第百六話「もう一人の生き残り」
ガロウは神殿の一室で横になっていた。
前回会ったときより確かに老いていた。顔の皺が深く、動きが遅い。それでも目だけは鋭かった。蒼が入ってくると、頭を起こして言った。
「また来たか」
「白いローブの老人の目撃情報があって、確認しに来ました」
「俺ではない」とガロウはすぐに言った。「この一か月、ここから出ていない。体が動きにくくなってきた」
「心当たりがあると言っていましたが」
ガロウが少し考えてから言った。「百年以上前の話だ。星読み神殿に、俺以外にも炉の力を少量吸収しようとした者がいた。量は少なかったが、それでも二十年ほど寿命を延ばしていた可能性がある」
「名前は」
「シルヴァン・カード。当時の神殿の研究員で、俺の研究を途中まで手伝っていた人物だ。途中で考え方が違うと言って離れた。今でも生きているとすれば、百歳を超えているが」
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ロスタンにシルヴァンについて確認した。
ロスタンは少し驚いた顔をして、それから資料を探し始めた。古い神殿の記録の中に、シルヴァン・カードという研究員の記録が見つかった。百年以上前に神殿を去った後の記録は残っていなかった。
「死亡記録がないんですか」
「そうです。ただし当時は記録が不完全なことも多かったので、確認が難しい」
「今どこにいるかは」
「わかりません。ただ」とロスタンが少し考えた。「シルヴァンが王都の東側にいるとすれば、目的がある。ただ観光ではないはずです」
「炉に関係した目的ですか」
「可能性は高いです」
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その夜、チームで話し合った。
シルヴァン・カードという百歳を超えた可能性のある人物が王都の近くにいる。ガロウの元協力者で、炉の研究を知っている人物だ。敵か味方かは不明だった。
「会いに行くべきですか」とリーナが聞いた。
「向こうが目撃されているということは、隠れようとしていない」と蒼は言った。「隠れる気がないなら、こちらから会いに行く必要はなくて、向こうが来るのを待てばいい」
「受け身でいいんですか」
「向こうが何者かわからない状態で積極的に動くより、向こうの出方を見てから判断する方が情報が多い状態で動けます」
クルトが言った。「ただし危険な可能性もあります。念のため、東側の情報収集は強化した方がいいと思います」
「アリアさんに頼みましょう」




