プロローグ
「……だんだん眠くなってきた」
「ん……私たち頑張ったもの」
開けた草原。夕暮れの朱が寝そべる二人を染め、影を落としている。
二つの影は、互いにその手が繋がっていた。
「……私、もう少し平凡な人生だと思ってた」
「あなたに巻き込まれたせいで私も大変だったけど?」
ふ、と小さく吹き出す。
「せめて四天王になったくらいで、終わってくれたらよかったんだけどな」
「そうね……と言いたいところだけど、よくよく考えてみれば全部あの人のせいじゃない?」
「んー……。まあ、そうだけどさ。でも、あの人のおかげで普通じゃできないこと、いっぱいできたよ」
「……ウィディナらしいわね」
二人は笑った。
「でもさ、でもさ、私、めちゃくちゃかっこよくなかった?」
「魔帝より全然すごいことしてる。……というかおかしいでしょ。四天王になって、なのに勇者になって、戦争は終わらせて、しまいには神殺し? ……頭悪い男の子が考える夢物語よ、これ」
「……並べると確かにそうだなあ。ちょっとありえないかも」
柔らかな風が頬を撫でる。
片方。唐紅の髪を広げ、ゆっくりとその顔を動かした。視線はかの央都がある東の地平線から、頭上北に長くそびえる山脈をとらえ――右に寝そべる白髪を眺めた。
「……ウィディナ。ここ、どこだかわかる?」
え、という声。
何を今さら、と、そんな雰囲気を含んだ声だ。
「どこって……クルメアでしょ」
頬に手を添え、少し悩む。
数瞬の間。
何かにたどり着いたかのように目を開き、そして弾かれたように隣を見た。
「――あ、そういうこと?」
「きっとそうだと思うけれど」
空を眺めた。悠々と流れる雲は橙や紫に染まり、その存在を空に溶かしている。
「全部つながってたかあ。……なんか癪」
「癪って」
笑った。
「……ねえ、ウィディナ」
「ん、なあに、カルラ」
握る手が少し強まった。
「……きっとまだ時間はあるわ。だから、私に聞かせてよ。ウィディナが経験してきたこと」
「いいね。私もちょうど聞いてくれる相手が欲しかったんだよ」
そうだなあと、少し悩んで。
「じゃあ、教えてあげる。私が経験してきたこと。まずは――」




