魔族
先日、ハニーから神族の話を聞くことが出来た。
ハニーの居た世界はとても明るい世界だとのこと。
それは夜のない世界。
そしてその世界には私たちと同じように独特の言語があり、生活がある。
神族の住む世界は特殊な環境以外は私たちと同じであるとハニーは言っていた。
まだ、初級編と言っていたし、まだまだ私の知らないところがあるのだろうがひとまずは安心した。
さて、神族の世界が少し分かってくると他の世界も知りたくなる。
担任のかぐちゃんもそのことを話すといい勉強になると後押しをしてくれた。
そして私は今、クラスメートのみすずちゃんの部屋に居ます。
私が部屋を訪れるとみすずちゃんは
「良く来たわね、泥棒猫」
と迎えてくれた。
「泥棒猫」とはみすずちゃんなりの冗談らしい。
みすずちゃんのルームメイトであるあきらちゃんとつきあっているという疑惑が浮上してからずっとこのあだ名で通っている。
一応疑惑は晴れたはずなのだがまだ根に持っているのだろうか。
ここで基本的情報の確認。
みすずちゃんとは本名、水瀬 泉涼、水属性の魔族いわゆる水魔です。
かなり高位の魔族らしく私のハニーこと高位の雷神、雷田 静姫と渡り合えるぐらいの実力があります。
そして2人は大の親友です。
次に説明するのはあきらちゃん。
あきらちゃんは本名、火口 暁空、炎属性の神族です。
神族と言っても力のコントロールもおぼつかない低位の神族。
ただ体力はかなり凄くうちのクラスでも1,2を争う体力馬鹿です。
学力はかなり下、今私たちがいろいろと勉強を教えています。
私が熱心に勉強をマンツーマンで教えたことがそもそもの疑惑の発端でした。
そして、さっきから申しましているのがみすずちゃんとあきらちゃんはつきあっていると言うこと。
私とハニーがつきあっているように。
それと一応言っておきますが私が通っているのは女子校、そして私が居るのは女子寮ですのでお忘れ無きように。
つまり女の子同士の話。
話を戻します。
私を招き入れたみすずちゃんは私をみすずちゃんのルームメイトであるあきらちゃんの隣に座らせとうとうと語り始めました。
「まず基本的情報の確認ね。
作道(私)さんのルームメイトである雷田さんは雷属性の神族。
雷田さん神族の世界でも雷に囲まれている世界で育ってきたの。
(火口)あきらだって、炎に囲まれている世界の出よ。
高位、下位の違いはあるけれど基本、神族は自分の属性に囲まれて生活しているの。
それは魔族でも同じ。
私は水に囲まれた世界で生活をしていたの。
特に幼少期は属性に囲まれていないと死んでしまうからね。
能力の違いは幼少期に過ごした属性の純度の違い。
でも頑張り次第では能力を上げることが出来ると思うのだけど、下位の能力の世界から上位の能力の世界に行けるのははほんの一部。
私たちはほぼ生まれながらの環境で能力が決まるの」
と言い終わるとみすずちゃんは一呼吸をおいた。
しかし、ハニーとこれから暮らすであろう環境は雷に囲まれた世界だと言うことは今初めて知った。
どういった世界なのだろうか。
期待と不安と興味で頭の中はぐちゃぐちゃになった。
みすずちゃんは続けて
「それで私とあきらのことなんだけど・・・。
その前に説明しなければならないことがあるの。
それは昔、神族と魔族は仲が悪かったらしいの。
あなたも知っているように100年戦争があったぐらいに。
だいたい、神族は夜のない明るい国。
そして魔族は朝が来ない暗い国。
環境からいって相容れない世界。
その時に人間が仲介を努め戦争が終結した。
その後、和平の象徴として親族と魔族が通う共同の学校を設立したの。
と言っても神族と魔族は違う教室なんだけどね。
学校の言い分として争いを避けるためだと言っていたわ。
戦争が終わったからと言っても神族と魔族のわだかまりは消えてないの。
だからあきらが同い年の女の子だってことすら知らなかったわ。
だってその頃のあきらはとても女の子に見えなかったから。
そして私たちはつきあうことになった。
お互いに惹かれてね。
でも種族の差は大変厳しいの。
私たちはどうってことないんだけど、特に周りがね。
結構古い人たちは神族と魔族は仲良くするべきでないと考えている人はまだいる。
だから私たちはごく近い身内やこの学校の人たちにしかこのことを知らしていないの。
幸いこの学校は自由だしね。
人間と神族のカップルもいることだし。
だからあなたがいろんな種族の架け橋になって欲しいの。
私たちがなんの偏見もなく暮らせる世界になるように」
今日日、同性カップルも珍しくなくなってきたこの世界。
今の課題は異種族カップルが偏見無く暮らせる世界だ。
これは私にとっても切実な課題。
そして私が通うこの学校はあらゆる種族が通う学校。
まだこの世界は問題も多いけど私はみすずちゃんの話を聞いて改めてこの世界の全ての偏見が無くなるように努力しようと心に誓った。




