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「これは…ダメかも…」

自室に並べた二振りの刀を見下ろし、楓は顔を青褪めさせた。

楓が見つめるその刀は二つとも刀身が歪み、酷い有様だった。

楠の一件で狐狸路で大量の低級妖達と闘った。

例え正当防衛だとしても殺したりはしない。その一心で峰を使い鈍器のような扱いをして妖を蹴散らした所為で刀は見事に刀身がおかしくなってしまった。

楠の件は、ただ共に隠れて育てた妖を杏が使役した、程度の説明で納得してもらった。

楠の変容も、あの大量の低級妖の襲撃も、一切口外していない。

「言い訳出来る?…いや、ちょっとこれは…」

さすがの楓も刀を打つ技術は持っていない。だからといって、里で世話になっている鍛冶屋に頼むわけにはいかない。二本も刀を悪くしたなどという情報はあっという間に広まってしまうだろう。母である朱音の耳にでも入れば、理由を問い質される未来は目に見えている。だからといって任務に入った時にこの刀では心もとない。

「とりあえず…動かなくちゃ…」

それぞれの刀を鞘にしまうと楓はそっと家を出た。


「え?鍛冶屋?貫鉄さんのトコ以外で?知らねぇなぁ…。お前知ってる?」

「知っとるけど…俺の地元やからかなり遠いで。」

家を出てすぐ、どこかに繰り出すのだろうか、二人して歩いていた柾と喜助を呼び止めて個人的に知っている鍛冶屋が居ないかを聞いてみた。

同年代の彼らには大人達に隠していることも相談しやすい。

「何したんだよ?俺らこないだ手入れしてもらったばっかだろ?」

何か事情を察して少し声のトーンを落として柾が尋ねる。

「ちょっと…ね。」

「その内また街行くだろ?大丈夫か?」

「何とか、する!」

宣誓するように強く頷き、二人と別れた。


柾と喜助は同年代の中でも任務に出る回数が多い。刀の扱いにも慣れている二人なら、と楓は少し期待していた。出鼻を挫かれ、他に思い当たる希望も無い。

(困った……)

唸りながら仰いだ空。楓の気持ちとは裏腹に見事に澄み渡った青空なのが少し皮肉だ。

「あ。」

視界にあの山が入ってきた。

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