原作での彩乃と湊の関わり
病院の裏庭で、桐原彩乃は、ボーッとしていました。 どうにか、車椅子を使っての移動は出来るようになりましたが、まだ歩行出来るようになるのは、時間が必要なようです。
「高坂湊⋯⋯そこにいるんでしょう?」
「⋯⋯桐原さん⋯⋯」
彩乃が、声をかけると、ヨロヨロと高坂湊が歩いてきました。
彼女が湊と会った日から、彼は毎日、彩乃の元に面会に来ていました。 面会にきては、遠くで彩乃のことを観察する彼のことが気になり、声をかけるのでした。
「⋯⋯今日は貴方に伝えないといけないことがあります⋯⋯学校を退学してください⋯⋯」
「どういうことですか! 納得のいく説明をしてください!」
「⋯⋯お嬢様⋯⋯川端ことねが、生徒会長に就任しました⋯⋯これから変革が起こります⋯⋯貴方にはもう、学校に戻らないほうがいい⋯⋯」
高坂湊の話を要約すると、新生徒会長は生徒の自由を束縛するから、貴方は逃げろとーー
「そんなに苦行なのですか! 川端ことねの要求は! 貴方はそれでいいと思っているんですか!」
「⋯⋯俺は⋯⋯俺のせいで⋯⋯お嬢様は⋯⋯だから⋯⋯」
「あーもう、焦ったいです! 貴方はどうしたいんですか?」
「⋯⋯俺は⋯⋯お嬢様を⋯⋯助けたいです⋯⋯」
「ちゃんと言えましたね。 なら、二人でやって見せましょ⋯⋯痛い」
「⋯⋯貴方はまだ、治療必要です⋯⋯」
高坂湊は、桐原彩乃が乗っている車椅子を持ち、部屋の中に入って行きました。
数日後の病院のリハビリ室で、桐原彩乃が歩行の練習をしていました。 ずっと、足腰を使わなかったので、筋力が落ちていました。
一歩、二歩、ヨタヨタと歩く彼女。 その時バランスを崩してしまいます。 倒れる衝撃に耐えるために、目を瞑る桐原彩乃。
しかし、その衝撃はやってきませんでした。 その代わりに誰かが、体に触れる感覚がします。 桐原彩乃が目を開けると、そこにいたのは高坂湊でした。
「キャ!」
「危ない!」
慌てて動こうとした桐原彩乃は、またバランスを崩しましたが、高坂湊が彼女を優しく支えました。
「⋯⋯あ、ごめん⋯⋯」
「いえ、こちらこそ。 その⋯⋯ありがとうございます。」
高坂湊は、桐原彩乃を抱くように、起こしました。 お互いの顔が赤く染まります。
「⋯⋯あまり無理をしない方がいい⋯⋯体によくない⋯⋯」
「いえ、私は早く学校に復帰したいですから⋯⋯」
桐原彩乃は、高坂湊を真っ直ぐ見つめて応えます。 その時、部屋の入り口から物音が聞こえました。
二人は視線を入り口の方に向けました。 そこには、桐原彩乃の妹の桐原舞香が口に手を当て立っていました。
「二人とも、実はそんな関係だったんだね!⋯⋯ごめんね邪魔しちゃって」
そう言うと桐原舞香は足早に、リハビリ室を去っていきました。
ーー二人は唖然とした様子でそれを見送るのでした。
生徒会長室の椅子に座る川端ことねに、この学校の校長先生が話しかけていました。
ここは元々校長室だったのですが、今はことねの部屋でした。
「生徒会長! また、保護者とマスコミから連絡が⋯⋯」
「貴方、そんな些事に私を関わらせるつもりなの?」
「え? いや、しかし⋯⋯」
「適当に、対処しなさい」
「⋯⋯はい。 それと教育委員会からも⋯⋯」
「はあ⋯⋯。 これ以上、私を失望させないでほしいものね、校、長、先、生?」
「かしこまりました!」
校長は逃げるように、生徒会長室から出て行きました。 誰もいない場所で彼女はふと呟きます。
「そういえば、あのゴミはどこに行ったのかしら⋯⋯」
ことねは湊のことを、あえてそう表現することで、湊への思いを抑えるのでした。




