13話 〜中破〜
今回、めっちゃ長くなってますね。
……というより、これから長くなることがあるかもしれませんね。
もちろん、4000文字以上にはならないよう、出来るだけ読みやすくなるように頑張ります。
「……すみません、艦長。」
私は謝っていた。
各員が集められた、艦橋の中で。
謝りたかった。
私のせいで、艦がボロボロにされた。
私が毒鵙ばかりに構っていたせい。
私が一度、気絶していたせい。
そう、だから……。
「どうして、謝るんだ。」
「…私が、もっとしっかりしていたら、
こんなことにならなかったはずです。
私のせいで、艦が──」
「自惚れるな!!」
怒鳴られる。
でも、目の前の艦長は、怒りとは違う顔をしていた。
心配とか、後悔とか。
多分、そういうの。
「お前1人で戦局は変わらない!
むしろ……お前はまだ頑張った方だ。」
艦長は後ろを向いた。
初めて訪れた時と変わらない艦橋。
なのに、視線の先のそれは暗く見えた。
「お前のおかげでネームドによる被害は減らせた。
むしろ、艦の防衛は我々でこなすべきものだった。」
「そうだとしても、いや……
なんでもないです。」
私は口をつむぐ。
わかってるよ、こんなこと言っても意味はないって。
守るって、言ったのになんて。
「この舟はもはや、長期の遠征は不能だ。」
艦長は再びこちらを向いた。
かと思えば、目の前に置かれたテーブルを叩きつけた。
「我々はこれから、海賊の港"ケローネ"に向かう!
本来なら避けたいところだが、致し方ない。」
……海賊の?
そんなところに行っても意味あるのかな?
「各員、解散し持ち場につけ!」
「「は!」」
艦長の呼びかけに軍人さんたちは呼応する。
なのに、私にはどうしたらいいかわからなかった。
スーツを着て、敵を墜とす。
それしか役割のない、私には。
「……リロード。」
アサルトライフルに、弾丸をこめる。
例のレーザーの擬似弾丸を。
スコープを除いて敵にそれを向けてトリガーを引く。
「……みっつ。」
的の芯を捉えたのは、今ので三つ。
その他はどれも、的の端っことか。
レバーを引いて、空薬莢を捨てる。
「……よっつ。」
……今、増えた。
私は今、射撃訓練場にいる。
ここで撃つぐらいしか、できることがないから。
「……外れた。」
こんなんじゃ、敵に当たらない。
もっと強くならなくちゃ守れない。
「もっと!」
「大丈夫か、お嬢ちゃん。」
後ろを向く。
そこにはダグラスさんがいた。
……あの甘酒を、片手に。
「ほら、これ飲んで休みな。」
「……ありがとうございます。」
私はそれを受け取った。
……受け取るだけ。
今すぐ飲む気にはなれない。
私たちはベンチに腰掛ける。
「…やっぱり、まだ気にしているのか?」
「何を、ですか?」
とぼけてみる。
いつまでもうじうじしてらんないことぐらい、わかってるから。
「わかってるだろうが、お嬢ちゃんが気にしても事態は好転しねぇよ。
お嬢ちゃんだけが戦ってたわけじゃない。」
「……はい。」
過程なんて、どうとも言える。
って、私は思う。
結局は、結果なんだろうって。
「強いていうなら、"俺たち"の負けだ。
だから──」
「でも、私は私にできることがしたいです。
何もせずに見ているだけは、辛いです。」
ダグラスさんは面を食らった顔をした。
そりゃ、そうでしょ。
自分がさっきまで気にかけていた相手が、急に"それでも"と突っかかってきたら。
「……そうか。
でも、休めるうちに休んどけよ?
今では、お嬢ちゃんが最高戦力になりつつあるんだからな?」
「…はい。」
甘酒を一口、口に含む。
やっぱり、甘い。
味覚も、嗅覚も。
「それと、嬢ちゃん。
担当の整備士が何か呼んでいたぞ。
休憩を兼ねて、見に行ってやりな。」
「はい、そうします。」
ダグラスさんがベンチから立ち上がる。
"じゃあな"といい、ドアを開ける。
そのまま、行ってしまった。
私は再び甘酒を口にする。
甘さは、変わらなかった。
「それで、ルミネさん。
私に何か用事が?」
「あぁ、そうだね。
忘れてたよ。」
忘れてたよって……
私が格納庫に来てから30分も経ってるんですけど……
スーツの新要素と上層部に提出する予定のデータをまとめてみたって話ずっとしてたけど、やっぱりそっちが本命じゃなかったじゃん!?
もっと効率的に装備の切り替えができるように腰のホルダーを改良したというのは、まだいいと思うけどさ。
私の戦闘データをまとめる作業のために無茶振りされて、作業が止まってるって愚痴、聞く必要あった!?
