美羽とことねと姫様 その1 ーー美羽視点
瑞稀の家を出て帰ってきた私。 帰ったら早速、ことねに相談しますわ!
そんな私が家に帰ると、湊がのんびりくつろいでいましたの。
「私、ことね様を別荘に誘いますわ!」
「⋯⋯美羽。 そうか、頑張れよ」
私は、湊にことね様を別荘に誘うことを伝えました。 彼はそれを聞いて安心したように、私を激励してくれましたわ。
湊の話によると、今日はことね様は帰って来ないそう。 私は緊張したまま、朝を迎えることになりましたわ。
翌日、昼頃にことね様は帰って来ましたの。
私はその間、ずっと緊張していましたの。
「ただいま! 湊!」
「おかえり、ことね。 ⋯⋯どうだった?」
「……そう。 だから、今は待つだけよ」
「そうか⋯⋯ところで、いつまで抱きついているつもりなんだ?」
ことね様が湊に抱きつきながら会話をしていますわ。 私にはわからない二人だけの会話。 私は戸惑いながらも、瑞稀との言葉を思い出し、ことね様に話しかけますの。
「ことね様、お願いがあります」
「どうしたの、美羽ちゃん? そんな真面目な顔をして!」
「一緒に、実家に来てください」
「うん、わかったよ! どこに行けばいいの?」
「夏は家族全員が別荘にいますので、そちらへ」
私がそう伝えると、ことね様がどこか嬉しそうな表情で私を見つめます。 その表情は見たことがなくて、私は問いかけようとしましたがーー
「⋯⋯じゃあ、俺は留守番かな」
「ええ! 行かないの! 私、湊と愛を深める手段を考えていたのに!」
「家の管理とか、連絡が必要だろ」
「そんな! 毎日、連絡するから、絶対に返してね!」
「はいはい、俺がことねからの連絡を、見落とす訳ないだろ⋯⋯だからいい加減、俺を解放してくれ」
湊と話すことね様は、普段と同じ表情に戻ったので、聞くタイミングを逃しましたわ。 でも、私はことね様と別荘へ行くという喜びで、心がいっぱいになりましたの。
次の日、ことね様は珍しくワンピース姿でしたわ。 どこか、気合いの入った様子のことね様に、私は大丈夫か心配になりましたの。
ーーえっと、私の服装? Tシャツにホットパンツですわ! 問題ありまして?
「湊。 私、負けないから! 行ってきます!」
「どうした? ことね。 ⋯⋯そんな真剣な顔して」
「絶対に私が、湊の本妻だって、美羽の親にわからせるから!」
当日の朝、出掛ける前に二人で話すのを見る私。
「ことね⋯⋯。 お前絶対に誤解してるよな! 俺と美羽には何もないって⋯⋯ ただ、たまに会っていただけで」
「頑張るね! 私⋯⋯このぬいぐるみを湊だと思って大事にするから!」
「それを持って行くのか? 明らかに邪魔だろ」
「湊⋯⋯私がいないからって、彩乃ちゃんたちと愛を深めすぎないでね!」
「まったく、聞いてないな⋯⋯ 」
そう言うと、ことね様は渋々というように、湊から離れて歩き始めましたの。 私が、湊の方を向くと、湊が私に向かってエールを送っていましたわ。 私も湊に手を振るのでしたわ。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「え! ことね様?」
私がことね様に視線を戻すとーーそこにはいつもの『ことね様』ではない顔の、ことね様が私を見ていましたの。
「⋯⋯貴方。今、湊に手を振っていたわね」
「え。 ⋯⋯はいそうですが⋯⋯」
「⋯⋯なに? やっぱり仲がいいの? 湊のこと好きなの?」
ことね様が私に問いかけてきますが、私は話の内容よりも彼女の態度が気になりましたわ。
ーー私が今話しているのは、本当にことね様、なのですか?
「⋯⋯えっと湊とは、仲の良い親戚の幼馴染ぐらいの印象しかないですわ」
「あ、そう⋯⋯」
私がそれだけ言うと、ことね様はソッポを向いてしまいましたわ。
ーーこの状況を他人が見れば、最悪な雰囲気だと思われるかも知れませんが、私はなぜかそうは感じませんでしたわ。
それどころか、私がことね様の立場を知る前の、初対面の頃に戻った錯覚を覚えましたの。 不思議ですわね?




