ハーフリングは方南町でシェアする~短いエピローグ~ラムネビスケット~
「本当にお世話になりました」
「ありがとうございましたー!」
屋敷の裏門の木戸の前で礼儀良く頭を下げるアメちゃんと威勢よく挨拶するガキ共。そして――。
「またくるぜ、じゃーな」
「来なくていいぞ。めんどくせえ」
相変わらず生意気な口を叩くラムネにそう答える。
「あ……ご迷惑、でしたか?」
「いえいえとんでもない! また来てください。ぜひ!」
申し訳なさそうに答えるアメちゃんに俺のとっておきスマイル0円をプレゼントする。
「ありがとうございます。次は――新婚旅行とかで、ゆっくり来たいですね」
まじか。新婚とか、もうアメちゃんは俺とのことをそこまで考えてくれていたのか。俺は秘かに感動に打ち震える。
「そうだね。ぜひ、うん」
「おい、おっさん。なんかきもいぞ?」
「うるせえな。お前は早く帰れ。冒険者になって家族を支えるんだろ?」
「――それはやめた」
「は?」
「もっと別のやり方ある気がして、やめた。俺は――料理人になろうかなって」
ほう、そう来たか。
「手先の器用さの活かし方も色々ある気がするんだよな。それに――それなら誰も泣かねえし」
この旅行はこいつなりに色々考えるきっかけになったらしい。それならそれでこいつにとって有意義な旅になったことだろう。
「がんばれよ」
「おう」
「じゃあ、私の結婚式でピザ作ってもらおうかな?」
「はは、じゃあ帰ったらさっそく練習だな。かまど作ってもらわねえと」
俺はそのやり取りを目を細めて眺める。
「気が早いなあ。いやあ俺は嬉しいけどさ」
「何言ってんだ? まあいいや、じゃーな」
「ええ、さようなら~!」
「ってドリスコル!?」
いつの間にかドリスコルが俺の後ろに立っている。
「ほんとお前、神出鬼没だな!? てか今回出番多すぎるだろ?」
「嫌ですねえ。私だって出たいですよ。美味しいごはんだって食べたいです。今後はもう少し出演交渉したいと思っております」
誰にだよ? という突っ込みを飲み込み、飄々と答えるエルフを俺は無視してそっぽを向く。
「というわけで、はいこれ、お土産です」
ドリスコルはどこから取り出したのか、ぴちゅーと鳴き出しそうな黄色い電気ネズミの進化前のぬいぐるみをアメちゃんに手渡した。
「あ、ありがとうございます」
「いやー念のためご用意致しました。『二人分』です」
「え!? は、ああ、ありがとうございます」
――? なんだかよくわからないやり取りをしている。流石に昨日からのやり取りに不信感をぬぐえず、俺は質問してみることにした。
「何だよそれ? っていうかお前昨日から変だぞ? 何の為にそんなことしてんだ?」
「いや、何って――それは不手際の、穴埋めですよ?」
「そりゃわかるよ。アメちゃんが病気になった原因はお前にあるんだろ?」
「ええまあ。でもそれも別に、正確じゃないですけど」
こいつの思わせぶりな笑顔がムカついてしょうがない。顔に『聞いちゃいますそれ?』って書いてあるのだ。
「いいから言えよ! ったくめんどくせえな」
ドリスコルは『良いですか?』とアメちゃんに目配せをする。するとアメちゃんは軽く頷いた。
「アメさんは――その妊娠しておりますから」
「――は?」
妊娠? いつ? え、俺いつ手を出したっけ? てか身ごもるの早くない?
「えー!? アメ姉ちゃんお腹に子供いるの!?」「まじか!?」「おめっとー!」
ガキ共の喧騒が遠くに聞こえる。えっと、えーっと、え? まじ、意味わかんない。
「だから検疫が抜けたんですよ。アメさん一人の検疫用魔術なら完璧だったんですが、お腹の中の子の分が足りなかったんです。それでその分の体調不良……悪阻みたいな? ですからこれを帰還前にお届けに上がった次第です。帰りの分――ですね。前の人形のお守り分で足りるとは思いますが、念のため」
「へ、へぇぇぇぇ……」
「ああやっぱりビスケットの兄貴と付き合ってたのか」
「知ってたのラムネ?」
「ああ、仲良かったもんな。流石に気付くぞ? ああ、だからお前こそこそとかあちゃんたちと話してたのか、結婚話を。」
俺は知らない。ていうかここまで来て誰だよビスケットって。
よくよく考えたらハーフリングは背丈こそ俺らの半分だが中身は大人なこともある――よな。ああ、そう――そう――なんすか。はぁ。
「ですから落ち着いたら――また来ます。ビスケットと二人で。本当にお世話になりました」
「はぁ――はい……」
――お幸せに。
掠れるような俺の声と元気な「さよなら~!」が重なった。
ドリスコルは相変わらず、何か言いたそうににやにやして俺を見ていた。くそう、そうだよロリコンだよこんちくしょう!
短いのでさくっと投稿。
0時にもう一回投稿します。




