第1章 1 魔法学校ヘルグレイズ
「ねー」
「………」
構うな、集中。
「ねーねー」
「……………」
……構うな、集中集中。
「ねーねーねーねー」
「……………………………」
………構うな、しゅ
「ねーねーねーねーねーねーねーねー!!」
「だぁーもううるさいなぁ!静かにしててくれ!今新しい術式組んでるんだよ見たらわかるだろ⁉︎頼むから静かにして!」
「ケチ」
「ケチじゃねぇ…って冷た冷た冷たっ!氷塊飛ばすな魔法使うとか卑怯!」
時は神聖歴317年。
大ブリテン最大の魔法学校、「ヘルグレイズ魔法学校」から、この物語は始まる–––。
「全く…。誰のために残ってやってると思ってんだ、リリアのためだぞ?お前がこないだの魔法筆記試験で赤点取ったから助けて追試だとか泣きついてくるから残って勉強教えてやるっつってんのに…」
そうぶつくさ説教じみた文句を言っている金髪の少年は、アーサー=ヘルベルト=ペンドラゴン–––かの伝説のアーサー王の末裔。
「もーアーサー、話し掛けてるのに無視とかよくないですよー。むー」
「なんだガン無視かヒドイ」
そして先ほどからアーサーにしつこく話し掛けているのはアーサーの幼馴染、グィネヴィア=アルウェイン=リリア–––こちらは一応初代アーサーの妃、グィネヴィア妃の末裔。一応というのは、途中で初代アーサーの重臣にグィネヴィアを奪われたからなのだが今は関係ないからスルー。
「それにしても不思議な話だよな、魔法の仕組み一切理解してないのに直感で魔法使えるなんてさ。しかもかなり高位のヤツ」
「仕組みなんて解ってなくたってつかえりゃいーじゃんもー」
さて神聖歴317年の大ブリテン。
全世界でも屈指の先進国のこの国を支えているのはそう、先程からちょこちょこ出てきている「魔法」である。
工場の機械を動かす動力は魔法。
人々を乗せて運ぶ車の動力も車。
魔法は人々の生活にも浸透している。
火を起こすのも魔法の力。
モノを冷やすのも魔法の力。
傷を癒すのにも、魔法の力を借りて行っている。
その「魔法」が発達したのは316年前―――神聖歴1年、アーサー・ペンドラゴンがこの世から去った―――ように思われた年からだ。
アーサー王が死んだと人々に思われたのはある一つの決戦が原因だった。謀反者モードレッドとの決戦―――後にカムランの戦いと呼ばれるようになった決戦―――の終結の仕方のせいだった。
アーサーは、兜ごと脳天をかち割られ。
モードレッドは、身体を槍で貫かれ。
普通の人間なら、死んでて当然の終わり方。
普通の人間なら。
当然の事ながら彼らは普通の人間ではない。
聖剣を持つアーサーと、それと対等に戦うモードレッド。簡単に死ぬわけが無いのだ。
死ななかったとはいえ両者とも重傷を負ったため、己の傷を癒すためアヴァロンへと向かったのだ。不幸中の幸いというかアヴァロンは相当な広さがあったので、アーサーとモードレッドが鉢合わせすることはなかったが。
まあなんだ、とにかく初代アーサーとモードレッドは生き残っていたのだ。
生き残った彼らは互いに一切接点を持たずに、子孫を残していった。
さて少し時間を戻そう。アーサーが死にかけた直後。
アーサー本人も少しは死を覚悟したらしく、臣下に自分の持つ聖剣エクスカリバーを湖に投げ入れるように指示したそうだ。当然、『こ、こんな素晴らしい物を捨ててしまっていいのか…!?』という葛藤もあったらしいが素直に臣下はエクスカリバーを湖に投げ入れた。
ようやくここからが大ブリテンが魔法大国になった理由である。
結論から言って、ただの偶然。
どういうことかというと。
臣下―――むっきむきに鍛えられた臣下はエクスカリバーを捨てる際、槍を投げるように縦回転を一切かけずに空高く投げてしまった、その結果当然剣は刃を下にして湖に向かって急降下。しかもかなり深いところにぽちゃん。しかし重い重いエクスカリバーは降下のエネルギーをほぼ減少させずそのまま水の中を切っていき、湖の底にぐっさりとささった。魔力に満ちた、いや、尽きぬ魔力を持ったエクスカリバーは放出されなくなった魔力を刺さったところから大地に流れ込むようになり。
そして今。
湖の底に今もなお突き刺さっているエクスカリバーが、この大ブリテンの魔力を供給しているのである―――。




