人の表と裏 ーー瑞稀視点
私は今、田中書記の家の前に来ていた。 理由は簡単。 この前、生徒会室で発見した書物についてだ。
そのノートの名前は『サッチーの暗黒書物』だ。
ーーそう。 この書物は田中書記の私物だ。
そしてノートは今、私の手元にある。 なぜかって?
理由は、夏休み前に戻るーー
生徒会室で片付けをしていた私は、偶然このノートを見つけたんだ。
とりあえず、中の日記を読んで見ようと思ったんだよ。
ーーああ、平八郎様。 私がこんなにも恋焦がれているのに、貴方はいつも小次郎のことばかりで、お菊は寂しゅうございます。 貴方と過ごす歳月は、とても愛しく楽しいはず。 ですが、私は思いを漲らせております。 今夜貴方の寝床に私は参ります。 きっと新しい子を授かることが出来るでしょう! 平八郎様と私の新たな繋がり、きっと今日は忘れられないーー
「くっそ!」
ノートの内容を読んでいる途中だったけど、苛立って投げた。
「⋯⋯どうした、倉石よ?」
「リア充め⋯⋯」
「生徒会長?」
「はぁ! ⋯⋯クク、ワルザベスさん。 ーー発見いたしました。 こちらはエターナルパーフェクト様の降臨儀式の書です」
「……えっと、それはね……」
ーー最悪だ。 間が悪いよ、田中書記!
私は何事もなかったように、ノートを拾い上げる。 あくまでポーカーフェイスでね。
「こちらの暗号を解読し、我が邪神ーーエターナルパーフェクト様を降臨させましょう!」
「え? そこに書いてあるのって……」
田中書記のだった! だったら余計駄目じゃん。 私、思いっきり投げたよーー
「ええと。 このノートは、誰の所持物か分かりませんが、ここに書いてあるのは、呪わしい暗号でした……本当誰だろう? 持ち主がわからないな〜」
「……そうだね〜」
私が、重ねてそういうと、田中書記は折れてくれた。
その後、私たちはこのノートについて話し合うことになり、今日になったんだ。
「はい。 田中です」
「倉石で〜す」
「……そうですか。 おかえりください」
「どうしてですか! 田中書記!」
「⋯⋯私は、仕事とプライベートはわけるタイプだからです」
「そんな! 冷たいですよ!」
ーーしょうがないな〜 私はノートの表紙を見る。
そこに書いてあるノートの名前は『サッチーの暗黒書物』だ。
ーーそう。 間違いなく、この書物は田中書記の私物だ。
本当は最初から、知ってたよ? でもさ〜 本人の前で私物をぶん投げたんだよ! 知っててぶん投げたことを自白したら、絶対に怒られるじゃん!
でも、この状況なら仕方ないよね? 私は、ノートの朗読を始める。
「我、此処至るは至極の⋯⋯」
「え! ちょっと待って! ここじゃ駄目! 近くの公園行きましょ! そこで、じっくり話し合おうじゃないか!」
「そうですか! よろしくお願いします!」
それなら、早くそう言ってくれたらいいのに〜 意地悪な書記さんだなぁ。
さて、二人そろって公園に来たのはいいけどーー
「⋯⋯⋯⋯」
田中書記? さっきから私とノートばかり見て、圧が凄いですよ?
ーーでも、ここで私がノートを先輩の物だというと、私は怒られてしまうに違いないよ! どうにか誤魔化さなきゃーー
う~ん。 そもそもなんで、彼女はこちらを睨んでいるの?
ーー私、もしかして、田中書記のこと誤解している?
そんなのよくないよ。 夏休みが終わったら、文化祭だよ! 生徒会のみんなで一致団結しないといけないのに!
そうだ! ここは生徒会のメンバーの親睦会をするべきだよ!
そう思った私はさっそく、訝しげな表情の田中書記に話しかけた。
「ワルザベスよ、今宵は、特別な夜になるだろう。 共に祝おうぞ!」
「え? なに? 今夜、なにかするの? 私も付き合うこと確定?」
「ふ、当然だ奏者よ! 信仰者と奏者はセットだぞ! 我ら、エターナルパーフェクト教団の集会だ!」
決まった! 完璧な台詞を言ったね!
これで田中書記の機嫌は取れたはずーー
あれ? めちゃくちゃ怒ってる! どうして?
「瑞稀ちゃん。 こんにちは! 元気?」
「あ、ことね! こんにちは、偶然だね」
ことね! 救世主だよ、ありがとう! 私はことねを神のように見つめる。
「えっと、夜にみんなで集まるの?」
「うん。 今日は生徒会のみんなで集まる予定なの、生徒会の二学期に向けたレクリエーションだよ」
「あの⋯⋯それならそうと、最初から言ってくれませんか? 私も、貴方に合わせたくても、ボケられないじゃん」
ボケる? どう言うことだろう?
「田中先輩は、普段はそう言うキャラじゃないんですか?」
「え? 私、いつもそういう人だと思われてるの? あれはパフォーマンスだって! ⋯⋯もしかして倉石、私をそういう人だと思ってたの?」
「あれ? 田中書記はそうじゃないの? 私てっきり⋯⋯」
「瑞稀。 人には裏と表があるのよ」
姫様! さすが、説得力ありすぎます。
「⋯⋯まあ。 アンタたちは案外、仲良くなれるんじゃないの?」
「姫様!」
「なにかしら?」
「ありがとうございます!」
「ちょっと、離れなさいよ」
まあ、姫様ったら含みのある発言だけして、いけずですわ。
「とにかく! 二人で話し合って仲良くしてね!」
それだけ言うとことねは去って行った。
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
よし! こうなれば、勢いでなんとかするしかない!
私は、頭の中で作戦を立てるのであった。




