ビール腹の乱交
一週間後。
三鷹の自室の鏡に映る私は、もはや自分でも判別がつかないほどに摩耗していた。根元の黒い部分はさらに広がり、金髪は手入れを失ってパサついた糸のようになっている。肌には消えない痣が星座のように点在し、瞳からは生気という名の光が完全に失われていた。
学校? そんな言葉は、もう別の惑星の言語のように響かない。
今の私を突き動かしているのは、自分をどれだけ深く、修復不可能なまでに汚せるかという、狂信的なまでの破壊衝動だけだった。
私は、先日の「朝まで三万円」で私を買い上げた、あの中年男に連絡を入れた。
彼のような孤独で冴えない男たちにとって、私のような「壊れた少女」は、唯一優位に立てる、そしてすべてを許容してくれる奇跡の装置に見えるらしい。
「……ねえ、もっと集められない? おじさん仲間。……お金は一人一万五千円でいいから」
私の要求に、電話越しの男の声が卑屈に、それでいて興奮に震えるのが分かった。
彼らにとって、それは禁忌を犯すための招待状だった。
歌舞伎町の外れ。一階に古びた中華料理屋が入った、雑居ビルの上階にあるラブホテル。
タバコのヤニで黄ばんだ壁紙、染みのついたカーペット。その狭い一室に、私と、三人の「おじさん」が集まった。
最初に会った男と、彼が連れてきた二人の友人。
一人は小太りで、一人は不潔な無精髭を蓄え、もう一人は脂ぎった顔をテカらせている。全員が、昼間の社会では決して主役になれない、掃き溜めのような男たちだった。
「……本当に、生でいいのかよ」
一人が、信じられないものを見るような目で私を見つめる。
私は無言で、パーカーを脱ぎ捨てた。
三日間の汚辱で刻まれた痣、そして自ら望んで差し出す無防備な肉体。
「……いいよ。みんな、中に出して」
その一言が、理性の堰を壊した。
部屋の中に、獣のような荒い呼吸と、安物の整髪料と体臭が混ざり合った、むせ返るような男の匂いが充満する。
始まったのは、祝祭という名の蹂躙だった。
三人の男たちが、飢えた獣のように私に群がる。
一人が私の唇を貪り、吐き気がするほど臭い酒の匂いを流し込んでくる。
一人が私の胸に顔を埋め、脂ぎった肌を擦りつける。
もう一人が、私の足を乱暴に割り、湿った舌で私のまんこを暴き立てた。
「……っ、あ、……っ!」
初めての経験だった。
口、アナル、そしてまんこ。
三つの場所を、同時に、異物で満たされる。
臭い、気持ち悪い。
不潔な指先が私の粘膜を抉り、硬い「肉棒」が私の内側をグチャグチャに掻き回す。
耳元で響く、中年男たちの卑猥な罵り言葉と、情けない喘ぎ声。
けれど、その圧倒的な「羞恥」が、私の脳を麻痺させ、これまで経験したことのない異常な興奮を呼び覚ましていた。
清潔な教室、正しい教師、冷え切った家。
そのすべてを、この三人の男たちが私の中に注ぎ込む「汚れ」が、力ずくで塗りつぶしていく。
「……あ、あ、……いい、もっと……!」
私は初めて、自ら腰を振った。
自分を犯している男の、だらしなく突き出たビール腹に、私の平坦な腹を強く擦りつける。
その不快な感触、ペチペチと響く肉と肉がぶつかる下品な音。
そのすべてが、私をこの世界の底へと繋ぎ止める鎖のように感じられた。
シーツは、私から溢れ出した体液と、男たちの汗でビショビショに濡れ、どす黒い染みを作っていく。
私はもはや、自分が人間であることを捨てていた。
ただの、彼らの欲望を受け止めるための「器」。
それでいて、彼らの人生のすべてを破壊して飲み込むような「穴」。
やがて、狂騒は絶頂へと向かう。
「っ……! 出す、出すぞっ!」
三人の男たちが、次々に私の中で果てた。
熱い、熱い濁流。
異なる三人の精液が、私の膣内で、アナルで、そして口内で混ざり合う。
内側から溢れ出したそれは、白く、時に黄色く濁り、私の太腿を伝ってシーツへと滴り落ちた。
男たちが力なく私から離れ、部屋には沈黙と、濃密な精液の匂いだけが残った。
「……くっさ。マジ、臭い……」
私は、自分の足の間に溜まったドロドロの液体を見つめながら、恍惚とした表情で呟いた。
それは、私の壊れた人生そのものの匂いだった。
私は、自分の中に残っているそれを指で掬い、ゆっくりと舐めとった。
喉を通る生臭い味。
その行為に、男たちが引きつったような顔をする。
彼らでさえ、私のこの底なしの「壊れ方」に引いていたのだ。
でも、それが心地よかった。
私は、汚辱にまみれた身体のまま、また濡れていた。
この地獄のような快感から、もう抜け出せるはずがなかった。
おじさんたちが去った後の部屋で、私はシャワーも浴びずに、丸められた札束を眺めていた。
身体の中には、まだ彼らの名残が熱を持って留まっている。
私は、シーツの汚れを指でなぞりながら、ふと思った。
吉祥寺のおじさんは、今の私を見たら、どんな顔をするだろうか。
「よく生きて帰ってきたな」と、また言ってくれるだろうか。
それとも、あまりの汚れに、今度こそ視線を逸らすだろうか。
窓の外、歌舞伎町の空がうっすらと白み始めている。
私は、重い身体を引きずるようにして立ち上がった。
三鷹へ帰る電車の中、私は隣に座った「まともな」通勤客たちに、心の中で嘲笑を投げかけた。
あんたたちが一生かかっても辿り着けない場所へ、私はもう、行ってしまったんだよ。
精液の匂いを纏ったまま、私は、朝の光に満ちた駅のホームに降り立った。
私の物語は、もはや光の中にはない。
ただ、このドロドロとした汚泥の底にだけ、私の真実がある。




