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Pandora(改稿版)  作者: あすか@お休み中
第3章:鋼鬼狩りの俺は最強剣士……かな
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見限り

 頭上に現れた軍用ヘリに、福岡たちだけでなく、ここの住民たちも目を向けて、戸惑っている。きっと、あのヘリが俺たちの側なのか、さっき現れた異国の兵たちのものなのか分からずにいるに違いない。


「あのヘリはどうするんだ?」

「あれはお前たちとは違い、この国を救おうとしてくれているんだ。

 だと言うのに、東京の政府は国連軍を受け入れようとはしない。なんて、ばかななんだ」


 俺の言葉に答えたからの言葉尻は、近づいてきていたヘリの爆音で聞きづらくなっていた。


「WZ-10か」


 福原が言った時、ヘリから機関砲による掃射が始まった。

 福原の部隊だけを狙ったと言うより、ほぼ無差別。飛び散る肉片と血しぶき。逃げ惑う群衆に対し、反撃のため、福原の兵たちが銃を構える姿が俺の視界に映った。が、その引鉄を引くチャンスは無かった。

 何かがぶつかるような音と共に、ヘリは機体に大きな穴を開け、落下を始めた。

 何が起きたのか、分からず見つめている内に、その機体はコロニーの壁に激突し、不運にも壁の一部を崩してしまった。


「福原さん、ごめんなさい。

 ちょっと方向がまずかったのかも」


 今は少なくなっているとしても、いずれ鋼鬼たちがやって来て、崩れた壁からこのコロニーに侵入してくるに違いないと、困惑してた俺の耳に、ここにはいないと思っていた沢井の声が聞こえた。


「あれ?

 なんで、ここにいるの?」


 崩落した壁よりも、俺の興味は沢井に向かっていた。


「作戦だよ」


 沢井の返事を待つ俺の耳に届いたのは低い男の声 武本の声だった。


「はあ?

 て言うか、お前もどうして、ここにいるんだよ?」

「それはだなぁ」


 そう言って、答えをと言うか、お喋りを期待したい沢井ではなく、武本がこれまでの事を語りだした。

 それによると、武本は俺がコロニーを出た時に、福原の軍に付いてきていた。そして、今回の作戦に志願して参加したらしい。

 それは使命感とかそう言うものではなく、口調と表情から感じたところでは、沢井とお近づきになりたいと言ったところじゃないだろうか。

 で、その今回の作戦だが、このコロニーに潜む他国の兵たちを一般の人々の前にさらけ出す事を目的としたもので、沢井に庇護の下、コロニー内に潜入し、他国の兵たちの前に姿を現し、俺たちの前まで引きずり出すと言うものだったらしい。

 これは強すぎる相手だと感じさせてしまうと、追撃をしてこないため、武本一人がその身をさらす。たった一人の若造となめ切った兵たちに追撃をさせると言うものだったらしい。


「だが、銃撃されてただろ?」

「それは姿を現さない沢井さんが、銃弾を握り潰して、俺を守ってくれてたんじゃんか」

「うーん。そう言うことか」


 俺的にはなかなかな作戦に、思わずうなり声を上げてしまった。


「で、沢井さんは何を謝っていたの?」


 近くにいるものと思っていた俺が、沢井にさっきの事をたずねようとした時、周囲に沢井の姿は無かった。


「敵のヘリに向かって、物を投げて撃墜したんだけど、方向が悪くて、壁側に墜落させていまったって事だろ」

「お前に聞いてねぇよっ!」


 ちょっとムカッとした口調で、武本に返しながら、沢井の姿を探した。

 沢井は福原の兵たちと共に、崩落した壁付近に立って、侵入してくるかも知れない鋼鬼の警戒に当たっていた。


「お前たちのせいで、こうなったんだ。

 出て行け!」


 福原たちの背後で、相変わらずからが怒鳴り気味に叫んだ。


「て言うか、なんでよその国の軍のヘリとか兵がいるんだよ!」

「お前たちのような者がやって来た時のためだ」

「ここ日本なんだから、それ変だろ。

 それに今、あの人たちが出て行って、鋼鬼がやって来たら、どうするんだよ」

「お前たちの力は借りない!」


 からはそう言うと、辺りを取り巻くここの住民たちを見渡した。


「だろ?

 さあ、こいつらに出て行けと、声を合わそうじゃないか!

 出て行け!

 出て行け!」


 ちょっと離れた場所で、俺たちを取り巻く住民たちが戸惑い気味の表情で、お互いを見渡していて、すぐにからの扇動に乗って来ないのは、ここに他国の兵たちが潜んでいた事を知ったからに違いない。


からさん、あの異国の兵たちを引き入れていたのは本当なのか?」


 からの一生懸命のパフォーマンスを遮る男の声が聞こえたかと思うと、同じような声が続いた。


からさん、俺たちを異国に売る気だったのか?」

「あんたを信じていた俺が馬鹿だった」

「俺は軍隊は嫌いだが、他国の軍隊はもっと嫌いだ」

「何を言っているんだ。

 今、こいつらを追い出さないと、このコロニーに軍隊が駐留してしまうかも知れないんだぞ!」

「いや、現にいただろ。

 隣国の兵たちが」


 からの意味不明の言い逃れに、ついつい突っ込みを入れてしまった。俺が関西人だったなら、きっと右の手のひらで、ピシッとからの胸を叩いていたに違いない。


「で、どうするね?

 我々はここに居座るつもりはないので、このまま立ち去ってもいいのだが、穴が塞がるまでは警備に付こうか?」


 福原がここの人たちを見渡しながら言うと、からを見限ったのか、彼らはみんな頷いていた。


「なら、我々はここの壁を修復するまで、鋼鬼たちから、このコロニーを守りましょう」


 一応、急いでいるはずだが、目の前の人々の危機を救わないと言う訳にはいかないのだろう。福原がそう宣言した事で、俺たちはここに少しの間、残る事になった。

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