今宵儀式が始まる⋯⋯
「今日こそは、ここを通してもらうわ! 柳田健太!」
夏休みに入ってから彩乃は毎晩、山の祠への入り口へやってきていました。
そして今夜も、健太に勝負を挑みにきたのですが、代わりにいたのは、健太の母の美月でした。
「彩乃ちゃん。 今日は健太は用事があって出掛けるの。 私なら相手になるけど⋯⋯どうする?」
「健太のお母様! ⋯⋯いえいえ、今日は諦めて帰ります!」
「そう? ⋯⋯ねぇ、せっかくだから、うちに寄って見る? 健太の小さい頃の写真とかあるんだけど⋯⋯」
「え! 本当ですか! ぜひ見たいです。 お邪魔します!」
「ふふ、健太ったら。 また女の子を好きにさせちゃって……」
こうして、健太の知らない間に、彼の恥ずかしいエピソードが彩乃に知られるのでした。
一方、こちらは、瑞稀たち生徒会メンバー。 場所は、学校の一室でした。
「本日は夜の遅い中、集まっていただきまして、ありがとうございます」
「瑞稀。 本当ですわ! ……それで、こんな時間になにをなさいますの?」
「我ら、生徒会メンバーは二学期に入ると、毎日、忙しい日々が始まります。 その前に、今回はみなさんと交流を深めて仲良くなりたいと思うんです!」
そういうと瑞稀は、メンバーの顔を見渡しました。 思案顔の美羽、ドヤ顔の幸子、興味深そうな顔の結衣、そして訝しげな表情の健太。
「⋯⋯ここはなんか不気味な雰囲気がしますわ⋯⋯」
「理由が聞きたいわ。 私の約束を蹴ってまで、やる価値あるのかを……」
「ふふふ、ここは我が説明しよう!」
そこで堂々と前に出た幸子は、黒いマント姿でした。 幸子は瑞稀に視線を合わせて頷きました。
「これから我らの主、エターナルパーフェクト様をこの場に召喚する!」
「⋯⋯はい、ということでやって行きたいんですけどね⋯⋯」
「何を言ってますの? それってただの貴方達の空想の存在ですわ!」
「それがそうとは限らないんだよ⋯⋯この日記を見てよ!」
瑞稀が明らかに古くてボロボロな紙の束を取り出してきました。
「なにかしら、これ……」
「⋯⋯倉石。 お前、これをどこで手に入れたんだ?」
「柳田番犬。 これは、生徒会室の中にありました……」
「これぞ、選ばれし者の証! 我らはこの文献の謎を分析した。 その結果、この魔法陣と祭壇を用意するに至ったのだ!」
幸子はそういうと魔法陣と祭壇を指差しました。
「これから指示を与えますので、その通りに動いていただきます」
「嫌ですわ! そんなあやしい行為、したくありませんわ!」
「大丈夫だよ、ミウミウ! 貴方の役目はお供え物だから⋯⋯」
「余計嫌ですわ! ……は! 供物ってそういう意味でしたの?」
「⋯⋯俺はなにをするんだ?」
「ふふふ、焦るでない。 我々はこの儀式を通じて、一致団結するのだからな!」
そう言うと、幸子は、用紙を全員に渡すのでした。
「エターナルパーフェクトさま~、こんばんは~。 あれれ~、声が聞こえないよ~、もう一度~」
「フグ、ブク」(こないでくださいまし)
『今宵の闇夜に、我ら貴方様へ謁見を申す者なり』
「それ即ち、我ら、貴方様の家臣なり」
「その姿を我らに現せ!」
『エターナルパーフェクト』
瑞稀と幸子が声を合わせると、魔法陣が輝き始めました。 そしてそれらが、一箇所に集まりました。
「なにこれ……」
「マジでしたわ!」
『え~本当に光った! 冗談だったのに』
「なに、息ぴったりに発言していますの! 早く、私を助けてくださいまし!」
「待ってろ!」
光が美羽の体へ迫るその時、健太が美羽を片手で抱えて跳躍。 そして、もう片方で謎の印を光へ投げ入れました。
「消えろ! お前の居場所はここではない。 一閃の光、万邪を祓う。 悪霊退散!」
「すご! まじで映える! 写真とろ! はいピース!」
「さすが、サッチー! ⋯⋯わあ、すごい綺麗ですね」
「なに、呑気に写真を眺めていますの!」
写真について盛り上がっている中、健太は今の現象について考えていました。
「⋯⋯今の悪霊、まさか名前に釣られて? エターナルパーフェクトか⋯⋯」
「凄かったぞ、柳田! さすが、番犬! 頼りになるぞ!」
「ええ! 我々は今回の出来事で一致団結できました!」
「……ふん。 霊力だけは認めてあげる……」
健太を褒めて一件落着の雰囲気の中、美羽が文句を言い出しました。
「映える写真撮れた! ⋯⋯じゃあねぇですわよ! あのままだと、私の命が危なかったんですのよ!」
「ごめん、ミウミウ。 ⋯⋯まさか本当に発動するなんて⋯⋯」
「本当にびっくりだよね? 世の中不思議があるもんだわね?」
「貴方達、許して欲しかったら、これから二次会をするんですの!」
こうして生徒会メンバーは、二次会のファミリーレストランに行くのでした。
「倉石会長。 ⋯⋯その文献、俺が預かってもいいか?」
「どうぞ。 でも本当に柳田先輩がいて助かりました⋯⋯どこかで修行を?」
「家族代々、引き継がれているからね……」
「ほう⋯⋯柳田よ、今度我にもその呪術を教え賜え!」
「アンタたちには、教えないよ! ⋯⋯教えたらとんでもないことになるから」
そういうと健太は、先に教室を後にしました。
「それじゃ! 二人で片付けをしましょうか!」
「そうですね。 楽しかったよ、瑞稀」
「え? サッチー」
残った二人は、何故かドキドキが止まりませんでした。
「サッチー⋯⋯」
「瑞稀⋯⋯」
『素晴らしいことです。 青春とはなんと美しいものでしょう⋯⋯』
「「ギャー」」
青春は素晴らしいですよね。 つられて、呼ばれてしまいました。




