第20話「揺れる心、交わる焔(ほのお)」
新たに出会った紅蓮の少女・ミハヤ。
少しずつ心を開き始める彼女との距離が、イサナとセオリとの間にどんな変化をもたらすのか。
火と風と癒しの言霊が交わるとき、静かだった洞の奥で、過去の記憶がふと、揺れ始める。
焔の気配を残して、夜が深まっていた。
宿を出た三人は、近くの丘に腰を下ろしていた。焚き火の赤が揺らぎ、草木のざわめきが静けさを引き立てる。
「……まだ、信じきれてないんだ」
ぽつりと、ミハヤが呟いた。炎を見つめながら、誰にも向けずに話しているようで、それでも確かにイサナたちに届いていた。
「私の中にある“火”は、私のものじゃない気がして……時々、暴れ出しそうになるの」
セオリがそっと寄り添い、小さな声で囁く。
「でも、ミハヤはそれをずっと抑えてきたんでしょう?」
ミハヤは黙ってうなずいた。その頬に映る火の光が、まるで彼女の心の揺れを映すかのようだった。
「……わたし、夢を見るの。燃える街、叫ぶ声、そして……誰かが、手を伸ばしてる」
「それが、君の“過去”なのかもしれないね」イサナが言った。
「僕も、セオリも……自分のこと、全部わかってるわけじゃない。でも、旅をする中で、少しずつ見えてくる」
ミハヤはそっとイサナを見る。真っ直ぐなその瞳に、嘘はなかった。
「……あんたたち、変なの」
「うん、よく言われる」イサナが笑う。
セオリもくすりと笑った。
ふいに、風が吹いた。焚き火の炎が揺れ、ミハヤの髪を撫でる。
「……じゃあ、少しだけ。一緒にいてもいい?」
「もちろん!」とセオリが即答し、イサナがうなずいた。
そのとき、遠くで雷鳴が轟く。
空の奥で、何かが動き始めた気配があった。
三人の歩みは、まだ始まったばかり――。
ようやくミハヤが少しだけ心を開き、3人の距離がほんの少し縮まりました。
今回は会話中心に進めてみたので、彼女の内面の揺れが少しでも伝わっていたら嬉しいです。
次回は、3人の旅が再び動き出します。
ミハヤの“火”の記憶、そしてそれに引き寄せられる何か――
まだ見ぬ脅威の気配が、静かに忍び寄っています。




