繋がらない思い
理想学園の始業式。 登壇には、新生徒会長――倉石瑞稀が立っていた。
「……前生徒会長の川端ことねは、この学校の生徒たちの自由を奪った、私達にとっては罪人です。……しかし、私は思いました。彼女は孤独な一人の女性だったと。……もしかしたら、構って欲しかっただけではないかと……」
瑞稀は語る。 前生徒会長のことを――。
アタイは、体育館の隅っこからその姿を眺めてた。
知った風な口を利きやがる。 あの女が、神子様の何を知ってるってんだ。
本心? 構って欲しかった? 笑わせる。 アタイの神子様を、勝手に「孤独な女」だなんて枠にはめるんじゃねェよ!
――けど。 瑞稀のヤツ、なんであんな顔で喋ってんだろうな。まるで自分のことみたいに。
新しいクラスに、櫻井美羽って転校生が来たらしい。 アタイは今年瑞稀や美羽と同じクラスらしい。
担任が来て、生徒たちが席に着く。 一ヶ所だけ空いてた席に、その転校生が入ってくる。
金髪のサラサラヘアーに白いカチューシャ。 動きは、お嬢様そのものだ。
「よし、入ってくれ! 自己紹介してください」
「櫻井美羽」
「うん、続きをどうぞ」
「特にありません。 席は……あちらですね」
そう言って、櫻井はさっさと席に座っちまった。 担任が苦笑いで諦めてやがる。
ハッ、いい度胸じゃねェか。 お嬢様?
担任が出てった後、瑞稀が美羽のとこに向かう。 生徒会長のお出ましだ。
「櫻井さん、貴方の態度はいかがなものかと思います。 生徒会長として、見過ごすことはできません。 ……しかも貴方は、副生徒会長に志願したそうですね?」
「……貴方は。……別に関係ありません」
そう言い捨てて、櫻井はどっかに行っちまった。
瑞稀のヤツ、振られた犬みたいな顔してやがる。 それでも、目だけはギラついてた。
――絶対に仲良くなってやる、とでも言いたげにな。
アタイは鼻で笑った。 仲良く、ねェ? せいぜい頑張りな、生徒会長サマ。
それから、季節が過ぎた。 あっという間に、二学期の初日だ。
アタイはまた、あの二人を見てた。 校舎裏のベンチ。 少し遠くで騒がしい声が聞こえる場所だ。
瑞稀が、美羽に声をかける。
「……櫻井さん、隣いいかな?」
「………どうぞ」
美羽は大きなカバンをベンチに置いて、儚げに座ってる。 瑞稀はちょっと離れたとこに腰を下ろした。
「櫻井さん、なぜそんな大きなカバンを持って来てるの?」
「…………別に」
沈黙。 美羽ってのは、いつもそうだぜ。 瑞稀たちが同じクラスになって、もう半年だっけか? なのに、櫻井は一向に心を開かねェ。
なにが美羽をそうさせてんのか、アタイには、さっぱりだぜ。
そうだ、瑞稀もボッチなんだ。 せっかく生徒会長になったのによ?
いや、生徒会長になったからこそ、か?
瑞稀は、空を見上げてた。 霞んでて、よく見えやしねェ空をな。
「………どいていただけるかしら?」
「あ! ごめん! 邪魔だったよね! じゃあ生徒会室で!」
「別に……」
美羽がなにか言いかけてたけど、瑞稀はもうその場を後にしてた。
聞こえてなかったのか、聞かねェふりをしたのか。
去っていく瑞稀の背中が、なんか言いたげに揺れてた。
瑞稀のヤツが、そんなことを考えてるのが、アタイには理解できねぇ。
『ヒトミ、ワスレルナ……ゾウオヲ、アツメロ』
「……」
風が、少し寒い。 季節はまた、秋になろうとしていた――




