表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超弩級超重ゴーレム戦艦 ヒューガ  作者: 藤 まもる
第6章 アスティリアス貿易編
68/75

第55話「魔王様、新兵器を作る」

 エスパーニャ暦5542年11月末になりました。

 いや、すっかり寒くなりましたね。


 早いもので去年8月にレムノス島にたどり着いてから、1年と3ヶ月が経ちました。

 今年は貿易へ行ったり、レムノスを開発したりと忙しく、あっという間の1年でした。


 我々が予想するアルコンの戦争開始時期は、大きく2つ候補があり、陸戦主体でレオンを攻撃するなら2年後、海戦主体で海上封鎖を狙うなら3年後、と考えています。つまり最短で、あと9ヶ月で戦端が開かれる可能性があるわけです。


 というわけで、これからは武器の開発と魔王船と武装、魔王艦隊の整備を急ピッチで行なう所存です。




エスパーニャ暦5542年 9月1日 10時00分

レムノス島 魔王国首都ヴァルドロード東5キロ

魔王船左舷甲板 怪しげな小屋


 時系列少しさかのぼって9月。

 ちょうど魔王軍イチカ司令部とサーシャ軍事基地の建設が始った時期、俺はシーダーツを開発した怪しげな部屋で、新たに新型の長射程対空ミサイルの開発を開始していた。


 大砲のほうは、5インチ連装砲がグスタフの手によりすでに開発されている。

 5インチ連装砲の構造だが、全体としては下層から砲弾箱置場、揚弾筒、換装室、砲室の4階建てになっている。


 発射の手順だが、まずは砲弾箱置場で、箱に入った砲弾を「ホイスト」と呼ばれる小さなクレーンで持ち上げ、揚弾筒入り口まで運び、揚弾筒内の箱に弾を入れる。

 それから魔導モーターで弾の入った箱を上階に運んで、換装室へ送る。


 換装室で弾は揚弾箱から取り出され、レールに乗って装填箱に移され、再び上階に運んで砲室内の砲尾へ弾を持って行き、そこで砲に弾を込めて発射するか、予備装填装置に弾を置いておく。

 弾の装填には、魔力装填装置の「ラマー」と言われる伸縮する棒で、弾を押し出して砲に装填する。



 なかなかややこしい構造だが、誘爆を防いで被弾時の安全を確保するには、2段階で弾を上階に運ぶ構造が必要なのだ。

 ところどころ手作業が必要な半自動装填砲だが、砲塔内で働く作業用スケルトンをロボットとして考えるなら、全自動装填と言えなくはない。


 俺はグスタフに命じ、新たに6インチ連装砲、6インチ単装高射砲、8インチ連装砲の開発を指示した。

 基本の構造は完成しているので、後は弾の大きさに合わせ、サイズの調整をすれば、比較的短期間で砲は完成するだろう。

 俺はその間にミサイルの開発を進める。



 3日。

 久しぶりにレムノス側との会談だ。

 向こうからはイーリスさん、守護剣士キーラ・カネルヴァ、侍女長ヴァネッサ・ブロテルスがやって来た。

 会談は首都の会議室で行なわれた。


「お久しぶりです魔王様。お忙しいところを時間を割いていただき、ありがとうございます」


「いえいえー、レムノスにも国造りに協力していただいておりますので、これからも良い友人であり続けましょう」


 イーリスさんとの挨拶もそこそこに、さっそく会議を始める。

 まあ議題はたいしたことはない。

 レムノス大橋両端に検問所を作る、こちらとレムノスの状況の確認、ドロップ品と物資の交換比率調整などなど。

 短時間で話は終わり、あとは赤茶を飲みながらの雑談タイムに入る。


「ところでイーリスさん。前魔王がアースガルズ大陸に送られてきた時は、やっぱ赤ん坊でカプセルに乗って来たんですかね?」


「よくご存知ですね。伝説によれば魔王様の乗ったカプセルが、レムノス王国に流れてきたようです」


 やっぱりか。

 ヴァイキング族の野郎、赤ん坊をポンポン島流しにしやがって、乳幼児虐待だぞ。


「あの後宮船イルマタル、でしたっけ。魔王船から首都にランチで行く時によく見ますが、まだ艦橋後方に植えられた木が枯れてないんですね」


「ああ、まだ結界が生きているのでしょう。魔力結晶は尽きているでしょうが、大気中の魔素を集める魔法陣と、植物成長促進結界の魔法陣が動いているので、枯れないのだと思います」


 んん!

 ちょっと待てよ、今何と言った?

 大気中の魔素を集める魔法陣、それに植物成長促進魔法陣だって?

