叱
足が痺れてきた。
和磨にボロボロにしてしまった刀を見せてからどれくらい時間が経ったか分からないが、あれからずっと説教を受けている。母である朱音の説教を受ける時の癖で正座をしてしまったことを後悔し始めた。
「聞いてる?楓ちゃん。」
睨みを効かせる和磨にこくこくと頷き話に耳を傾ける。
「刀は斬るものだよ?そこらの棒切れみたいな使い方したら絶対ダメ。」
(“峰打ち”って言葉があるなら間違った使い方じゃ…)
くどくどと降ってくる言葉に少し反論したくなる。
「楓ちゃん泳ぎは?」
「え?出来るけど…」
「じゃ泳げるならここから海行ってねって川に放り込まれたら辛いでしょ?刀も同じ。峰打ち出来る道具だからってずっと峰打ちバコバコしたらおかしくもなる。刃を研ぎ直すとかそんなレベルじゃないよ、可哀想に。…もう楓ちゃんトコやめて俺のトコくる?いつか折られちゃうよねぇ?」
ぐうの音も出ず縮こまる楓を他所に刀に話し掛ける和磨。
人伝にしか聞いていないが、父である和泉の血はしっかり継いでいるようだ。
ひとしきり刀に言葉を掛けた和磨が楓に向き直る。
「この子達、預かるね。」
「でも…」
自分はまだ和磨の依頼を達成してもいなければ、する見込みも無い。
「だってこのままは可哀想過ぎるから。…直せるかなぁ?あぁ、大丈夫。俺の依頼が出来なかったらこの子達がウチの子になるだけだから。」
「え!?」
刀を直す人間を探していた筈が取り上げられる羽目になり、思わず大きな声が出る。
「それは…困るかも…その、いつ任務が入るかわからないし…」
自分に非があるのは理解しつつ、おずおずと申し出ると意外にも和磨は「なるほど」と、理解をみせた。
「じゃあ、ここにある刀一振り連れて行って良いよ。」
「え!お父さんの遺作でしょ?」
「うん。でもこんなにあっても行き先に困るでしょ?ただし、変な使い方しないでよ。」
釘を刺す和磨に申し訳ない心地になりながら辺りを見回し、目に付いた刀を手に取る。
「わ…軽…」
持った瞬間に驚きと共に呟いた。
「ふふ、お目が高〜い。それ、多分父さんの自信作だよ。俺もそう言ったらニヤニヤしてたから。」
「!なら…」
「何となくでも惹かれて手に取ったんでしょ?それでいいじゃん。」
そんな大切なものを借りるわけにはいかない、と戻しかける楓を止める。
「お借りします…」
和磨に押し切られる形で刀を帯に差す。
「じゃ、父さん探しよろしくね。この季節だし早めだと嬉しいな。あ、もうぐちゃぐちゃに腐ってたりしたら持ってくる前に相談してね。俺は大体、ここか村にいると思う。」
「…わかった。」
もうここまでくる道中でもしっかり汗ばむような季節だ。和磨の言う通り、早めに見付けないと遺体は腐ってしまう。彼の軽い言葉にそう悟り、気を引き締めた。




