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ヴァイスは、改めて周りを見渡した。
見れば見るほど、湖を囲んだ森しか見えない。
それにお腹がすいてきた気がする。
「アイちゃん…ドラゴンって何食べるのかな?」
『ドラゴンは肉食ですので動物や魔獣を食べます。……あぁ、来ましたね』
アイちゃんがそう言った瞬間なんかゾワッときた。
あぁ、そういえば気配察知スキルあったな。
てか俺よりアイちゃんのが気配察知するのはやくない?アイちゃんもチートか?チートなのか?
気配察知した方向を向いていると、ソレは出てきた瞬間に俺の姿を見て止まった。
あ、実は私一人称俺なんですよ。
じゃなくて。
一言で言えば、黒い鹿。
しかも、
「すでに手負い、だと…」
立派であっただろう角は無残に折れ、後ろ脚を引きずり、所々から血が滲んでいる。
「………なぜこんな所にドラゴンが…」
シャベッタアアアアアアアアア!?!
すっげー流暢に喋ってるよ!!
しかもいい声だよ!
喋ったことに驚いてくると、黒い鹿は恐る恐るこちらに近付いてくる。
「………私を食べないのか?」
はい?
「いや手負いの鹿を襲ってもな」
「…………ドラゴンは絶対的な捕食者だから出逢ったら死を覚悟するのが常識なのだが………」
すっごい訝しげにこちらを伺っている!
確かに美味しそうな匂いはするけど、さすがにまだ、食べようとは思わないな。
「他のドラゴンとはまぁ違うと思っていいよ。それよりも何があったんだ?その傷は結構重傷だと思うが」
『…ヴァイス様。普通のドラゴンは出会い頭に襲うような方たちなのですよ」
え、そんな獰猛なのドラゴンって。
でもほら、俺は元々人間だったからね。
アイちゃんが突然もたらした情報に、俺はどう振る舞うべきなのか思案していた時、黒い鹿はこちらを驚いたように眺めていたのを、ヴァイスは知らない。