 そんなもん、エスパーニャ大陸では聞いたことないないぞ。


「あのー、植物成長促進魔法陣って、魔王船の森にも使われてますかね?」


「はい。基本的に同じものだと思います。ただ非常に大規模ですが」


 そうか、そうだよ。

 前魔王はアースガルズ大陸出身なんだから、魔王船の基本技術はアースガルズの技術が使われてるのは当然だ。

 それから俺は、レムノス王国の技術水準を知るため、沢山質問してみた。


 結果としては、エスパーニャのほうが進んでいる技術が多いが、アースガルズにも高度な技術があることが判明した。

 なんてこった。

 竜騎も知らないぐらいだから、技術も遅れてると思い込んでいた。

 まさに灯台下暗し。


 アースガルズの高度魔法技術で特筆すべきは魔法陣だ。

 エスパーニャでは知られていない魔法陣がいくつもある。

 極め付きは、魔力はバカ食いするが転移魔法陣まである所だ。

 

 エスパーニャから見れば、後宮船イルマタルは布帆の遅れた船のように見えるが、あの船にも特殊装備があった。

 海中魔導探知機と魔導爆雷だ。


 なんでもアースガルズ近海には、海中魔獣が生息しているらしく、外洋に出るのは困難だったらしい。

 そこで海中魔導探知機と魔導爆雷が開発され、海中魔獣を追い払い、ようやく安全に船が航海できるようになったらしい。

 なるほど、それで魔法陣の高度な技術に比較して、船の構造が未熟なのか。


 それにしてもアースガルズに海中魔獣がいるのに、どうしてエスパーニャにはいないのだろう?

 あっ、そうか! 超海流だわ。

 あれで海中魔獣がエスパーニャにやって来れないんだ。


 ん? ちょっと待てよ。

 とすると、レムノス島近海だと海中魔獣が現れる可能性があるのか!

 まずい。

 魔導爆雷を投射できる駆逐艦を急いで開発しないと。


 おいおい、イーリスさんよ。

 なんでそういう大切な事を言わないかな。

 遠まわしで嫌味を言ってみると、


「えっ!? エスパーニャ大陸には海中魔獣がいないのですか?」


 と驚かれた。

 ああ、なるほど。

 イーリスさんは海中魔獣がエスパーニャにも出ると思い込んでいて、こっちの船にも魔導爆雷があると考えていたわけか。

 というわけで、さっそくイーリスさんに技術協力をお願いしてみた。


「別に構いませんが、イルマタルは戦闘専用では無いので、海中魔導探知機は標準的性能で、小型魔導爆雷を5発しか積んでいませんが。資料にはたしか設計図もあったはずです」


「お願いします。魔導爆雷と魔法陣の研究を行いたいのです!」


 俺はイーリスに頭を下げた。

 それから協議を行い、魔法陣の講師の派遣、後宮船イルマタルの回収及び研究、海中魔導探知機、小型魔導爆雷の設計図の提供、対海中魔獣戦のマニュアル提供をして貰うことになった。


 代わりに俺からは、橋の国境検問所、500人程度が住める町、後宮船イルマタルの改修、イルマタルが寄港可能な港の建設を約束。

 何、魔法陣技術と新兵器が手に入るなら安いもんだ。


 しかし工事の時期は大分後になるだろう事はレムノスに伝えた。多分、バニア島要塞と同時期か。

 まあこの1年、あのボロいレムノス村も代わり映えしないからな、こっちの首都も見てるし、そろそろ良い家も欲しいのだろう。





    超弩級超重ゴーレム戦艦ヒューガ

   ⇒第6章 アスティリアス貿易編





 9月5日、今日から俺は長射程ミサイルの開発を開始。

 今回のミサイルは、シーダーツをベースにしつつも、魔力を節約して射程を倍にすること目指す。

 単純に推進用の5つ星魔力結晶を2つにすれば、シーダーツの射程を倍に出来るが、供給量の観点からそれは避けたいのだ。


 というわけで、まずはミサイル胴体の変更を行なう。

 空気抵抗が少なく、なおかつ揚力を稼ぐよう、可能な限り長く細くした。


 シーダーツは両サイドにマギアエンジンがついてるが、位置を変更し、マギアエンジン2基、空気取り入れ口を胴体内に納めた。

 これで試作品を2基製造、推進は5つ星魔力結晶1つ、推進補助に4つ星魔力結晶2つ、爆発に4つ星魔力結晶1つを使う。


 さっそく寄生魔獣テストパイロット君にミサイルに入ってもらい、魔王船左舷から打ち出してテストする。

 結果、射程は3400メートルを記録した。しかし微妙だなぁ。


 俺はさらにミサイルの改良を行なう。

 ネットのうろ憶えの知識から、たしか護衛艦のある種の長射程ミサイルには、弾頭から尾部にかけて短い翼がついていたのを思い出し、さっそくミサイルにヒレのような翼をつける。


 再度テスト。

 今回は上手くいき、4000メートル前後まで飛んだ。

 よし、合格だ。

 この形状でいこう。


 形が完全にシーダーツとは別物となったので、新たにこの新型ミサイルに名称をつける。

 名前は長射程対空生体ミサイル「スパルヴィエロ」とした。

 イタリア語でハイタカを意味する。


 その昔、地球でスパルヴィエロという鷹のラベルが貼ったワインを飲んだことがあるので、そこからとった。

 こちらの世界にもイタリア語風言語はあって、意味が同じなのは確認している。



 弾頭に収まっているテストパイロット君は、これまでの経験から形状を変化させている。

 シーダーツを操っている時は目玉2つだったが、今は真中に大きな目、両サイドに小さな目をつけ、目玉3つ方式になっている。

 

