第13話
「ユキノ・・・。顔」
キアンに言われてハッとした。
「うふふ。何か?」
あぁ、うっかり。あまりにも気持ち悪くて顔に出ちゃった。
あぁ・・・汚い。汚い・・・。
「ユキノ。あいつは女には見境ないから気をつけるんだぞ!それだけじゃ済まなくなるからな」
『それ』と言いながら指をさしたのは今、拭いていた手だった。
「あー。まぁ、そんな感じしてたよね。うん。うざかった・・・・」
「うざかった?それは何語だ?」
またか・・・。造語の多いニッポン国じゃなかなか説明しにくいんだよねぇ。
「んー。ウザイはウザイだよ。鬱陶しいとかそんな感じかな?」
「ほう。鬱陶しい奴の事を『ウザイ』と言うのか。なかなか面白いな」
けらけらと笑うキアンにまさに今あんたがその状態だとはいえず、溜息をついてしまった。
「ほら!キアン。さっさと次の仕事に取り掛かって!まだまだ、やらなきゃいけない事はたくさんあるんだからね!」
まったく、仕事は出来るくせに全然真面目にやらないんだから。
「・・・魔法が仕事してくれればもっと楽なのにねぇ」
おっと、うっかり本音が漏れてしまった。
そんな目で見られても、いちいち仕事しろって尻を叩く身にもなってよ。
めんどくさい事この上ないのに。
「・・・魔法はそんなものの為に使うものじゃない。大体、魔法が仕えるのは王族だけだ。簡単に使っていたら下の者に示しがつかないだろう?」
・・・って、魔法って王族しか使えなかったのか。
ん!?ってことは、やっぱりキアンに何が何でも元の世界に戻る方法を見つけてもらわなきゃいけないってこと!?
「キアン!ほら早く仕事して!!じゃないと元の世界に戻る為の研究時間がなくなるじゃない!!」
はやく、その目の前の書類を全て終わらせろ!
「・・・まだ、諦めてなかったのか?ないといったらないものを・・・」
ぶつぶつ言いながら、キアンは目の前の書類を一つずつ処理していった。
「諦められるわけないでしょう?向こうには家族も友達も(ついでに)仕事だってあったのよ?それがいきなりこんなところに来ていい迷惑なんだから!」
「大丈夫だ!家族には俺がなろう!友達も存分に作ればよい。俺の専属という仕事もあるじゃないか!」
何を馬鹿な事を。
そういう意味じゃないってのに・・・。
はぁ・・・。話しても無駄だ。とにかく今目の前の仕事をさせよう。
「・・・いいです。わかりました。とにかく仕事しろ」
冷たい目で睨んでやるとシューンとまた耳の垂れさがった犬となった。
もう、犬と呼んでやろうか?
まぁでも、しっかり仕事はしているみたいだから今回は勘弁する事にしよう。
お互い黙々と仕事をしていると、あっという間に夕方になっていた。