第8話「暴食」
死の谷、第一層。
そこはかつて、英雄ノーラントが魔王を追い詰め、最後の一撃を放った終焉の地である。
魔王城のある第三層から奇襲をかけ、地表へと叩き出した決戦。
しかし、今やそこは地獄と化していた。
空から降り注ぐのは灰色の雨。
吸い込むだけで肺が焼けるような高濃度汚染の中、アルマイトは立ち止まった。
「……ここが、すべての始まりの場所だ」
足元には、かつての戦場に遺棄された無数の武具が転がっている。
それらは魔力を吸い、墓標のように突き立っていた。
アルマイトは背中の黒鉛鉄を抜き、大気そのものを斬るように大地へと突き立てた。
「吸え、黒鉛鉄。俺の過ちを、一滴残らず」
大剣が唸りを上げ、光を奪い始める。大気に淀んでいた魔力が、濁流となって剣身へと吸い込まれていく。その浄化作業が行われる最中、地面が激しく揺れた。
「……ギ、ガ、ガガ……」
瓦礫の山が蠢き、巨大な影が立ち上がる。
それは、捨てられた数千の武具が魔力によって結合した、歪な姿のゴーレムだった。
だが、その動きは鈍重な見た目に反して、あまりに「精密」だった。
ゴーレムが右腕を振るう。
放たれたのは単純な岩石の弾丸。
しかし、それは空中で急激に加速し、鋭い軌道を描いてアルマイトの頬を掠めた。
「……?」
ハヌマーンが錫杖を構え、目を細める。
「若き光よ、気をつけよ。あの怪物の攻撃、すべてが不自然に収束しておる」
アルマイトは剣を地面に固定したまま、迫りくる異様な攻撃を凝視した。