 大きな目玉で遠距離の目標を捕捉追跡、接近して小さな目玉2つで立体視して目標に命中する。

 この方式がもっとも正確に誘導できるのだそうだ。

 やり方は、後に知識玉でブレインやヒューガに伝達されるので、スパルヴィエロもシーダーツも目玉3個誘導方式に移行することになるだろう。


 スパルヴィエロの開発も出来たので、スプリガン10名とともに、次はミサイル装填装置の開発を行なう。

 こいつは5インチ連装砲塔と似たような構造になるが、俺は予定があるので一時抜ける。





 15日から20日は魔法陣のお勉強だ。

 レムノス村から首都に、魔法陣講師、ルミッキ・ハッキラさんがやって来た。

 紫髪の短髪、ボーイッシュな美人女教師だな。

 本人はたいしたことが無い3流魔法陣技師だと卑下していたが、エスパーニャ基準なら1流技師だよ。


 俺とブレインは会議室でレムノスの魔法陣技術の講習を受ける。

 使える魔法陣だと思ったのは「魔力感知魔法陣」だな。


 魔力感知魔法陣を起動すると、設定した範囲で結界を張り、その中に強い魔力が発生すれば感知することができる。

 人間や魔獣、魔法は魔力が強いので、これらが結界に入れば感知可能だ。


「ルミッキ先生。魔力感知魔法陣で魔力を探知したあと、他の魔法陣にアクションを起こさせることは出来ますか?」


「もちろん可能です。もともとこの魔法陣は侵入者に対し、警備用のブザーを鳴らしたり、罠を起動させるのに開発されましたので」


 よし!

 これで大砲の弾が、船に当たった時に爆発するようにできるし、アメリカのVT信管みたいに、竜騎に近接した時に爆発する弾も作れる。

 俺とブレインは熱心にノートを取り、魔法陣の勉強を続ける。


 勉強後半で俺たちは、魔導探知機の制御魔法文字を教えてもらう。

 ここで驚いたのは、ステータスプレート制御文字だ。


「はい皆さんこれを見てください。これはステータスプレートです。普段ステータスを表示することに使用しますが、イメージを魔力に変換して送ることにより、絵や図形を表示することができます」


 そう言うとルミッキ先生は精神集中して、ステータスプレートに魔力を流す。

 すると簡単な船の3D図形みたいな絵が現れた。


 すげー。

 ステータスプレートってディスプレイの代わりになるのか!

 全然知らんかったわ。


 それで魔道具迷宮では、色々なサイズのステータスプレートが獲れるんだな。

 エスパーニャだと誰も知らないから、ゴミみたいな価格で売り買いされてるわけだが。


 俺たちもさっそく、イメージを魔力に変換する方法を教えて貰って試してみる。

 数時間試してみて、俺は丸や三角、四角の簡単な図形を表示させることが出来るようになった。

 しかしブレインは、ルミッキ先生みたいに3D図形を表示できた。

 くそー、なんか悔しいな。

 やっぱブレインはチートだわ。



 それでステータスプレート制御文字とは、魔法陣でステータスプレートの表示をコントロールする技術なのだ。

 つまり魔力でイメージを流すのを、魔法陣に置き換えて実行できる。

 この技術を魔導探知機の表示機能に生かしているわけだ。


 まず魔導探知機を海中に下ろして起動させると、海中の魔力を感知できる。

 パッシブなので、大きな魔力であるほど遠距離から探知可能であり、海中魔獣は平均で体長10メートル以上で強い魔力を持っているので、5キロ先ぐらいから感知可能だ。感知した魔力は魔法陣の制御文字を通して、ディスプレイとなったステータスプレートに表示される。


