捜索! 山頂の祠へ
一学期の終わりに瑞稀は、ニコニコしながら帰路に就いていました。 彼女が帰り道で考えることは、一学期に起きた出来事でした。
「生徒会長にもなれたし、それにことねともお友達になれたし、最高!」
瑞稀はついつい、嬉しくて鼻歌を歌いたくなりました。 その時ーー
思案顔をした彩乃がぶつぶつ呟きながら、ベンチに座っていました。
「このままじゃまずいわ! どうにかしないと⋯⋯」
「彩乃。 どうしたの?」
「倉石。 貴方、この土地のどこかに祠があるらしいの! どこにあるか知ってる?」
「祠? あの山の山頂にあるけど⋯⋯ボロボロらしいよ?」
「それだわ! 情報提供感謝するわ!」
そういうと、山の方へ走って行く彩乃。
ーーあれ? もしかして、私余計なことを言った? まあいっか!
瑞稀はすぐに気を取り直し、家に帰って行くのでした。
次の日、制服姿のままの彩乃は、山頂へ向かう山道を、歩いていました。 目指す場所は祠です。
原作では、忘れられた祠に、大昔封印された悪霊こそが、川端ことねを操っている黒幕の正体でした。
しかし、現在のことねはどう見ても、操られている様には見えなかったのです。
ーーもしかして、転生者ではないかと疑いましたが、どうやら違う様だと結論づけてしまいました。
そこで彩乃は焦ります。 今頃、あの祠がどうなっているか調べなきゃ、と。
彩乃はそう思い、一人で山頂を目指します。 一応リュックは背負っていますが、登山をする格好を彼女はしていませんでした。
そんな彩乃は、道中で転んだのか、体は既に汚れていました。 さらに見落としがないか確認するために、周りを観察していたので服はドロドロでした。
しかし、彩乃は後方は気にしていませんでした。
「……」
彼女の後ろを気付かれない様に見守る、黒装束の男がいたことにーー
◇◇◇
一方、ことねは、のんびり散歩してました。 服装は、お気に入りのパーカーとジーンズ姿でした。
「お散歩楽しいな~。 夏休みは、何をしようかな? 美羽ちゃんと買い物へ行ったり! 瑞稀ちゃんと舞香ちゃんとゲームしたり! 彩乃ちゃんとカフェでお話しするのもいいかも! ⋯⋯はあ、呑気なのね、貴方」
ことね(副人格)と姫様(本人格)が、会話しています。
ことねは、彩乃が登山をしていることを、知らずにのんびり散歩をしていました。
ことねは、ぼんやり街を歩いていると、かわいい猫に出会いました。
「⋯⋯あ、猫ちゃん。 ネコかわいいね!」
ことねが、猫を撫でると、かわいく鳴いた後、ゆっくりと離れて行きました。
「⋯⋯猫ちゃん。 はぁ、どこかへ行ってしまったわ⋯⋯。 私、ネコのことは忘れて! それよりも原作では今頃、生徒会長になっているんだよね! しかも、生徒会のメンバー、私一人だよね! 大変そうだなぁ~。 生徒会に入らなくてよかった! ……ふん。 私にかかれば、楽勝だわ」
軽口を叩く姫様に、ことねは苦笑いを浮かべてしまいます。 すこし休憩したくなったことねは、近くのベンチに座ります。 そして、ぼんやりしているとーー
「あら、ことねちゃん! こんにちは!」
「貴方は⋯⋯ こんにちは! 今川先生!」
「のんびりお散歩中? ⋯⋯ちょっとお話いいかな?」
そう言うと、今川先生は、ことねの横に座りました。 そして、しばらくの間二人はお互いに、見つめ合いました。 その後二人は笑い合いました。
「本当に、かわいいわね、ことねちゃん!」
「なによアン⋯⋯まさか今川先生! 私を狙ってます?」
「さあ、どうでしょうね。 ⋯⋯ところでお母さんは元気?」
「はい、毎日連絡を取ってますよ! ⋯⋯それがなに? でしょうか!」
姫様が、今川先生へ暴言を吐こうとするのを、ことねは止めます。
ーー姫様の狙いは、元々の知人である今川幸子を、揶揄いたいがため。 実は、姫様は構ってちゃんなのでした。
姫様の行動を防いだことねが聞くと、今川先生は口に人差し指を当てました。
「大人の女は秘密が多いものなのよ、ことねちゃん」
「なによそ⋯⋯ なるほど! 勉強になります! 私も大人の女を目指します!」
「なら、私の振る舞いを参考にするといいわよ!」
「誰がアンタな⋯⋯はい! わかりました!」
「ことねちゃん?」
「なによ⋯⋯ はい! なんでしょうか?」
「⋯⋯いいえ。 なんでもないわ⋯⋯残念だわ。 私、ことねちゃんをお姉さんとして、指導したいのに……」
「え! なんですかそれ! ……ふふ。 面白いわね、今川幸子……この、川端ことねを指導ですって……」
夕焼け空の中、しばらくの間、会話を続けた二人でした。
◇◇◇
「暗くなって来ちゃった⋯⋯ でも山頂まで、もう少し!」
彩乃は、薄暗くなって来た道を、ライトで照らしながら歩きます。
途中、祠はありましたが、どれも目的の祠ではありませんでした。
目的の山頂へと辿り着いたのは、日が完全に沈んだ後でした。 彩乃はあたりを見渡します。 管理する人がいないのか、雑草が伸び、石像が傾いていたりと、荒れ果てていました。 そして、ついに目的の祠を発見しました。
彩乃は、祠に近づき、様子を確認します。 ぼろぼろの祭壇に、今にも剥がれそうな札を目にした時、彩乃は確信しました。
ーーやっぱり、本当だったんだ! だったらなんとかしないと!
彩乃が、祠に手をかけようとした、その時ーー
「桐原彩乃! 今すぐにここから離れるぞ! ⋯⋯ここは危険だ!」
「黒装束! なんてこと! 既に悪霊は復活して!」
「いいから! 早く!」
彩乃は黒装束の言う通りに、祠から離れました。 そして、黒装束姿のどこかで聞き覚えのある、男を見つめます。
「今度は私の番よ! ⋯⋯貴方は何者?」
「俺は、柳田健太。 ⋯⋯驚く所だろ、ここは!」
そう言うと彼は、フードを捲り、顔を現しました。
「⋯⋯とにかく、帰るぞ! お前には、色々聞かないと、いけないことがある!」
「はい、私も貴方に用がありましたから⋯⋯」
「なんだと?」
彩乃の言葉を聞き、驚く健太なのでした。




