エピローグ
今日もとてとて♪
わたしは気ままに一人旅。
一人、と言っても一人じゃないんだけど。
わたし達は何十年か前に訪れた思い出の街、アールズにやってきた。
アールズの街……何十年ぶりだろ。
アールズファストに改名されてから何年経ったのかな?
街に入る前にどうしても立ち寄りたい場所があって、そこに向かっている途中なのです。
夜明けまであと数時間。
満月の明かりはあるけど、足元が見えづらい。
でも大丈夫。
わたしの足元をぽわっとした明かりで照らしてくれてるのは、光の精霊『ららん』ちゃん。
時々空中にふわふわと漂って一時静止。わたしを気遣ってくれてるんだよね。
いいコだよう。いつもありがとうね♪
ららんちゃんはココに来るのは初めてだよね。
天空にはワグランの翠彗星。
西の空には満月。
この感じ……懐かしいような、胸が切なくなるような魔力を感じる。
『時渡』の瞬間が近づいてるんだ。
だからこんなにも、うなじの辺りががピリピリちくちくするんだな。
あの彗星を見るのはこれで何度目かな?
アールズの東門から少し離れた場所に、わたしの目的の……うわ。
けっこう荒れてるなあ……わたしの背より高い雑草まであるよ。
切り株親分さん、どこですかー?
がさがさと藪に分け入るコト数分。
えー、と……あ!あった!
懐かしい!鏡面加工された切り株親分さん。真ん中辺りに傷がある……コレが原因……だったのかな?
ちょっとくすんでるけど、きゅきゅっと磨けば……ほら、キレイになった♪
何十年経ってもこんな風に残ってるなんて、メレディスさんて本当にスゴい魔女さんだったんだなあ。
んー……もうそろそろかな……?
今映ってるのは『今』のわたしの顔だけど……
見えるかなぁ……?
ん……?
あっ、見えてきたっ!
わたしだ!13歳のわたし!
うわっ!カワイイ!この頃のわたしってこんなにカワイかったんだー。
そんなの、まーったく意識してなかったなあ。
毎日がてんやわんやで、無我夢中で……わちゃわちゃしてて、愉快で、楽しくて……怖い思いもしたりしたけど……
ふふっ。わたしったら。
ビックリしてるビックリしてる♪
ふわふわの髪の毛、ハネた前髪。小さい顔に大きな目……先のとがった耳……
自分で言うのもなんだけど、カワイイなー。
あ、あー……消えちゃった……あの頃のわたしの魔力じゃ、こんなものかあ……
光の上位精霊と仲良くなれるなんて、あの頃は考えもしなかったっけ……
んー、わたしはわたしに何か残せたのかな?
あの時のコトってよく覚えてないんだよなあ……
ね、13歳のわたし。
キミはね。ちょっとしたアクシデントがあってね、そこからさらに過去に飛んじゃうの。
楽しい毎日だけど、辛い体験もするコトになっちゃうの。
でも、大丈夫だよ。
綿ボコリの精霊を見捨てずに持ち続けてたコトが。
精霊を大切に想ってたキミの優しさが。
キミの周りの心の温かい人達が。
キミを。
あの人達の……
若い頃のおばあちゃん達の未来を。
キミ自身の未来を、わたしを、救うんだよ。
だから、わたしはココにいるの。
ね、13歳のわたし。
キミが頑張ってくれたから。
キミが生まれる未来を選んでくれたから。
わたしは、たくさんたくさん。
ステキな経験をしてこれたんだよ。
魔法を使えるようになったり。
上位精霊と話せるようになったり。
恋をして、愛を知って……
子供を産んじゃったりもして。
いろんな人達と、出会って、別れて。
ね、13歳のわたし。
キミがまだ知らない未来は。
キレイなコトばかりじゃない。
辛いコトや悲しいコトだって時々あるけど……
キミがまだ知らない未来はね。
面白くて、楽しい事がいっぱいだよ!
それを、キミが見つけていくの!
だから、信じて!
未来を!
シルスの愉快な時間旅行
~ハーフエルフの女の子が夏休みにタイムリープして若かりし頃の人間のおばあちゃんと旅するお話 ~
完
最後まで読んで頂けた方には、心から感謝いたします。
初めての長編という事もあり、つまずいたり迷ったりもしましたが、なんとか完結出来たのは読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
『シルスの愉快な時間旅行』は、現在、続編を執筆中です。もし、興味を持たれた方は気長にお待ち頂ければ幸いです。
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それでは!