 自船が中心部で、青い輝点が感知した魔力として表示され、自船からの方位、距離がおおざっぱに把握できる。

 後は船で海中魔獣の真上に移動して、魔導爆雷での攻撃を行なう。


 しかしこれはなぁ、情報関連で実に様々なことができる可能性があるわ。

 例えばレーダーや手持ちの魔力探知機とか、戦術システムなんか作れるかもしれないね。

 というわけで、魔法陣の勉強は実に有意義だった。





 20日。

 勉強が終わって魔王船に戻ってくると、自動装填装置はスプリガンの手によりほぼ完成していた。

 構造は2階建てで、まずミサイル置場でホイストを利用してミサイルを持ち上げ、揚弾筒内にミサイルを入れ上階換装室に送る。


 送られたミサイルは、換装レールに乗せられる。

 換装レールは先っぽが伸縮する仕掛けになっており、装填位置についた連装可動ランチャーに2本のレールを延ばして繋げる。

 次に魔力装填装置のラマーといわれる伸縮する棒でミサイルを押し出し、レール上を進ませて、ランチャー内にミサイルを装填。


 連装可動ランチャーを魔導モーターで動かし、好きな方向にミサイルを向けることができる。

 というシステムになっている。

 連装可動ランチャーのすぐ後ろに装填装置があるため、結構な面積を取るので、今のところ設置は魔王船と巡洋艦に限られるだろう。


 グスタフが作っていた6インチ連装砲、6インチ単装高射砲、8インチ連装砲も完成したようだ。

 俺は完成した兵器をすべて召喚宝典に登録。


 一旦兵器をすべてバラしてランチに乗せ、完成しかけのサーシャ軍事基地に輸送した。

 サーシャ軍事基地は、陸・海・空の統合基地で、海側に研究施設もある。

 その研究施設に兵器を全て送り、魔王船甲板の怪しげな小屋は撤去、研究拠点をサーシャ軍事基地に移した。





エスパーニャ暦5542年 9月24日 13時00分

レムノス島 サーシャ軍事基地研究施設

ミサイル試射場


 サーシャ軍事基地は8割ほど完成している。

 新たな研究拠点は基地の海側にあり、船の泊まれる桟橋と研究できる建物や資材倉庫が並んでいる。

 俺とブレイン、グスタフらスプリガンは、ミサイル試射場にシーダーツ、スパルヴィエロの発射台を設置した。


 俺が上空を見上げると、シャルル局長の操る竜騎が海上を舞っていた。

 今回の試射では、竜騎にミサイルを発射し、武器として使えるかのテストだ。

 標的役はベテランドライバーのシャルル局長にやってもらう。


 ルールはシーダーツ、スパルヴィエロの2発を同時に発射、竜騎の周囲5メートル範囲をミサイルが通過すると竜騎撃墜と判定。

 竜騎は高度500メートルの範囲でミサイルを回避し続ける。

 このテストを計3回繰り返す。


「魔王様。ミサイル発射準備完了しました」


「よし、シャルル局長に連絡。カウント後にミサイル発射」


「魔導通信機で連絡完了。カウント5、4、3、2、1…… 第1回目、発射!」


 スプリガンの号令を聞いて、シーダーツ、スパルヴィエロが固定ランチャーより打ち出される。

 シャルル局長には事前にルールだけ伝えて、ミサイルの詳細は話していない。


 誘導弾が初めて見る武器なら「何、こっちに向かってくるだと!」とか驚かして、あっさり竜騎に命中するだろうが、残念ながらこの世界の竜騎手は誘導弾バージンではない。竜騎の主な攻撃手段「マギア・パレット」は、30度の目視誘導が可能だ。果たして俺たちが作った誘導弾がどれくらい通用するか、俺は興味津々、空を見つめる。



 煙を引きながら上空に登るシーダーツ、スパルヴィエロは途中で2つに別れ、挟み込むように高度500の竜騎を追跡する。

 左後方よりシーダーツが接近、シャルル騎は右急旋回をかけるがシーダーツの旋回角度のほうが狭く、あっさり竜騎の5メートル横を通り過ぎる。

 続けてスパルヴィエロが上から竜騎に突っ込む。


 シャルル騎は急降下をかけるものの、スパルヴィエロのほうが速度が早く、5メートル横を追い抜かれる。

 おぉ、初回は楽勝だったな、これでシャルル騎は2回撃墜だ。


 魔力が尽きたミサイル2機は海に落下。

 海上で待機していた警備船に拾われる。

 落ち着いたところで、2回目の発射。



 1回目と同じく、シーダーツ、スパルヴィエロは途中で2つに別れ、シャルル騎を追跡。

 シャルル騎は再び高度500を取り、ミサイルを引きつけてから急降下を開始した。

 降下しながら巧みに右旋回、左旋回をかけてミサイルをやり過ごす。


 が、シーダーツが急旋回をかけて竜騎に突っ込み、シャルル騎の5メートル下を抜ける。

 直後にシャルル騎が左旋回をかけると、その上空にいたスパルヴィエロは、ほぼ直角に急降下をかけ、シャルル騎の右横5メートルを通過。

 シャルル局長も大分ミサイルに慣れてきたが、今回もミサイルの勝利だ。


 ミサイルの特徴も分かった。

 シーダーツは射程が短いが、低空での安定性が高く小回りが効く。

 スパルヴィエロは射程が長く速度も早いが、旋回が得意では無く小回りが効かない。しかし、急降下での突っ込みはシーダーツより早い。



 最後のテスト、3回目の発射。

 シャルル騎は高度500。

 シーダーツ、スパルヴィエロが下から突き上げる。

 シャルル騎は急降下を開始、位置を交換しミサイルが竜騎の頭を抑える。


 チャンスと見たシーダーツが急降下を開始、シャルル騎に突っ込む。

 だがシャルル騎は急激に減速し、シーダーツは勢い余って竜騎の前を通り過ぎオーバーシュートする。

 その瞬間、シャルル局長の左手が光った。

  

 おおっ、撃った。マギアパレットか!

