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Pandora(改稿版)  作者: あすか@お休み中
第2章:反逆の少女たち
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不可解な行動

 超人がいなくなったとは言え、教室の中は普段の休み時間のような騒がしさはなく、緊張した面持ちでひそひそと自分たちのこれからを心配し合う会話だけが交わされていた。


「どうなるのかな?」

「白木さんたちがいるんだから、大丈夫だよ」


 超人は一瞬に姿を現す事もできるが、余裕を示したいのか、恐怖を募らせるにはこの方が効果的と考えたのかは分からないが、教室を出た超人はゆっくりと廊下を歩いて戻って来た。

 まるで先生かのように、教壇の真ん中に立つと、聡史たちを見渡しながら言った。


「お前たち全員、体育館に集合だ」


 梶原の提案が採用となったようだ。

 その言葉に戸惑いの表情を見せる生徒たちに、超人が一喝した。


「早くしろ」


 脅し気味の超人の言葉に生徒たちはびくっとした表情で、慌てて立ち上がると、廊下を目指しはじめた。

 廊下には他の教室からも、ぞくぞくと体育館を目指す生徒たちが出て来て、溢れかえり始めていた。

 普段ならこれだけの生徒がいれば、かなり騒がしいはずだが、私語は聞こえず、衣擦れと足音だけの不自然な空間。

 そこに聡史も足を踏み入れ、人の流れに乗った。

 廊下を満たす生徒たちの表情は硬く、恐怖と言う緊張にまとわりつかれている。

 階段を下りて、玄関を抜けた先、校庭を横切ったところに体育館がある。


 何人かの迷彩服に身を包んだ超人たちが、体育館に向かう生徒たちの流れを取り囲んでいる。生徒たちの数に比べ、超人たちの数は圧倒的に少なく、疎らな囲い。

 でも、そこを抜けて流れから逃れようとする者は一人もいない。


 お互いの力関係は数じゃない。そんな事しても無駄どころか、下手をしたら、命の危険がある。そう誰もが知っていて、虚しく運命に従っている。

 向かう先が安全と限らなくても、力無き者は目の前の力に抗えない。


 聡史が体育館にたどり着いた時、すでに体育館の中には多くの生徒たちが集まっていて、クラスごとに整列しているらしく、何本もの生徒たちの列ができていた。

 聡史の周りにいるほとんどの生徒は一緒に教室を出てきたクラスメートたちであって、そのクラスメートたちの流れに乗って、聡史もクラスの列に並び始めた。


 体育館の内側の壁、入り口のあたりにはやはり超人たちが立っていて、生徒たちを監視している。

 生徒たちで溢れかえる中、聡史は辺りを見渡して、ある二人の姿を探した。

 まずは一人。岡田妹は自分の位置から5,6人ほど前で立っている。

 首からぶら下げた左腕を包む包帯が後姿からだけでも、見て取れる。

 後姿のため、表情は読み取れないが、特に変わった様子は見られない。

 もう一人は岡田兄。

 探したいところだが、周りの生徒たちの壁に阻まれて、全く視界にとらえる事はできそうにない。

 爪先立ちになって、少しでも遠くに目を向けてみても、やはり岡田兄の姿を見つける事は容易ではない。

 少し落胆気味に肩を落としながら、正面に目を向けた。


「これから、どうなるんだろうな、俺たち」


 聡史に小声で話しかけてきたのは柳だった。

 岡田兄妹の事に気をとられすぎていて、目の前に柳がいる事にすら、気付いていなかった。


「柳!」


 一瞬、間をおいてから、聡史が続けた。


「ああ、そうだな。どうなるんだろうな、俺たち」


 聡史の言葉が終わると同時に体育館のドアが閉じられた。


 閉ざされた空間。

 一気に生徒たちにプレッシャーを与え、緊張感がMAXとなった。

 振り返って聡史を見たままで、青ざめている柳に聡史が言った。


「誰か、超人たちをやっつけてくれたらいいんだが」


 聞こえてもいい。

 別に聡史はそんなつもりはなかったが、超人たちの何人かは生徒たちの会話に耳をそばだてていたらしい。

 大きな怒鳴り声が響いた。


「誰だ! 今俺たちがやっつけられたらいいと言った奴は」


 こそこそと策を練っても無駄だ。

 俺たちはお前たちの事は全て分かっているんだ。

 超人たちのこの恫喝は単にその程度の意味のはずで、無視しておけばよかったはずだが、それに反応する者がいた。


「すみません。うちの生徒たちを許してやってください」


 その声の主である梶原にみんなの視線が向かった。

 聡史の位置からは、人の壁の隙間から、ほんの少しだけ梶原の姿が見えた。


 何が起きようとしているのか?

 そんな気分で状況を見定めようと顔を動かして、人の壁の隙間を狙う生徒たちの頭の動きで塞がれ、聡史の位置から梶原は見えなくなったが、梶原の声は聞こえていた。

 少しビブラート気味で高い声音から言って、梶原は怯え気味に感じられた。


「ですが、ここで戦うのだけは許してください」


 梶原の前に一人の超人が歩み出た。


「戦う? 俺たちと誰が戦えるんだ?」


 その言葉の最初には嘲笑が含まれていたが、後半の口調には本当の意味での疑いが含まれていた。もしかすると、ここに残った政府側の超人がいるのか? と言う。


「作戦に向かわずここには残った治安維持特殊部隊のメンバーがいます」


 梶原の言葉が超人たちを動かした。

 一瞬の内に、体育館の壁を背にして一塊になって防御をかためる超人たち。

 そこから離れているのは梶原に相対している一人の超人のみ。


「白木さん、出てきてください」

「先生。どうして、今、ここで、私を名指しするって訳?」


 梶原の不可解な行動に、白木が不満そうな顔で、生徒たちの山から抜け出て来た。

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