白姫ラスティと騎士団長ヴァンデローグ
この作品は、ノベルアップ+にも掲載しています。
ラスティはライトブレード隊員の宿舎ではなく、王宮にある上級士官舎で生活をしている。
任務を終え、夕刻の簡易ミーティングの後、解散。
ライトブレード隊のいつものルーティンである。
シャワーを浴び、髪を乾かしながら今朝の切り傷痕をじっと見つめるラスティ。
うすく細い線を引いたような傷痕だ。
リプニカの治癒で止血され、ほぼ完治している。
傷痕を見つめながら、ラスティは感じていた。
やはり、マジクスの力は弱まっている。
『絶対防御』
『リバースダメージ』
赤角との戦いでも、模擬戦闘でも、この能力の恩恵を受けて無傷でいられた。
確実に、この能力は消える。
以前の自分なら、このような切り傷など負わずに済んだはずである。
傷の原因は、間違いなくテュアルだ。
自分に傷を負わせた相手に同等のダメージを返す能力『リバースダメージ』によって、テュアルの指先が切れているのが見えた。
「私のこの銀色の髪を……あの女の返り血で真紅に染め上げてみたいものですね……」
正気とは思えない独り言を呟くと、ラスティはふっとため息をついた。
コン、ココン。ココン。
誰が来たかすぐに分かるようにとノックの合図を決めたのは、ヴァンデローグの方だ。
「どうぞ」
「こんばんは、ラスティ」
騎士団長ヴァンデローグもラスティと同じく、上級士官舎で寝食を共にしている。
名門エスタール家の長男であるにも関わらず王宮住まいとなっているのは、騎士団長としての責務を担っているからだけではなく、王からの厚い信頼を受けている証でもある。
王や王妃からだけでなく、高官連中や民衆からの信頼や人望も厚い『完全無欠』の騎士団長。
赤角との闘いからアールズを、引いてはこのフェルナンド島を救った英雄としての認知度も非常に高い、次期国王候補とまで言われるほどの人物である。
ラスティと『男女の仲』になって、半年が経つ。
週に三日は、ヴァンデローグの方から積極的にラスティの部屋を訪れるようになっていた。
軽装の夜着。
後ろ手に何か隠し持っているが、ラスティはそれが何か知っている。
「返事を待たなくても入ってくればよろしいのに」
「可憐な淑女の部屋に不躾に入るわけにはいかないよ」
「その淑女の部屋にお酒を持ち込むのは、不躾には当たらないのですか?」
「ん、手厳しいね」
ヴァンデローグが苦笑いを浮かべる。
「お掛けになって下さい。今、グラスを……ん……」
ラスティの言葉を遮るようにヴァンデローグが彼女の唇を塞いだ。
「ん……ふ」
ラスティから甘い吐息が漏れる。
「……もう酔ってらっしゃるの?」
「僕はいつも酔っている。君の魅力にね」
「お上手ですね……」
もつれるようにして二人はベッドに倒れ込んだ。
「君から溢れ出る蜜は、甘美で、淫靡で、世界中のどんな美酒にも勝る……」
――このお方の口説き文句は一体、どこから得たものなのだろう……
首筋を這う彼の唇を感じながら、ラスティはふとそんな事を思う。
ラスティの白い肌に、背に、豊かな胸に、均整のとれた曲線美に指を滑らせるヴァンデローグ。
ラスティはヴァンデローグに身を任せ、時に彼を組伏せ、二人の夜は更けていく。
◇
◇
「いつ見ても、この傷痕は羽ばたく鳥にしか見えませんね……」
「なかなかカッコいいだろう?」
「カッコいいですよ、ヴァニィ君」
「その愛称は人前では言わないでほしい……」
傷痕を誇る少年のような自慢気な笑みと、子供の頃の愛称を恥ずかしがる照れ笑い。
その両方を見せるヴァンデローグを、ラスティは『可愛い』と感じる。
肌を合わせた後に嗜む酒の時間は、忙しい二人にとって唯一の娯楽と言っていい。
娯楽と言えど、泥酔するまで飲むような事はしない。いつでも緊急出動出来るような体勢でいなければならないからだ。
「花火大会が楽しみだね。本当は二人きりで見たいところだが」
「誇りを持って職務にあたるべし。貴方のお父上のお言葉ですよ?」
「職務に手を抜くつもりは無いが……君との時間が削られるのは歯痒いものだよ」
ラスティの、絹のようになめらかで艶やかな銀色の髪を優しく撫でるヴァンデローグ。
「……嬉しいです。素直にそう思います……本当に」
せめてこの二人の時間だけは誰も邪魔をしないで、とラスティは切に願う。
大きくたくましい背中に頬を寄せリラックスするラスティ。
ふと、ヴァンデローグの後ろ髪をみると、見たことのない編み目で結ってある数本の髪の束を見つけた。
「貴方も可愛いらしいおしゃれをするのですね」
「ん?なんのことだい?」
くすくすと微笑むラスティに答えるヴァンデローグは何の事か判らず戸惑う。
「ステキだと思いますよ」
「何を言っているのか分からないけど……礼を言っておくよ。これで、どうかな?」
ヴァンデローグは果実酒を口に含むと、ラスティに口移しでそれを飲ませた。
「ん……んん」
こくん、と喉を鳴らし飲み干すラスティ。
「私も……是非とも、ご返盃を……」
ラスティもヴァンデローグ同様に果実酒を口移しする。
「君は……僕の全てを包み込む女神のようで……僕を堕落させる悪魔のようだよ……」
「うふふ……貴方の精気を搾取する、ただの淫魔、かもしれませんよ?」
「……それも悪くない」
ラスティの細い腰に腕を回し、ぐうっと抱き寄せる。
「……明日は街にお連れ下さるのでしょう?」
「7番区あたりにね。いい店があるんだよ」
「早めに寝た方が……」
「まだ夜は長い……それに、君を、抱き足りない……」
静かな夜に、月明かりの差し込む部屋で再び肌を重ね二人だけの世界へと堕ちていく。
ラスティとヴァンデローグのイチャイチャする大人な感じ、を感じ取って頂ければ!
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