 マギアパレットがシーダーツ横5メートルを通過する。

 ブレインが俺に尋ねる。


「魔王様?」


「いいだろう。撃墜と認定。シーダーツを空域から離脱させろ」


 シーダーツはテスト空域を離脱、その間もスパルヴィエロは猛追するが、シャルル騎は右旋回をかけて急降下。

 スパルヴィエロも急降下して追跡するが、速度差は100キロほど、すぐには竜騎に追いつけない。


 海上間近でシャルル騎は急旋回して、後方から追ってきたスパルヴィエロを回避。

 スパルヴィエロも旋回して、シャルル騎に追いすがろうとするが、ここで魔力切れ。

 海上に突っ込んだ。


 やっぱ凄いなシャルルさんは!

 わずか3回目にしてミサイルに適応しやがった。

 成績は2勝4敗。

 俺はテスト終了を宣言、シャルル騎が降りてきて桟橋に着地した。

 

「お疲れ様です。シャルル局長」


「どうも。しかし魔王様、嫌らしい武器を開発しましたね。回避に苦労しましたよ」


「最後はミサイルを回避できたじゃないですか。それでミサイルの感想はどうです?」


「初見だと確実にやられますね。竜騎ドライバーは誘導角度30度の前提で訓練していますので、私も調整するのに3回目までかかりました。弱点は速度が遅い点でしょうか。ミサイルの動きに慣れてくると回避はなんとか出来ます。さっきみたいに上手くやればミサイル撃墜も可能でしょう」


「うーん。やはり速度か。アルコンはどの程度で適応するでしょうか?」


「2年ほど。実戦で使用すれば竜騎が情報を持ち帰りますので、それから全体に情報が通達され対策を練り、全部隊に波及するまでに2年です。この期間内で出来なきゃ、軍人なんて商売しててもしかたありません」


「それまでに新型ミサイルの開発が必要ですね」


「できればそれが一番ですが、運用しだいで長持ちさせることができるでしょう。急降下攻撃騎や爆撃騎は爆装していれば動きは鈍いですし、戦闘騎もミサイル回避に集中できない環境なら厳しい。敵竜騎と空中戦中に横からミサイルが来れば回避しようが無いですからね」



 というわけで、ミサイル試射のテストは無事終了。

 実戦でも充分使用できると確認できたので、量産体制に移行することになった。


「ところで魔王様。あのミサイルという武器、いつもあんなに『賑やか』なのですか?」


「へっ、どういう意味ですか?」


「いえ、私を追うときに、あのミサイル達はゲラゲラ笑いながら大声で『マテー!』とか『オレノホウガ、ハヤイー!』とは喋りながら、後ろから迫ってくるんですが」


「ブレイン?」


「ハッ、魔王様。ミサイルが正確に目標を追跡する必要性から、可能な限り思考速度や反射速度を上げるため、ミサイルの弾頭に使用される寄生魔獣の交感神経を太めにしています。そのため、テンションが上がりやすく興奮しやすい体質になっています」


「ああ、そういう『仕様』なわけね……」


 翌日は6インチ連装砲、6インチ単装高射砲、8インチ連装砲の試射も行い問題なかったので、これも量産を指示した。





エスパーニャ暦5542年11月27日 9時00分

レムノス島 魔王国首都ヴァルドロード東5キロ

魔王船甲板


 5542年年末。

 いよいよ魔王船の武装を開始する。

 まずは甲板上に対空兵器を設置していくことにする。


 対空兵器は3基で1ブロックとして、ブロック周囲には装甲は施さず、破片防御と雨、風よけ用の鉄の屋根を設置した。

 このようなブロックを、魔王城の両舷の円筒城壁上に7ブロックずつ配置する。


艦首側

1ブロック 対空臼砲3基

2ブロック 20連装投射機3基

3ブロック 20連装投射機3基

4ブロック 対空臼砲3基

5ブロック 20連装投射機3基

6ブロック 20連装投射機3基

7ブロック 対空臼砲3基

艦尾側


 次に魔王城から見て斜め方向、北東、北西、南東、南西の方角にブロックを3つずつ設置する。

 

