特別編 新宿ダンジョン~その1~
今回の話、完全に独立したセクションになりますので外伝的ポジションになります。本編と交互、もしくは手の空いた時の更新部となります。ご容赦下さい。読みにくいとか意見貰ったら移動させるかもしれません。
「おお、よくぞあの大迷宮を踏破し宝を持ち帰ったな勇者よ!」
豪華な大理石の柱を両脇に、中央には豪奢宝石を散りばめた赤い椅子にふんぞり返るデブ。これまたテンプレのような冠を被り、自らを王だと示す。そして眼前で傅く者たちを見て満足そうにまた息を吐いた。
「ワルヨノ様、これほどの魔剣、マジックアイテムは類を見ないでしょうな。いやあ、素晴らしい品でございますな」
王の横に立つ頬のこけた初老のちょび髭の男がそう声を掛ける。宰相エチゴである。
「そう思うかのう、エチゴや」
「そちらも素晴らしいですね、ワルヨノ様」
時代劇のような掛け合いをしつつ二人は目の前に持ち帰られた魔法の品々を見てキャッキャウフフしている。
「こほん、では褒美を取って遣わす。しかしまあ、あの大迷宮を踏破してしまったとなると、次が心配じゃのう」
王の言葉に傅く勇者たちも戸惑いの顔を浮かべる。
「次、でございますか?」
答えたのはグループのリーダー、若くしてこのヒノクニ王国で『勇者』を名乗ることを許された蒼髪碧眼の男、リーチである。
「そうじゃ、次じゃ。この国は産業と呼べるようなものがない。すべてはダンジョンを踏破することによって得られるマジックアイテムを高値で取引することで成り立って居るのはわかっているじゃろう?」
このヒノクニ王国は基本的には農耕民族で自給自足の生活をしている。しかし外貨は必要である。そのために質の良いマジックアイテムを輸出することで王国は栄えているのだ。そしてその質の良い品が出土するダンジョンが必要不可欠なのだが――。
「昔は良かったのう。沢山ダンジョンがあったというのに」
有体に言うと、食いつぶしたのだ。自堕落な王様が産業も起こさず手近な外貨を稼ぐ手段としてダンジョン採掘を推し進めた結果、その鉱脈がいま、尽きようとしてるのだ。
「……もうないのかエチゴや、何か外貨を稼ぐ手段は?」
「難しいですな。ダンジョンは一定期間を置けばまた産まれることがありますが、今はどれも狩り尽くしてしまいましたから……」
ダンジョンは魔力の高い土地に定期的に誕生する。しかし、あまりにも短期的にこの国はダンジョンを食いつぶし過ぎた。結果次の土壌も育たず、この国の見通しは極めて暗いことになっていたのだが、まだそこまでの切迫感が王には足りなかった。飽食の二代目であり、単に、無能だからである。
「そう言えば……私少し気になる噂を聞いたことがあります」
男たちの沈んだ話に横やりを入れたのはこの場の紅一点、シュンツである。
シュンツは巻き髪の赤毛を揺らしながら前に出た。
「申してみよ」
「はっ。……実はハーフリングの里が今回のダンジョンの近くにあり、私たちも逗留していたのですが……そこで彼らが何やら怪しげな話をしてたのです」
「なんじゃ?」
「……はい。何でも、異界の門から帰ったハーフリングがいて、その者が持ち帰った手土産は、見たこともない『宝石』のようであった、と」
「……ほう? しかし、そんなもの半身族共の世迷言であろう?」
「ええ、そうかもしれません。しかし私が二月前に帝都へ赴いた際に聞いた噂とも符合するのです。異界の地にある『ダンジョン』より持ち帰った宝の話と」
「……なに?」
「今、帝都では有力者を中心に異界の門を通り、異世界の物品を贈ることが流行っている、とのもっぱらの噂です。そしてその多くが異世界の巨大なダンジョンを徘徊し、手に入れた、と」
「……真か? いや、しかし」
王は思い当たる節がないでもなかった。最近の国家間の取引の一部が、鈍いと感じていたからだ。何か別の、マジックアイテムではない何かが取引に混じり始めている、そう感じることがあったからこそ、彼女の言葉を無下に出来ないでいた。
「……しかし、異界の門などというもの、本当に存在するのか?」
「――あるやも、しれません」
その言葉に答えたのは年長のエルフの魔術師、ロンである。
「この地に、かつて存在した、という話を聞いたことがあります。緑竜のダンジョンにあったが、壁が崩れ去り、埋まってしまった、と」
「ならば、調査すべき事案か、のう? エチゴや」
「そうでありますな、ワルヨノ様」
高笑いが豪奢な城の中に響いた。そしてそれが東京のとある片隅に影響を及ぼすことなどまだ誰もわかってはいなかったのである。




