そこまで使えるとはな」
数分後、国会の周囲からは人の気配が消えていた。
2
「おう、辞めるか土下座するか選べや」
「ぐむっ」
「どうすんだ?」
三輪は寒い季節だというのに、身体中から汗を流していた。彼の目の前には、何かの書類を持った恰幅の良い男がいた。
「黙っててもわからん。答えろ」
「む、む、む、や、辞めます」
三輪が答えると、恰幅の良い男はニヤリと笑った。
3
ブタ酒場Tonのドアが、軽やかに開けられた。入って来たのは、リボンを着けた化粧の濃いブタだ。
「いらっしゃいまし」
「マスター、お久しぶり。あら?……三輪さん?……なんで隅っこで酔い潰れてるのかしら」
「なんでも、暇を出されたらしいです。しかも、自分の都合で急に辞めた扱いにされたらしいですよ、ハナコさん」
マスターとリボンを着けたブタのハナコは、ヒソヒソと話していた。
「おう、今日も来てやったぜ、ぶふぃ!」
勢いよくドアが開けられ、ブタ族の神ゴッドが現れた。ライオンすら怯えかねない目付きの悪さである。
「あーん?三輪じゃねえか、忙しくてしばらく来ねぇとか言ってなかったか?」
「ゴッドさん、今は声をかけない方が……」
マスターはいらっしゃいも言わずに、ゴッドを止めようとした。
「なーに言ってんだ、マスター。おい!起きろ、三輪!」




