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暴君くま耳少女  作者: 夜猫
12/14

第12話くま耳と小さくなった朝霧

「……ん……」

朝、雀の鳴く声で目が覚めた。

外はまだ薄暗い。

俺はゆっくりと身体を起こして、髪をかき上げる。

今の時間を確かめる為に、目覚まし時計に視線を送る。

五時半……。

いつもより三十分も早い。

とはいえ、二度寝する気にもなれなく、仕方なくベッドを飛ぶようにして降りる。

「?」

何だか妙に違和感を感じる。

だけど、それが何かはわからない。

まだ、起きたばかりで頭が回っていないのかもしれない。

シャワーでも浴びて、頭をスッキリさせよう。

俺は風呂場に向かう。

またもや、違和感。

間違いない。

何かがおかしい。

だけど、違和感の原因がイマイチわからない。

もどかしい。

「はぁ……」

深い深いため息がこぼれ落ちる。

…………ん?

俺って、こんなに声高かったっけ?

「あ、あ、あ」

発声練習でもするように声を出してみる。

やはり、俺の声とは違う気がする。

いや、違うのは声だけじゃない。

身体も何だかおかしい。

縮んだというか、小さくなったような……。

俺は意を決して、脱衣所の鏡で自分を映し見る。

「見えない……」

小さ過ぎて、頭しか見えない。

俺は椅子を持ってきて踏み台にする。

「な、な、な、何じゃこりゃーーーっ!」

鏡に映ったのは、子供の姿だった。

正確には子供の頃の俺の姿だ。

一体、どうなっているんだ!?

「うるさい。朝霧、近所迷惑だぞ」

「ゆ、夕凪……俺、子供になっちまった」

どうやら、俺の声に目を覚ましたらしい。

夕凪が目を擦り、くま耳をピコピコと動かしながら脱衣所にやってきた。

俺は慌てながら、現在の状況を説明する。

「うん。可愛いぞ」

「え?」

「可愛過ぎる」

何だか、夕凪の様子がいつもと違う。

顔をほんのり赤らめて、もじもじしている。

何だろう……。

本能が警鐘を鳴らしている。

逃げろ、危険だ、と。

「お、おい……」

「朝霧……抱き締めさせてくれ」

「はい?」

目を潤ませて、懇願する夕凪に、俺はキョトンとしてしまう。

こんな夕凪は初めてだ。

しかし、身体は自然と後退りする。

「いや、抱き締めたいとか言われても……」

「朝霧ーーーっ!」

「うわーーーっ!」

脱出失敗。

逃げるより夕凪の行動の方が若干早かった。

衝動の赴くままに、夕凪は、思い切り俺を抱き締めた。

十分後……。

グッタリと疲れている俺と満足気に肌をツヤツヤとさせている夕凪の姿があった。

「すまん。あまりの可愛らしさに興奮してしまった」

「興奮って……」

「いや、実は私はショタコンなんだ」

「ええーーーっ!」

何か、サラッとカミングアウトした!?

いやいやいや、いきなりショタコンとか言われても……。

ちなみに、ショタコンとは少年好きな人の事で『正太郎コンプレックス』の略である。

「私は可愛い少年を見るとムラムラするんだ」

「変態だーーーっ!」

恥ずかしそうに……しかし、はっきりと断言した夕凪に、俺は思わず叫んだ。

「あくまで趣味の範囲だぞ」

「……」

夕凪は言い訳らしきものを口にする。

そんな夕凪を、俺はジト目で睨んだ。

信じられる訳ない。

先程、俺を散々抱き締めたのだから。

「それより、いつまでもその格好じゃまずいだろう。私が服を貸してやる」

「貸してやるって言われてもなぁ」

「まあ、任せておけ」

何となく不安はあるのだが、今着ているタブタブのパジャマよりは幾らかマシだろう、等と考えていたが、大きな間違いだった。

「おい……」

「何だ?」

「何だ、じゃない!この格好は何なんだ!?」

俺は金持ちの坊ちゃんのような半ズボンにサスペンダーという格好をさせられていた。

まさに少年!

「趣味だ!」

「うわ……」

こうも言い切られては、俺は絶句するより他なかった。

というか、これが夕凪の趣味……。

仕方ない。

元に戻るまでの辛抱だ。

「それにしても、何で俺は子供に戻っちまったんだ?」

「それは、昨日飲んだジュースのせいだな」

そういえば、風呂上がりに冷蔵庫に入っていたジュースを飲んだっけ?

「でも、何でジュースを飲んで子供に戻るんだ?」

「それは、あのジュースに子供に戻る薬が入っていたからだ」

「は……?」

子供に戻る薬?

いやいや、それ以前に何故それを夕凪が知っている?

というか、こいつ、俺が子供になっているのに、すぐに気付いたな。

それって……。

「お前が原因かーーーっ!」

「そうだ」

夕凪は威張るように、思い切り胸を逸らす。

こ、こいつ……悪びれる事もなく肯定しやがった。

くそっ!

「はぁ……もういい。それより、早く元に戻してくれ」

「そんな事、私には出来ないぞ」

「はい?」

諦めたように深々とため息を吐いて、俺は夕凪に頼んだ。

が、あっさりと言い放たれた。

「私には無理だと言ったんだ」

「何でだーーーっ!」

俺は叫んだ。

いつまでも、子供のままでいるなんて耐えられなかったのだ。

というか、もういいだろう?

「私が作った薬じゃないからな」

「今日は平日だぞ!学校はどうすんだよ?」

「大丈夫。お前は今日、法事で休みになっているからな」

「……」

こ、こいつ……。

間違いない。

計画的犯行だ。

というか、どうするんだよ……。

「取りあえず、もう一度抱き締めさせてくれ。我慢できん」

「うわーーーっ!」

肉食獣のように瞳をギラギラとさせて、夕凪はにじり寄ってきた。

俺はただ子供のインパラのように怯えるしかなかった。

それからも、夕凪の欲情は治まる事を知らなかった。

こうして、俺の悪夢のような一日は幕を閉じた……。

ちなみに、次の朝目を覚ますと、俺は大人の姿に戻っていた。

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