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Pandora(改稿版)  作者: あすか@お休み中
第3章:鋼鬼狩りの俺は最強剣士……かな
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気功砲

 山に続く細い道路を抜けて、あの時と同じ少し開けた場所に出て来た。フェンスの向こうに見える家に向かって声を張り上げたのは土居だった。


「すみません」


 警戒感をもたせないには、女性と言う事だろうか?

 でも、警戒からか家から顔をのぞかせたのは河原 真だった。


「河原君だよね?」


 土居が手元の河原 真のイメージデータと見比べて言った。


「この前の人たちですか?

 鋼鬼退治には行かないって、言いましたですよね?」

「ちょっと状況が変わってね。

 桐谷さん、知ってるでしょ?

 早川結希さんに桐谷さんの所まで、来てもらいたいんだけど」

「行かない」


 迷いも見せず、河原は即拒否った。


「早川さぁぁぁん」


 河原と話しても無駄と読んだのか、土居が早川に大声で呼びかけると、家からあの時の少女 早川結希が姿を現した。


「桐谷さんが来てほしいって!」

「真、どうする?」


 あの時と同じで、河原は非協力的だが、早川の方はそうでもない。と言う事は、見込みがないと言うことではない。そう俺が思った時だった。

 かすかな爆音のような音が近づいてくる事に気づき、みんな空を見上げた。


「ヘリでも連れて来たのか?」


 河原は俺たちの仲間のヘリと思っているらしいが、俺たちに心当たりはなく、黙って空を見上げていると、UNと記した3機のヘリが近くまでやって来て、ホバーリング状態で停止した。

 大きな爆音と風圧に、半分目を閉じながら、その様子を見つめていた福原が言った。


「誰かが裏切ったのか?」


 よく見ると、ヘリのサイドには機関銃のようなものがついている。俺のレーザーソードでは、あれに対抗する術はない。唯一対抗できると考えられる沢井に目を向けると、そこに沢井の姿は無かった。

 一人逃げたと言う事はないはずで、また武本とペアを組んで何かをやるのだろうと思っていると、近づいてくる多くの人の気配を感じ、ここに通じる道に目を向けた。

 そこから現れたのは夥しい迷彩服を着て、手に銃器を持った兵士たちだった。


「ハヤカワユキトイウノハドレダ?」


 少し発音とかイントネーションに違和感がある日本語で、その先頭の指揮官らしい男が言った。


「やはり、狙いは彼女か。

 元々鋼鬼の技術を流した奴がいるとは思っていたが、あの中にいたのか?」


 福原がつぶやくように言った。多勢に無勢だが、沢井がいるためか、福原の顔にそれほどの焦った様子はない。


「ダサナイト、ミナシヌゾ」


 男の脅しに、武本がぐいっと俺たちの前に出た。


「死ぬのはお前たちだ」


 そう言って、突き出した人差し指を、兵士たちに向けると、敵の指揮官らしい男はあざ笑うような笑みを浮かべ、手を振り下ろした。

 銃撃が始まる。そう感じた瞬間には、耳にヘリの爆音に交じって銃撃音が届けられ、硝煙が視界を覆い始めた。

 兵たちが放った銃弾が、武本に到達することなく、全てが地面を穿っていく。

 銃撃が効果ない事に気づいた兵たちが銃撃を停止した。


「お前たちの攻撃なんか、俺には通用しない」


 武本が言った言葉が、兵たちに通じているのかどうか定かではないが、銃弾全てを手も触れずに地面に叩き落とした男の力に驚きの表情を浮かべていた。


「はっ!」


 武本がそう言って、手を突き出すと、その方向にいた兵士たちが後方に吹き飛んで行った。

 地面に叩きつけられるように吹き飛んだ男たちは、口から血を流していて、病院に連れて行かなければ死を迎える事確実と言った感じだ。


「はっ!」


 武本が再び別の方向に手を突き出すと、やはりそこにいた兵たちが吹き飛んで行った。


「ナ、ナ、ナンダ?」

「お前たちの国から伝わった気功を源にした気功砲だ!」


 武本が威張り気味に言った時、上空の爆音に変化があった。見上げると、少し俺たちから距離をとり、機体と砲口を下げ始めていた。


「はっ!」


 調子に乗った武本が、上空のヘリに手を突き出した。ヘリを攻撃する判断は正しいが、上空のヘリを沢井は倒せるのか? と、疑問を抱いた時には、ヘリの機体に大きな穴が開いて体勢を崩していた。

 何か適当なものを投げつけたのかも知れない。


「一気に片付けろ!」


 福原の言葉に、武本が突き出した手を横に動かして、何かを薙ぎ払うような仕草をしたかと思うと、地上にいた兵たちは全てが、薙ぎ払われて吹き飛んで行った。

 武本は再び上空のヘリに向かって、手を突き出し、残る二機の内のもう一機を破壊した。

 武本の攻撃を装った沢井の攻撃を受けた二機のヘリは墜落こそしなかったが、損傷が大きいからか離脱を始め、もう一機もそれに続いて姿を消して行った。



「今のは何?」


 戦いが終わって最初に俺が聞いた言葉は、河原のそれだった。


「言っただろ。

 気功を使った術だ」


 威張り気味に武本が言った。ネタを知っている俺としては、ちょっと吹きだしそうになるのをぐっとこらえて、頷いて見せた。


「その子が超人なだけだろ?

 俺が聞きたいのは、何の芝居だって事だ」


 河原は沢井と武本のトリックを見破っていたらしい。


「なんで、分かったの?」


 沢井もびっくりらしいが、俺もびっくりだ。


「見てたら、分かるだろ」

「いや、沢井の動きは見えないだろ?」


 河原の言葉に武本は即返したが、俺の頭の中には仮説が浮かんでいた。鋼鬼たちを抹殺しているのは、単に兵器だけではなく、河原の運動能力もその力の一つ。


「お前、もしかして、超人?」


 俺の言葉に、沢井も武本も、そして福原たちも驚いた顔をして、河原の答えを待った。


「お前よばわりかよ。

 言っておくが、俺は超人ではないが、普通の人間でもない」

「どう言う意味なんだ?」


 福原が聞いて来た。


「超人の一部の能力を有していると言う事。

 桐谷さんからは聞いていないのか?」


 桐谷は知っていたらしいが、俺たちには教えてくれていなかった。これって、重要な事だろと言いたいが、ここで言っても仕方ない。


「なら、なおさらだ。

 来てもらえないか」

「嫌だ」

「でも真。

 あんな兵士たちがやって来るんじゃあ、ここにいれなくない?」

「だとしても、他に行けばいいだけだろ?」

「桐谷さんが探しているんなら、協力しよっ!

 ねっ!」

「ありがとう。

 早川さん」


 河原に返事をさせないためか、福原はそう言いながら、早川の所に近寄り、その手を取って、拝むような仕草をしてみせた。

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