原作世界 監禁された男 使徒の暗躍
ここは理想学園の地下。 ここで生活する日々を送っている、一人の男がいました。
男ーー高坂湊は、自分がどれくらいの間、この場所にいるのかわからなくなっていました。 日差しの入らない、この場所で彼はただ生かされているのでした。
彼の頭の中に、彩乃との思い出が浮かびます。 彼女が入院している病院に行き、会うことが、湊の生きがいになっていたのです。
ーーそして、今抱いている気持ちはきっと彼女を強く想う感情。
つまり、恋心でした。 湊は、彩乃に恋をしたのです。
今頃、どうしているだろうか? 俺のこと心配してくれているかな?ーー
そう考えていた時、部屋のドアが開きます。 そして、中に入って来たのは、自分にこの監禁生活をさせている女性ーー川端ことねでした。
「ここの生活には慣れたかしら?」
「⋯⋯」
「まだ頭の中で、桐原彩乃のことを考えているようね」
「⋯⋯」
「⋯⋯ねえ、ここから出られる方法を教えてあげるわ」
「⋯⋯方法⋯⋯」
湊の心に一瞬、希望が芽生えました。 しかし次の言葉で消え去りました。
「桐原彩乃のことは忘れなさい。 そして、私のことだけ考えるの……」
「⋯⋯」
「なに? 簡単なことでしょ? ⋯⋯貴方は私の駒。 忘れたの? 貴方のせいで私が今、こうなっているということを……」
「それは!」
ことねは、当然の事実を告げるように、湊に擦り寄りました。
「ねえ、湊⋯⋯寂しいよ。 そばにいるのに、別の女のことを考えるなんて。 私はこんなに、湊のことが好きなのに……」
「⋯⋯!」
「そう、貴方は私のお世話係。 ⋯⋯私からは絶対に離れられない」
「⋯⋯お嬢様」
「……貴方が、私だけを考えるまで、ここから出さない……ふふふ」
「……」
それからしばらく地下の中で、川端ことねの笑い声が続くのでした。
◇◇◇
ここは夜の校舎。 そのとある教室に、黒装束を羽織った集団が集まっていました。
「……アネキ。 柳田の犬が校内に潜入してきています」
「我々が、アイツらの擬態をするのにも限界が……」
集団は、真ん中にいる、一人の少女ーー吉澤ひとみに話しかけています。
「ふん。 我々の神子様の行為を妨害するつもりか? 実に愚行だな……」
ひとみは椅子に腰掛けて、苛立っていました。
柳田の暗部が、神子ーーことねの行為に気づいたのです。
ことねが自由に学校を蹂躙できた理由。 それは、ことねの身分が特別であるからです。
ーーしかしそれは、湊と柳田秀五郎の了承があることが前提だったのです。
湊を監禁して、強引に従えていることが、公にバレれば、神子様も処罰の対象になるかも知れません。
「チィ。 まずいな……このままでは神子様の、影響力が落ちちまう。 ……ここはアタイが目立つ番だなぁ。 神子様がこの学園で一番だと、アピールしないとな!」
ひとみは教室の一角にある、理想学園の像『エターナルパーフェクト』に祈りを捧げます。
その傍には、とあるお手製の像がありました。 これは、ひとみが制作したことねにそっくりの像です。
ひとみは、ことねと会話したことはありませんが、ずっと崇拝していました。
彼女の佇まい、姿勢、行動。 どれもひとみの憧れなのです。
「ああ。 神子様! 貴方のためなら、アタイは……」
ひとみが呟く中、邪神の像だけが怪しく輝くのでした。
『ふふ。 いいぞ、いいぞ! この女使える……』
ーーひとみの心に、邪神が興味を持ったことに、誰も気づきませんでした。




