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いのちのパン屋さん〜復活の三日目〜  作者: 地野千塩


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悔い改めとゆで卵パン(3)

 学校の近くにある道を歩いているだけなのに、里帆は汗を垂らし、キョロキョロと視線を動かしていた。


 放課後、福音ベーカリーに行こうとしているだけなのに、なぜか道に迷ってしまっていた。ショップカードを片手に歩いてみたが、何故か目的地に辿り着けない。何か磁場みたいなものに阻まれている感覚も覚えてしまった。歩いているだけで、里帆の額にはじっとりと汗が滲み始めていた。


 仕方がないので、住宅街のある空き地で少し休憩した。木陰でペットボトルの水を飲んでいるちと、少しは気がおさまってきたので、再び空き地を出た時だった。


 イケメンがいる!


 しかも、異次元レベルのイケメンだった。色素が薄い王子様タイプで、里帆の好みとドンピシャだった。ふわふわの栗毛や、色素が薄い目の肌も王子様っぽい。白シャツにジーパンというシンプルな格好でも、かなり様になっている。逆に野暮ったいボーダーシャツや短パンとかでも着こなしてしまいそうだ。


 こんな平凡で静かな住宅街では、かなり浮いたイケメンだったが、柴犬を散歩させていた。芝犬は、焼きたての食パンみたいな色味で、何だか美味しそうだと不謹慎な事も思ってしまうが、イケメンに心乱されている自分も、罪悪感がかなり上昇していくのを覚えていた。


「あれ、どうしたの? 道に迷った?」


 しかも、イケメンに話しかけられてしまい、里帆はさらに汗を流していた。向こうは大人しそうな女子高生に見えるかもしれないが、「イケメンだと興奮してました! ごめんなさい!」と心の中で、ひたすら謝っている。


 イケメンはそんな里帆の心の内など気づいていないようで、ニコニコと笑っていた。


「えっと、実はこのパン屋に行きたいんですけど、道に迷ったんです」


 里帆はできるだけ冷静になりながら、ショップカードをイケメンに見せてみた。逃げても良い状況だったが、イケメンをよく見ると、案外色気は無かった。イケメンの琥珀色の瞳は透明感がって綺麗だが、なぜか少女漫画のヒーローのように壁ドンやハグしているシーンは、想像ができず、里帆の気持ちは静かになっていた。


「このパン屋、実はうちの後輩がやってるパン屋だよ」

「え、本当?」

「わん!」


 里帆の疑問に答えるかのように、芝犬が吠えた。もしかしたら、この子が希衣が言っている看板犬かもしれない。


「うん、この道まっすぐ行って、コンビニが見えるでしょ? その裏手にあるから。わかる? 大丈夫?」


 イケメンは背が高かったが、里帆の視線に合わせて少しかがんで、道を教えてくれた。中見もイケメンだ!と興奮したくなったが、なぜかピタっと何かに止められていた。


「里帆ちゃん、あんまり律法主義的に罪悪感持ったらダメだよ?」

「え、何で私の名前知ってるんですか?」

「だったら、自分の努力で罪が消えるのなら、イエス様が十字架で死んだ意味も無いよ。悔い改めで、心が縛られたら、本末転倒だよ?」


 なぜかイケメンは、自分の名前を知っているようだった。しかも今の自分の悩みを知っているようだった。なぜ?


「じゃあね! 散歩中だから」


 イケメンは、里帆の疑問に答える事はなく、去って行ってしまった。


 意味がわからないが、福音ベーカリーに行けば答えが見つかるかもしれない。里帆は、小走りに福音ベーカリーに向かった。

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