「まず、君は昨日の戦闘で何が必要だと思った?」
「それは……技術です。
あと、もっと反射を鍛えないと──」
「そっちじゃない!!」
いや、急に叫ばなくても……
正直ビビっちゃったじゃん。
あと、モンキーレンチを手のひらにトントンさせてるのやめて……
こっち狙ってるみたいで怖いよ。
「君はオペレーターに何を求めた。
私に何を射出させた?」
「えっと……
バールのようなもの、ですかね。」
「そう、近接武器だよ!」
あっ、私があまりにも答えに辿りつかなさすぎてハシゴ外されちゃった!?
心なしか呆れた顔されてる……
いや、それさっきまでの私のがしたかったんですけど。
「これまで、スーツの運用思想において、近接武器は不要とされてきた。
だが、君はそれを成してみせた。」
「……どうして不要だと判断されたんですか?」
普通に考えたら、近づかれるリスクしかないはずなのに。
それも、高速化する空では。
「それは、まだ対G環境が整っていないからだよ。」
「……はい?」
対G環境が整ってないって言われても。
じゃあ、なんで私は無事な──
「君は特別なんだよ。
まさに切り札。
本来は、高速で近づいて武装を蹴り上げるなんて運用、考えられてないんだ。
そこで急停止したら、一般兵なら──
そうだな。
投げつけられたパイ、とでも言おうか。」
背筋がゾッとした。
私もそうなっていたのかもしれない。
そう考えると、怖くなってくる。
空の上でそんなこと、感じたことなかったのに。
「……安心しろ。
君の戦闘データのおかげで正式仕様でも環境を作る目処は立ってるから──
まぁ、本部の連中がどれだけ有能かによるけどな。
もちろん、今君のにもそのシステムと装備を組み込んでいる。」
「……それ、本当に安心していいものですか?」
彼女は急に黙ってしまう。
私が彼女の顔を見てみると、どこか怯えたような表情で──
「……正直、君のスーツには最低限しか組み込まないつもりだ。」
「どうして、ですか?」
「それは……推測でしかないのだが。
これから君は、さらにスピードを求めることになると思うんだ。
その上で、その環境は足枷にしかならない。」
「ルミネさん……」
確かに、そうかもしれない。
反射神経だけよくなっても、結局敵の攻撃を避けるには瞬間的な速さが必要。
前回の戦闘でよくわかったことの一つ。
「─ふぅ……
さて、話を戻そうか。
時間は無尽蔵にあるわけじゃないんだ。」
「……はい。」
……そう、なんだけどさ。
ルミネさんがそれいうとかなり違和感。
だって、さっきも、ね。
「さて、近接武器についてだが。
本部が求めてくる条件があるとするなら、何があると思う?」
「えっと……
スピードを求めないとか、比較的簡単に使えるものとか?」
ルミネさんは、さっきまでとは違って表情が明るい。
なんか、当たってたみたい。
「君の言う通り、スピードを求めない。
それに再現性。
兵器である以上はそれは最も重要なことだね。」
「そうです──」
「しかし、正直それが君の戦闘スタイルに合ってるとは思えないんだ。」
ルミネさんは端末を拾い上げる。
どこから持ってきたのかは知らないけど。
そこには、まとめている途中の"データ"が写っている。
その内容はタイトルでわかった。
「君は比較的、インファイトを好む傾向がある。」
「…そうですね。」
まぁ、接近戦を仕掛けることは多いけど……
「しかし、本部が開発を求めてる武器だと正直、インファイトしてるうちに攻撃を喰らって死ぬ未来しか見えないんだ。」
「ちなみに、どんな武器なんですか?」
ルミネさんは苦虫を噛んだような顔をする。
まるで、想像もしたくないかのように。
「レーザートーチだよ。
時間をかけてゆっくり、だけど確実に敵を切断する、とさ。
正直浪漫に欠けるんだよ。
そう、浪漫!」
あっ、スイッチ入った。
「アイリス!
君の意見が欲しくてね!
君は戦場でどんな近接武器を望む?
まだ構想段階なのだが、ハンマーのような打撃武器はどうだい?
関節部を狙える技量があれば、下手な切断武器よりも強力だと思うんだ。」
「落ち着いてください!
まず、ハンマー自体に浪漫はないですよ!?
その前にジェノサイドなんです!
構図が!」
「じゃあ、君は何を求める?
なんでも、開発してみせようじゃないか!」
やばい、変なスイッチ入って暴走してる……
でも、使いたい武器か。
正直、切断武器ってのは強くないだろうし。
ハンマーのような質量武器は重いから運ぶのに苦労するし……
「質量武器なら、別に重くない本体をこう、高速でぶつけるとか。
質量より、火薬のスピードで敵を貫けたら、強そ──」
「パイルバンカーだね!!」
「……は、はい?」
パイルバンカーって何!?
パイル……って杭のことだよね?
……ヴァンパイアでも討伐するの?
「じゃあ、早速取り掛かってみるよ!」
「えっ、ちょ!?
行くのが早いです……」
私が止める前に、彼女は奥の方に行ってしまった。
多分、素材集めとか?
「……帰ろ。」
とりあえず、ここにいても仕方ないし、もう。
とりあえず、格納庫の扉を開ける。
そして踏み出す。
その行き先をまだ、決めきれていなかったけど。




