表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/40

灰色のキャンパス

 少年の視界に広がる風景。

 灰色な街並み、人並み。そして、無音。

 少年に聞こえるのは、自分の息遣いや心臓音だけ。


「どうなっておる。さっきまでの街とは違うようだが」


 辺りを見渡して歩き出す。一際目立つ建物へと近付いていく。建物の敷地に入っていった少年の視界に飛び込んで来たのは、精巧に作られた人形のように微動だにしない人間だった。


「すまぬ! 話を訊きたい!」


 少年の呼び掛けに答える様子はない

 そーっと触れてみる少年。それでも眉ひとつ動かない。諦めずに声を掛けてみるが応答はなかった。


「このままでは先程のように……」


「だ、誰」


「誰、じゃと。お主こそ何者でじゃ?」


「じゃ!?」


 睨み合う二人。

 少年の持つ刀に恐れて動けない青年。

 一方、少年は脇を締めて隙を見せないでいる。


「何をしているの?」


「来ちゃ駄目だよ!」


「誰なんですか!」


「そちらこそ誰じゃ?」


「わたしは星季しょうい大学のくれない 破耶はや。二年です」


「破耶殿でござるか。で、お主は?」


「お、同じく二年、飯沼 夏郷かざと。君は?」


「すまぬ。拙者、記憶が無いでござるよ。どこで生まれて育ったのはおろか、自分の名前すら思い出せずにいるでござる」


「「記憶が無い!?」」


 少年の発言に驚く二人。

 二人の様子に刀を緩めると、この街のことについて訊き出した。先程までいた街と状況が似ていると感じた。


「何の前触れもなかったでござるか?」


「何にもなかったわ。一瞬で灰色に変わったの。人も止まり……時間も止まり。どうすることも出来なくて」


「僕達だけみたいなんだ、動けるの。そこに現れたのが、君なんだ」


「そうでござったか。しかしこのままでは……」


「どうしたの?」


「破耶殿、夏郷殿。落ち着いて聞いてほしいのじゃが」


 先程の出来事を二人に話す少年。

 少年の話を聞いた二人の顔は強張る。


「壊れる!?」


「黒い穴……亀裂って!?」


「拙者が居た街がどうなったかは分からぬ。この街と雰囲気が違うみたいじゃし」


「その声は〝世界〟と言っていたのよね? それってつまり、異世界かしら」


「異世界、か。彼等を思い浮かべるよ」


「夏郷殿、彼等とは?」


「別の世界の僕と破耶だよ。僕等と彼等の意識が入れ替わった出来事があったんだ」


「そうでござったか」


 そうこう話をしていると、上空に黒い穴が出現した。先程の街と同様に。


「破壊する! 全ての世界を!」


「またお主か! どうして世界を破壊しようとするのじゃ!」


「小賢しい! 邪魔をするのなら!」


 穴からの声に反応するように、謎の物体が三人の前に現れた。全身を黒い影で覆っている為、物体の判別は困難であった。


「二人共。武術や剣の心得は?」


「僕も破耶もないよ。ごめん」


「仕方ないでござるよ。ここは、拙者がなんとかするでござる!」


 腰に提げた刀に手を掛ける少年。鋭く物体を捉え、地面を滑るかの如く俊足をみせる。指揮棒を振るかの如く走らせた刀は、物体に対し紙を切るように舞った。


「どうやら、拙者は刀を心得ているみたいでござる」


 刀を鞘に納めると同時に、物体は息を絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