アールズ到着!
この作品は、ノベルアップ+にも掲載しています。
西の都 アールズ
フェルナンド島の三大都市の一つ。アールズ。
周囲の街や村を吸収合併し、王都『アールズファスト』と呼ばれるようになるのはもう少し先の話である。
数年前には三大都市による首都権を巡っての争いが勃発しかけたが、大隆起によって発生した『赤角』の討伐に重きをおくこととなり内部紛争には至らなかった。
国王がアールズに在住しているにも関わらず首都権争奪戦が勃発しかけるのもおかしな話だが、それだけ他の二都市が力を持っているという事である。
アールズの騎士団、そして騎士団のサポート部隊ライトブレード隊が『赤角』から街を守り引いては島を守ったと言われ、内紛手前までいった首都権争いに終止符を打つ事になった。
騎士団、そしてライトブレード隊の活躍がこの街を首都にした、といっても過言ではない。
アールズは街全体が緩やかな傾斜地に在り、高い外壁でぐるりと囲まれた白を基調としたこじゃれた外観の街並みが特徴的である。
東門、西門、南門の三ヶ所が街への入り口となっており、北側は高い外壁で閉ざされ尚且つその一帯は複雑な岩盤地帯となっている為に侵入不可能と言われ、『白い坂の街』『鉄壁都市』の二つ名で呼ばれている。
この都市では、エルフ失踪事件がこの数ヶ月で7件発生している。
30番区街ある内、それが確認されているのは、10番区で3件、12番区で2件、14番区で2件である。
行方不明や失踪は珍しい事では無いが、ここ数年は治安の良い街として広く認識されていただけに、それぞれの区民にとっては気持ちの良いものではなかった。
いずれも身寄りのない、いわゆる『はぐれエルフ』であったせいか、特に他区住民達は大きな関心を示さなかった。
発生件数7件という数字も信憑性のないもので、それ以上かそれ以下かも定かではない。
それよりも、ライトブレード隊隊長『白姫』ラスティと騎士団長ヴァンデローグの恋仲の方が一般民衆の気になるゴシップネタとして話題となっていた。
婚約発表も間近である、とか、ヴァンデローグには他にも恋人がいるらしい、とか、いつの世も民衆はそんな話題が大好物なのだ。
◇
近々、花火大会があるということで外壁門は多くの人で賑わいをみせていた。
『7月組』一行はアールズに到着し、街の外壁門で手荷物チェックの列に並んでいた。
帯剣者は許可証として、手首に特殊なインクで造られた押印を受けなければならない。
その為、ファルナルークだけは別の列に並び先に街に入って皆を待った。それだけ帯剣者は人数が少ないということである。
しばらくして皆と合流し5人揃って街を歩く。
東門から入るとそこは20番区街。
20番区を過ぎると、すぐに7番区街となっている。
「すごい人だかりですねー、ファイスさん迷子にならないで下さいね!」
「ならないよー。あ!いーもん見つけた!」
「あっ、ファイスさん!?」
呼び止める間もなく、ファイスはあっという間に人ごみの中に消えてしまった。
「とりあえず街ブラしよっかー。ファイスも子供じゃないんだからダイジョブでしょ」
「しょうがないですねー」
◇
7番区街の大通りにあるこじゃれた喫茶店。
ラスティとヴァンデローグは人目もはばからずに非番の休日を楽しんでいた。
たまたま通りかかったシルス達が、彼らを遠目にではあるが一見することが出来たのは幸運としか言い様がない。
シェラーラと図書館で調べたアールズの記事と同様の出来事が目の前にある。
シルスにとっては歴史上の人物達。
史実と同様の出来事を目の当たりにして、シルスは改めて、自分が時を超えて来たことを実感していた。
「シルスちゃんの予知夢当たってるみたいだねー。スゴいね!」
「いや~、自分でもビックリですよー、はははー」
「白姫様のプライベート拝めるなんてなー、ラッキーだぜ、俺達」