1ブロック 20連装投射機3基

2ブロック 対空臼砲3基

3ブロック 20連装投射機3基


 ブロック列には対空兵器が戦列砲みたいに並んでいるので、対空ガンデッキと呼称しておこう。

 対空ガンデッキの対空臼砲は、魔王船を中心に扇状に配置されているので、一斉発射すれば魔王船を覆うように360度に破片が発射できる。



 次に俺は、魔王城城壁の上、魔王城主塔周辺にも対空ガンデッキを配置する。

 魔王城主塔の艦首側、艦尾側、両舷にブロックを3つずつ設置。


1ブロック 対空臼砲3基

2ブロック 20連装投射機3基

3ブロック 対空臼砲3基


 こっちは急降下攻撃対策として、対空臼砲を多く設置。

 砲口は斜め上に上空を向いている。

 これで魔王船真上を守る。


 対空兵器の設置は魔王城周辺のみだけだが、全部で対空兵器数は114基。

 うちの駆逐艦換算で11隻分にもなる。

 数は充分だと思う。


 これらの対空ガンデッキには作業用スケルトンを配置し、ヒューガのコントロールで射撃を行なうことにした。

 27日から30日までかけて、魔王城周辺の対空ガンデッキを召喚で配置完了。




 12月1日。

 生産を行なっていた3千トン級戦闘艦・輸送艦が次々に完成した。


 1日、多目的生体輸送船スフィア級完成。

 2日、生体巡洋艦デーモン・ロード級完成。



 多目的生体輸送船スフィア級は、内装を変えれば、補給艦、兵員輸送艦、物資輸送艦、病院船、工作船等、様々な任務に使用可能な艦だ。

 両舷に作業用の張り出しバルジがあるのが特徴で、たまたまマストを最適位置につけることが出来たので良好な帆走性能を持ち、最大魔帆走速度22ノットを誇る魔王海軍最速艦艇だ。装甲薄いけどね。

 しかし輸送艦が最速だとか、まあいいけど。

 開発期間を短くするために、後で作る鉄甲竜騎母艦、強襲揚陸艦もこの船体設計を流用する。

 諸元は以下の通り。



■多目的生体輸送船 スフィア級


排水量

満載 3800トン


全長 100メートル

全幅 16メートル

喫水 4メートル


主機関  魔導ポンプジェット2基2軸

     甲翼帆 マスト3本

最大魔走速度  18ノット

最大帆走速度  6~8ノット

最大魔帆走速度 22ノット

航続距離 魔力結晶による


最大乗員 700人(兵員600名)


兵装   対艦5インチ旋回式単装砲  2基

     対空バリスタ        2基


艦載機  ――――


艦載艦艇 カッター艇40隻


艦載兵力 600人までの兵員

     

その他  貨物用魔導リフト

     貨物用大型魔導リフト

     竜騎発着ポート1基

     クレーン4基

     多目的大型倉庫

     補給作業用バルジ


装甲種別 鋼鉄、アダマンタイト、ミスリル複合装甲


寄生魔獣重量 10トン




 生体巡洋艦デーモン・ロード級は、駆逐艦に比べ打撃力を大幅に向上した艦だ。

 強力な対艦8インチ旋回式連装砲、生体長射程対空ミサイル、スパルヴィエロを装備。

 ミサイル自動装填装置は、魔王船とこの巡洋艦にしか装備されない。

 魔王海軍艦隊の旗艦として活躍するだろう。

 諸元は以下の通り。



■生体巡洋艦デーモン・ロード級


排水量

満載 3400トン


全長 100メートル

全幅 16メートル

喫水 4メートル


主機関  魔導ポンプジェット2基2軸

     甲翼帆 マスト2本

最大魔走速度  18ノット

最大帆走速度  2~4ノット

最大魔帆走速度 18ノット

航続距離 魔力結晶による


最大乗員 300人


兵装   対艦8インチ旋回式連装砲塔     2基

     両用6インチ長砲身旋回式単装砲塔  4基

     対艦6インチ長砲身固定砲     20門

     対空40連装投射機        10基

     対空5インチ臼砲          6基

     シーダーツ自動装填式ランチャー   2基(16発)

     スパルヴィエロ自動装填式ランチャー 2基(12発)


艦載機  小型竜騎2騎


艦載艦艇 カッター艇15隻


艦載兵力 スケルトンF20名 スケルトンA20名 戦闘ゴーレム4体

     

その他  貨物用魔導リフト

     竜騎発着ポート1基

     クレーン2基


装甲種別 鋼鉄、アダマンタイト、ミスリル複合装甲


寄生魔獣重量 10トン



 だがこいつには、エンリケ局長から少しダメ出しを食らった。


「魔王様。さきほど弾薬の積み込みが終わりましたが、8インチ砲弾が少なすぎる気がします。40発なので都合斉射10回分です。5~6発は当てられるでしょうが、すぐに弾薬が尽きてしまいます。せっかくの強力な8インチ砲が十分に威力を発揮できません。なんとかできませんか?」

 

