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無法丸に食ってかかった。
「あんた、正気!? 何の得にもならないのに、さっき出会ったばっかりのこいつらのためにいっしょに旅をしてやるってのかい!?」
「ああ」
無法丸が、にやりと笑った。
「俺はそうすると決めた」
鍛冶場の隣に建てられた寝泊まりするための小屋。
ろうそくの灯りに照らされた室内で側に寝そべる、先ほどまで激しくお互いを求め愛し合っていた裸の女の背中を無法丸は見つめた。
美しい曲線を描く、柳のようにしなやかな腰に手を伸ばし、自分の方へ抱き寄せる。
女の胸元まである黒髪が揺れた。
女がこちらを向き、微笑む。
若く美しい女だ。
「日向」
無法丸が女の名を呼んだ。
日向が無法丸に抱きつく。
右頬を無法丸の胸につける。
「あなたの心臓の音」
日向が言った。
「聴いてると安心する」
無法丸は無言で、日向の頭を優しく撫でた。
「いつも自分の心に穴が空いてる気がするの。何をしても埋められない穴が」
日向が続けた。
「私たちが天涯孤独だったからかな?」
日向が問うた。
「かもな」
無法丸が言った。
「あなたが好きよ」と日向。
「俺も、お前が好きだ」
無法丸が答える。
「ありがとう」
日向が無法丸に、いっそう身を寄せた。
「あなたと居ると心の穴の痛みが薄らぐ。でも」