長身のルディフは背伸びせずとも二人の姿を見れたが、シルスはつま先立ちしても何も見えない。
「シルスちゃん、おんぶしてあげるよ。ほれ」
「……後で耳ペロさせろとか言わないで下さいね」
「言わないよう」……たぶん
シュレスの背を借りて人だかりから頭一つ抜け出すと周囲がよく見渡せる。
おしゃれな日用品店、衣服店に並び、白とベージュを基調とした『オトナ』な感じの喫茶店に二人の姿を見る事が出来た。
「あ、見えたっ。うわー、めっちゃ美人……私服ですかねー?ステキですねえ。セレブ感パない!って感じですねえ」
「せれぶかんぱない……?シルスちゃんは時々知らない言葉使うよねー。若者言葉なのかな?」
「ナウでヤングな若者言葉です!にしても、あのお二人はお忍びデートって感じが全然ないですねー」
「お忍ばないってのがいーんじゃん!ねえファル」
「えっ?ああ、うん……」
「いーですよねえ、絵に描いたような美男美女!ね!ファルナルークさん!」
「……にゃんで二人とも我に聞く?」
シュレスの背からとん、と降りてファルナルークの隣に立つ。
「ファルナルークさんはどんなデートが得意ですかっ?」
「……デートに得意不得意にゃぞにゃい」
「わたしはですねえ、たとえ服がダサくても好きな人とこうやって同じ時間を一緒にいるって、それだけで幸せですよぉ!」
パチパチきらりっ、と乙女まばたき上目使いでファルナルークをじっと見つめるシルス。
「……上目使いで我を見にゃいでくれっ。あと、我の服はダサくにゃいっ」
「ん?ファルが照れてる?ふーん、へーえ」
少しずつ、シルスとファルナルークが打ち解けていく。
シュレスはそんな二人のやりとりを微笑ましく思うのだった。
「ファイスさん、遅いですねえ。どこほっつき歩いてるんですかね?」
この旅でシルスはファイスの扱いに大分慣れ、上下関係で言えばファイスのお気楽な性格も相まって、ファイスの方が自分よりも『ちょっと下』くらいの感覚である。
ややもすると、ばたばたと駆け足でファイスが戻ってきた。
「さっき、シルスのアタマ見えたからいい目印になったよ!ファルにいいモン買って来た!ハイこれ。マタタビ粉とカツオぶし!」
「ファイスっち……マタタビ粉とカツオぶしって。白姫様と騎士団長のデート見てみ?」
貧乏庶民と上流騎士の差を目の当たりにしているようで、ルディフは額に手を当てて首を横に振った。
「……それを我にどうしろと……?」
眉間にシワをよせ厳しい顔でファイスをジト見するファルナルーク。
「ファル……目がすわってるよコワイよ」
「ファイスさん……ワザと怒られようとしてませんか?」さすがにシルスも呆れ顔。
「え!?俺はマジだけど?」
「にゃお悪いわ!うつけもにょっ!……まあ、それは受け取ってやらんでもにゃい」
「えっ!?受け取っちゃうんですか!?」
ファイスから白いマタタビ粉の入った小袋を奪うように受け取ると、くんくんと心地良さそうに香りを嗅ぐ。
「マタタビにょこにょ香りが……我を混沌とした堕落の底にいざにゃう……!……うにゃん!」
「わあ!ファルナルークさんがふにゃふにゃに!おそるべしマタタビ!」
「ファルってけっこうクールなコのハズなんだけどなー。旅って人を変えるんだねー。マタタビだけにね!」
「あっ!上手いですね、それ!」
シルスがパチパチと拍手する。
「……危機感無いねえ、キミら。はたから見たら、粉でラリってるヤバいヤツにしか見えないからね」
「じゃあ、次、ルディフさん!かつおぶしで整えてみましょう!」
「ナイナイ、なんもでないよ」
ルディフは、ヒラヒラと手を振ってシルスを相手にしなかった。
「今日も呑気でお気楽だよ、この『7月組』は」
お気楽御一行はアールズの街に到着!
シルスの目的は達成できるのか?
面白かったよ!続きが気になるよ!と思われた方は評価ポイント、ブックマーク登録を頂けたら嬉しいです!
作者の励みになります!
続けて読んで頂けたら幸いです!