 俺はさっそくグスタフと検討を重ね、試験的に次の生体巡洋艦デーモン・ロード級2番艦、レザーフェイスをベースライン2として建造することにした。

 ベースライン2は、竜騎搭載をやめて、余ったスペースに弾薬を積み、砲撃戦継続能力を向上させる改装を施すことにした。

 後で2艦で演習を行い能力を比較して、3番艦をどうするか検討する。


 3千トン級ドックが2つとも空いたので、さっそく次の計画艦の建造を開始した。

 今度は強襲揚陸艦と、鉄甲竜騎母艦を建造する。





 12月5日。

 再び魔王船の対空兵装の設置作業だ。


 今回は兵器を取り付ける前に、それを制御する管制塔を設置する。

 まずは魔王城艦首側の円筒城壁の前、第1デッキにある広々とした甲板に管制塔を召喚して配置。


 この管制塔は、小さな城壁の上に、短い塔と長い塔の2つが立っている。

 この短い塔の中に寄生魔獣が入って周囲の対空兵器をコントロールするのだ。

 長い塔のほうは、主砲のコントロールに使用されるだろう。


 設置した管制塔の前面に、6インチ単装高射砲を6基召喚設置。

 管制塔両側に対空ミサイル、スパルヴィエロの連装ランチャー及び自動装填装置を1基ずつ設置。

 管制塔後方に、対空ミサイル、シーダーツの連装ランチャー及び自動装填装置を4基設置した。


 後はコントロールする寄生魔獣を低い塔に配置させ、先ほどの武装をすべて掌握させる。

 魔王船内の育成室から、ブレイン分離体の10トンの寄生魔獣を呼び出し、塔内に入ってもらう。


 すでにブレインやヒューガ、分離体には、アスティリアスで購入した軍事教本を読ませたり、駆逐艦アークデーモンの知識玉を使用して情報を受け渡しており、それに基づいてもっとも効率的な姿を取ってもらう。


 塔内に入った寄生魔獣は合体しつつ変形を行い、本体の目の部分が両側に大きく張り出したシュモクザメのような外観になった。

 目の先っぽには、大きな眼球が10個ほどついており、これで測距と照準を行なうらしい。

 外から見える大きさは10メートルほどになった。

 でけぇ!


