放課後
最近、ちょっとした怖い話を聞いた。
それは放課後、ある教室から声が聞こえてくるのだそう。
それは2人の女の子の声。
しかし教室を覗くと誰もいない。
声だけがこだましているかのよう。
時間は夕方頃、誰もいない教室での出来事なんだそうです。
私はいつもの先生の補習の後、(言っておくけど成績が悪いわけじゃなく、成績が良い人たちのための補習だからね)調べ物をしに図書館にいた。
そこで面白い本を見つけ気がつけば夕方頃になっていた。
カバンは教室に置きっ放しになっていたので今は教室に戻ろうとしています。
その教室に戻る途中、1年生のクラスから笑い声が聞こえてきた。
私はまだこんな時間に生徒がいるのかと思い、教室を覗き込んだ。
しかしそこには誰もいなかった。
私はぞっとした。
今学校に伝わる怪談の話そっくりだったからだ。
その教室には誰もいない。
しかし、話し声は確かにする。
そして、その声は私に気づいたのか
「あ、たまちゃん(私)だ。
こんな遅い時間にどうしたの?
寮には戻らないの?」
と話しかけてきた。
私は顔を青ざめた。
そうしたらその声は
「何を怖がっているの?
私だよ。
わ・た・し」
そう言うと何か人影のようなものが現れた。
その人影はだんだんとくっきりと形をなしていく。
そしてある人物がくっきりと現れたのだ。
「あかりちゃんだ!!」
私は思わず叫んでしまった。
あかりちゃんとは光風 灯さんのこと。
あかりちゃんはこの世界での唯一の存在である光学生命体。
光学生命体とは立体映像に命が吹き込まれたものと理解した方が良い。
あかりちゃんは完全な夜になると電脳空間に帰らなければならない。
あかりちゃんは光がないと生きていけない。
だから、夜になると別次元の電脳空間に帰る必要性がある。
あかりちゃん曰く電脳空間は孤独なのだそう。
だからあかりちゃんは帰る直前まで誰かとおしゃべりしたいのだそう。
しかし、授業が終わってからあかりちゃんが帰る直前までは時間がある。
みんな、いろいろと忙しいのでずっとあかりちゃんの相手をしてられる訳じゃない。
だから去年の1年間は非常に寂しかったそうだ。
しかし、この教室にはあかりちゃん以外誰も見当たらない。
でも確かに声は2人の声だった。
1人の声はあかりちゃんだとしてもう1人は誰なのか。
また怖くなった。
あかりちゃんは幽霊とでも話していたのだろうか。
そう考えていると
「何顔を青ざめているの。
別にこの教室に私1人でいたんじゃないから。」
とあかりちゃんが声をかけてきた。
そして
「一応、私もいるんだけど」
とどこからともなく声がしてきた。
その声は教室の奥から聞こえてくるようだ。
私はそこへ向かった。
しかし声の主は分からない。
「また同じ事の繰り返し?
あなたとは1回会っているはずなんだけど」
そう言うと近くにあった机が変形を始めた。
それはあっという間の出来事だった。
(と言っても完全に変形が終わるまで10分以上かかったが)
みるみると机が女の子へと変化していったのだ。
思い出した!!
この娘は新1年生のうららちゃんだ。
うららちゃんとは机ゴーレムの娘だ。
机ゴーレムとは長年使われた机に生命が宿り少女へと姿を進化した娘のことだ。
彼女は机として100年生きた後、少女に進化したようだ。
と言っても彼女の人間への変身は安定していない。
顔は変わらないのだがその日その日で身長がまるで違う。
今日は私よりも背丈が小さい。
私は思わず
「この前あった時よりも小さいね」
と言ってしまった。
彼女は
「しょうがないでしょ。
今日はもう変形する予定じゃなかったんだから。
やっぱり元の姿の方が楽だしね」
2人の話を聞いて怪談の真意が分かった。
誰もいない教室から声が聞こえる理由はあかりちゃんとうららちゃんが会話をしていたからだと言うこと。
ではなぜ姿が見えなかったのか。
あかりちゃん曰く夕方に向け光の量が少なくなるにつれ自身も省エネモードとして自分の映像をoffにしているとのこと。
うららちゃんはうららちゃんで人間の姿は非常に疲れるとのこと。
だから授業が終わると一刻も早く元の姿に戻りたいのだそうだ。
つまり2人とも人間の姿をしていない。
傍目からすると誰もいないように見える。
これが今学校で流布されている怪談の真相だ。
もちろんこの2人は怪談の存在すら知らなかった。
とんだ人騒がせである。
あかりちゃんは今年になって新しい友達が出来た。
あかりちゃんは寮には帰らない。
だから自分と同じ境遇の(つまり寮に帰ることが出来ない)うららちゃんと非常に気が合うのだ。
うららちゃんにとってもあかりちゃんはいい友達であり先輩だ。
2人の話している様子を見ると非常に仲が良いのが分かる。
お互い孤独であっただろう存在。
今は非常に楽しそうだ。
もちろん2人とも友達は沢山いるようだ。
私もあかりちゃんの友達の1人だと自負している。
でもこの2人を見ていると友達以上にわかり合えているみたいで微笑ましい。
私もこの微笑ましい2人を見て同室のハニーにすぐに会いたい、そして今日あったことをすぐに話したいと思った。




