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ウェイブス・ドールは推しを守護りたい  作者: ちゃつふさ
第一章 運命を変えようとするもの

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Ver.0.0

新連載です。

皆様、よろしくお願いします。

『全ての根源は波動である。ならば、魂源もまた波動である』


 ふと、オレが好きだったオープンワールドARPG『ソォリジン』のキャラ、『ニスラ』の台詞を思い出した。

 『ソォリジン』とは、大きな島を中心に多くの小島が集まった「レグナーン群島」を駆け回り、仲間と一緒に様々な敵「波動人形ウェイブス・ドール」を倒して、滅亡した旧文明の謎を解くストーリー重視のオープンワールドゲームである。ストーリーは未完成で、何度もバージョンアップしている状態である。

 ついでに『ニスラ』とは、賢者と呼ばれた人物であり、残された文献は数少なく、詳細なことは不明であり、分かっているのは波結晶ウェイブス・クリスタルを解明し、その使い道を示した先駆者であり、魂を保存できることを証明すると共に波動人形を作った天才ということだけであった。


(ふぅ、意識は鮮明で、物事がスラスラ考えられるというのに、この状況は何なのだろう)


 話が脱線したが、そもそもなぜオレがニスラの言葉を思い出したのか。

 それはオレが今、意識だけ、もっと言うと魂というやつなのではないのかと思ったからである。

 なぜそのような突飛な発想に至ったかというと、オレはおもむろに前を見た。

 だが、今のオレは目を閉じたようになにも見えない。

 いや、どこに目があるのかすら分かっていなかった。こんな感覚は初めてだった。

 目だけじゃない。耳も鼻も口も、あるのかすら分からない。物理的な感覚が無いのだ。まるで身体が無くなったような気分である。

 だから、今の自分は意識だけ、つまりは魂だけなんじゃないかとふと思ったのだ。


(もしくは夢でも見ているのだろうか? にしても、なにも映像がないのはおかしな話だ。それでも思考ははっきりしている)


 オレの身になにが起こったのだろう。

 揺らぎのないオレの思考は淡々と最後に見ていた光景を思い出す。

 それは病室のベッドの上だった。

 長い間、原因不明の難病と戦い、回復を信じて色々試みていた毎日。

 自分の回復が後の同じような境遇に苦しむ人達の希望になればと思いながら頑張ってきた。

 応援してくれる周りの皆のためにも、少しでも元気な姿を見せたくて、ふと目に入って始めたゲーム。

 そんな軽率に始めたゲームも、いつのまにかオレの生きる糧となっていき、次のバージョンアップを楽しみにしていられるぐらいには、病院生活を送れていたはずだった。

 でも、ある日からそれもままならなくなり……それでも、いつかまたゲームができ、ストーリーの続きを楽しめると信じていた。オレにとってそれが、両親や周りの人達を呆れながらも安心させられる唯一の方法だと信じていた。

 最後の最後まで……。


(あぁ、オレは死んだのか。オレは『ニーア』のようにはなれなかったのか)


 ニーアは『ソォリジン』に出てくるキャラクターでオレが推している子だった。

 なんでも一人で背負い込むタイプで、周りに心配させないように常に笑顔を絶やさない子だ。

 彼女はある研究機関の実験体にされ、実験中も他の実験体の子達に苦しい思いをして欲しくないため自分が率先して実験に参加していた。そして、幸か不幸か実験を成功させたキャラだった。

 ゲームだろうと空想だろうとあの時のオレには苦難を乗り越えた彼女が光り輝いて見えた。

 でも、その結果が後にニーアの人生を更なる過酷なものに変え、最終的にはプレイヤーを守って死んでしまったのだった。

 ショックだった。

 なんてことをするんだ、このクソ運営とまで罵るくらいに。でも、彼女ならそうしただろうと納得する自分もいた。

 だから、IFルートでも良いから彼女が幸せになるような姿を見たかった。

 と、彼女を想っているとなんだか自分という存在がざわついたというか震えるというか、そんな奇妙な感覚に囚われた。


「~~~~~~」


 なにか聞こえたような気がする。

 いや、聞こえるという表現は違うような気がするが、そう考えた方がオレにはしっくりきた。

 そして、その声には聞き覚えがあった。

 そう、『あの子』の声だ。

 そう思いたいというオレの願望から生まれた幻聴かもしれないが、それでも構わない。

 オレはその声に向かって進もうとしたが、真っ暗な海の中をひたすら藻掻いて進むような状態で、自分がどちらに進んでいるのかすら分からなかった。そもそも、ちゃんと進んでいるのかも分からない。

 それでも、オレは諦めず、ひたすらあの子の声に向かって自分の意識を進ませようとした。


『全ての根源は波動である。ならば、魂源もまた波動である』


 再びあの言葉が思い浮かぶ。

 所詮はゲームでの話。


(でも、今はなんでも良い。魂でも波動でもなんでも良いからオレを動かしてくれ! あの『波動(声)』の元へ行かせてくれ!)


 自分がなにを言っているのか分からなくなってきたが、そう表現するのが妥当だと思った。

 そう思った瞬間スゥッとなにかが抜け落ちた感覚に陥っていく。

 俺にあった人間としての肉体の概念が抜け落ちていくようだ。それはもう、人間という自分すら捨てたような気分だった。


(もう、戻れない。それでも構わない。あの「波動」に近づけるのなら、オレの思考が、認識が、魂がどうなっても構わない)


 すると、今まで見えなかったモノが視えてきたような気がする。目で見るという思考が抜け、波動で視るといった感じなのだろうか。

 多くの『波動』が揺れ続ける空間内、それは巨大な波動の一部だった。オレはその大きな波動の流れにある一部から逸れるために自分を震わせ進んでいった。

 進めば進むほど、心のざわつき、波動を絶やすと自分が掻き消えそうになる。だから、存在を主張するようにオレは自分を鼓舞し続けた。


(魂を震わせろ!)


 『ソォリジン』のキャッチコピーだったが、まさにオレは今、魂を震わせているようだった。


(あぁ、これがよくある異世界転生だとしたら、もうちょっと楽な展開で、女神様辺りに色々お世話して貰いたかったなぁ。あっ、こういう異質な展開の場合ってチートとかあるのだろうか?)


 そんな生もない思考を抱きつつ、オレは新たなる『波動』の領域へと到達するのであった。

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