「よし、お前には新たな名を与えよう。今日からお前はハンマーヘッドと名乗るがいい。ミサイルと高射砲は任せたぞ!」


「ハハッ、ありがたき幸せ。魔王船の空は私が守ってみせます!」


 俺の名づけに、ハンマーヘッドは大きな口で、頭上から感謝を述べる。

 ハンマーヘッドはさっそく甲板下から手を伸ばし、各砲塔と自動装填装置、ランチャーの魔導モーターに接続、各兵器を掌握した。

 魔導モーターの動作は単純で、+属性の魔力を流せばギアが右回転を行い、-属性の魔力なら左回転する。

 このモーターの働きで、砲塔や仰角の制御を行なうのだ。


 ハンマーヘッドは目をせわしなく動かして、砲塔をグルグル回したり、砲身を上下に動かして動きを確認していた。

 なんか楽しそうだなぁ。



 12月8日。

 次は艦尾円筒城壁。

 ここにも同じように、管制塔を設置してから、6インチ単装高射砲を6基、対空ミサイル、スパルヴィエロとシーダーツを設置した。


 再びコントロール用の寄生魔獣10トンを呼び出し。

 こちらの姿形は、胴体に大量の目玉がついており、耳の部分から長い触手が伸びて、その先端が測距用の大きな眼球になっていた。

 ブレインによれば、あえてハンマーヘッドと違う方式に変えることにより、艦尾側で最適な能力を発揮できるようにしたという。


「ではお前には、カオスヘッドの名前を授けよう。ヨロシク頼むぞ!」


「御意、お任せ下さい魔王様!」


 カオスヘッドは、目玉だらけの頭を下げる。

 というわけで、魔王船第1デッキでの対空兵装設置作業は、これで終了した。



 12月12日。

 今度は第4デッキ両舷の露出ガンデッキに、対艦用の兵装を召喚して取り付ける。

 つまり魔王船側面のテラスのようなデッキに、連装6インチ砲を設置していくのだ。


 まず俺は左舷艦首に、対艦用の連装6インチ砲6基を設置。

 その横に装甲管制室を作った。


 露出ガンデッキ中央部には、低空でやってくる竜騎に対抗するために、対空用の単装6インチ高射砲4基を設置。

 艦尾側には、艦首側と同じように対艦用の連装6インチ砲6基を設置した。

 魔王船を左舷横から見ると、露出ガンデッキに以下のように砲が並んでいる。


 艦首 対艦連装砲6基 装甲管制室 対空高射砲4基 対艦連装砲6基 艦尾


 左舷の対艦6インチ砲は全部で24門。

 魔王海軍巡洋艦2隻分で、全て旋回砲塔だ。

 砲の数はいささか少ないが、高い命中精度と火力の集中で、効果的な攻撃ができると考えている。


 こいつに後で第2デッキに設置する予定の主砲が加われば、魔王船は無敵戦艦のようになるだろう。

 おそらくだが……



 装甲管制室には、これらの6インチ砲をコントロールする30トンの寄生魔獣を呼び出す。

 露出ガンデッキの長さが500メートルあるので、その分寄生魔獣の体が大きくなった。


 30トン寄生魔獣は、装甲管制室の中に入る。

 装甲管制室は、厚い装甲に囲まれた部屋で、横長の覗き穴が空いている。


 30トン寄生魔獣の外観は、覗き穴に合わせて胴体が横に長く、目も横一列に並んでいる。

 耳の部分から触手が伸び、先端の眼球で測距を行なう。

 こいつにも名前を与える。


「お前の名前は殺戮者スローターだ。魔王船側面からの攻撃は頼んだぞ」


「お任せを。側面からくる敵はすべてミンチにして見せましょう!」



 15日からは右舷にも6インチ砲の設置を開始。

 こちらにも30トン寄生魔獣を配置。

 外見はスローターと変わりは無かった。


「よし、お前の名前は今日から殺人者マーダラーだ。右舷は任せたぞ」


「御意。敵艦を山ほど沈めて見せます!」



 というわけで17日に第4デッキの武装化は終了。

 兵器を召喚して、寄生魔獣を配置するだけだったが1週間の時間がかかった。

 やっぱ魔王船はデカイや。

 足がだるくなったわ。





 さて12月17日。

 俺は5インチ、6インチ、8インチの大砲で使用する新型砲弾の開発にかかった。


 この世界の大砲にはライフリングが刻まれていないので、大砲の命中率、飛距離はイマイチだと思われる。

 そこで俺がライフリングを刻めれば良いのだが、そもそもどんな風に刻めばいいのか分からない。


 多分螺旋状なんだろうが、それがどのくらいの間隔なのかが分からないし、砲身のどこまで刻むかも不明だ。

 ネットでのうろ覚えの知識を思い出すと、砲弾も若干大きくして、ライフリングと上手くかみ合わせる必要もある。それに発射時の砲弾の膨張率も計算に入れる等、検証しなくてはいけない事柄が数多くある。


 ライフリングは刻めば終わりというわけではなく、素人が易々と作れるシロモノでは無いのだ。

 実験を長々と数年でもできれば、そのうち正解も分かるだろうが、残念ながらそんな時間はない。


 なので俺は、魔法で結果だけを似たように再現することにした。

 すなわち砲弾に螺旋状に風魔法を起こし、砲弾を回転させて命中率、飛距離をアップさせ、ライフリング砲から発射された弾と同等の効果を得る。

 このコンセプトで開発されるのが、魔法の砲弾「スクリューパレット」だ。

 まず俺は、5インチ砲弾から製作を開始した。



 年末の25日。

 スクリューパレットの試作がほぼ出来上がった。


 砲弾の構造だが、砲から弾を発射すると、砲弾の尾部面のスイッチを仕込んだ中心部の窪んだ穴に爆発ガスが流れ込む。

 砲弾が発射されると共にスイッチが押され、魔力停止魔法陣を破壊、魔力が次の魔法陣に流れて風魔法を起動する。

 この辺の仕組みは魔法矢マジカルフレッチャと同じだな。


 砲弾発射直後に側面の風魔法、飛翔ビエント・フライが起動し、起こされた強風が螺旋状に流れて砲弾をコマのように高速回転させる。

 同時にレムノスの魔法陣、魔力感知魔法陣が作動し、砲弾弾頭に3メートルの結界を形成し、強い魔力を感知すると爆発エクスプローションで、砲弾が爆発する。


 一般的に魔素は大気中が一番薄く、海や地面はやや濃い。

 軍艦なんかは、船舶補修の魔法を使うために、全体にミスリル線を配線して魔力を流しているので、魔力がかなり強い。

 竜騎も飛行中は基本魔力を使うので、強い魔力を発する。


 つまり、魔力感知魔法陣が作動しているスクリューパレットならば、海や地面、船や竜騎に命中すれば確実に爆発するわけだ。

 おまけに対艦、対空、対地、どこでも攻撃できる砲弾になる。


 俺は試作の砲弾の魔法陣を組み込んだ信管部分を眺め、もっと改良ができないか、もっと改善ができないか、色々試した。

 そんなことをしている内に、年末がやって来て、俺は砲弾の開発を一旦停止し、年末年始のパーティーの準備に忙殺されることになった。



 12月30日。

 魔王船での2回目の新年パーティー。

 エスパーニャ暦5543年となった。

 ブドウを食べて今年の幸運を祈る。


 今回は食べ物も酒も豊富にあり、例年の風習どおり1月6日まで、飲めや歌えやで騒いで過ごすことになる。

 魔王船の住民は、自然区画か船内商店街にて新年のお祝いをしており、俺は婚約者と局長全員を引き連れて、住民達に挨拶。

 深夜3時にはレムノス島に渡り、首都でも住民に挨拶をした。

 住民が大分増え、俺も新年から公務をやる立場になったわけだ。


 1月1日は去年と同じようにパッツィに乗って頑張り、2日はソフィアに乗って頑張った。

 パッツィの時はちょいと失敗したな、寸止めプレイをやって調子に乗ってしまった。


絶頂で 止まれる俺は 金メダル


 しかし、酒の酔いが酷くなって、気分が悪くなって倒れてしまった。


飲んだら乗るな 乗るなら飲むな なくそう寸止めプレイ!




 気を取り直して1月8日より、スクリューパレットの開発を再開。

 駆逐艦で試射を行い、データを取ったり、改良を行なったりした。


 20日、5インチ、6インチ、8インチのスクリューパレットが完成。

 最終テストの後、量産に入る。


 10インチ砲、12インチ砲に関しては、未だに開発中だ。

 さすがに大きいだけあって、グスタフでも連装砲塔製作にてこずっている。

 なんとか開戦には間に合って欲しいものだ。



    第55話 「魔王様、新兵器を作る」

   ⇒第56話 「魔王様、OSを開発する」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