おまけ おっさん、普通の異世界を行く
今回のお題は停滞する文明を引き上げろだ。
この世界、スキルや魔法があって、言うなれば魔法文明だ。
だが、スキルや魔法は術者のイメージに左右される。
想像してみろ、髪の毛を裂くように、縦に四等分できるか。
そんな細かいイメージは無理だろう。
手で出来ない細かいことは、ほぼ無理だと思って良い。
細かいことができたから何だって言うかも知れないが、工業製品は誤差の精度が指標のひとつになる。
10センチって注文がきたら、10センチぴったりでなければならない。
誤差をどれだけ少なくするかで、製品の質が問われる。
頭のイメージでスキルや魔法を行使して物を作っている限りは、製品の質は上がらない。
これはどの魔法文明にも共通する悩みだ。
モンスターの素材がなまじ便利だから、化学の発展もない。
俺は日本の化学製品の色々な知識を翻訳して、ばら撒いた。
だが、モンスター素材に勝てないんだよ。
モンスター素材は魔力で硬くなったり、魔力で色々な効果を発揮する物が多い。
だから、勝てない。
辛うじて、異世界人の興味を惹いたのは、合金などを含む、金属加工技術だけだ。
「助手、来いアルマ、エリナ、モニカ」
「はいな。なんや見慣れた光景やね」
「来たわよ。生まれた世界と変わりない気がする」
「闇は不変。我も不変なり」
状況を話す。
「文明の発展。うちらの世界も停滞しているから、ちょっとやわ。難しい問題とちゃう」
「非常に難しいと思うわね。切っ掛けがあれば何年か経てば変わるかも」
「堤防の決壊は一つの穴から始まる」
うーん、切っ掛けか。
翻訳本を書くのは良い。
でもそれを研究して役立てる人がたくさんいないと。
必要とされてない技術は発展しないからな。
魔法文明をそのまま引き継ぐのなら、思考の中にナノメートル単位の定規を作るべきだ。
スキルなら可能か。
定規スキルのスキルオーブをダンジョンボスのドロップ品とした。
定規スキルは地味なスキルだ。
イメージする時に、長さや大きさを測って補助してくれる。
魔法やスキルが精密機器並みになるってことだ。
ダンジョンの深い階層のドロップ品としてCADスキルも用意した。
これで複雑な形の製品も作れる。
最初、この二つのスキルは見向きもされなかった。
だが、国王主催の、品評会で、この二つのスキルを使って作った製品が優勝。
一挙にこの二つのスキルは有名になった。
金属などの製品はこれで良い。
化学だな。
プラスチックを作るには原油が必要だ。
地表に原油が出ているなんて都合のいい土地はない。
原油を掘り当てるのは流石にな。
魔法化学というべき物を作り出すべきか。
魔力を使って化学反応を起こさせる。
だが、やっぱり原油は必要だ。
いくら魔法でも無からは作り出せないからだ。
そこで登場、モンスタープランクトン。
こいつは原油と同じ成分を含んでる。
このモンスター素材でプラスチックや化学製品が作られ、一挙に化学が発展。
容器とかとしてプラスチックは便利だからね。
化学繊維も便利だ。
ゴムの木はあったので、合成ゴムも作り出された。
ただ、スキルや魔法で合成しているので、単価が高い。
そして、家電のアイデアを元に画期的な魔道具の数々が生み出された。
プラスチックを先に作って良かったよ。
木を加工したのでは家電みたいな物は難しいからね。
魔道具も意外に便利なのは知っている。
大抵の家電は作れるからね。
電気の代わりに魔力。
電波の代わりに魔力波。
通信の魔道具も出来た。
コンピューターは流石に無理だが、そのうち誰かが何とかしそうだ。
そう願っている。
問題点として、大量生産は無理だな。
スキルや魔法では機械が生産する能力とは比べ物にならない。
だが、確実に文明は進んだと言える。
とりあえずはこれで良いだろう。
価格が高いと不満が溜まれば、安く大量に作る方法を現地人が模索するはず。
俺が文明をけん引するのではなく、主役は現地人だ。
俺の役目はここで終りだ。
きっかけは作った。
この世界の人間が、魔法文明を捨てて、地球みたいな科学文明になるかは分からない。
どういうふうに文明が進むのかが楽しみだ。




