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クリスの秘策

 あれから数日がたった。

 すぐエイベルなら飛んでこれるのではと思ったのだけれど、いろいろ事情があるのかなかなかやってこない。賢者の力とは関係ないほうに問題があるのだろう。

 そもそも、数人を引き連れてエイベルが来ても、すぐにとらえられてしまうだろう。


「はあ、この生活も慣れてきたわね」

「色々プライバシーがないのはつらいが、僕らが死んでいないだけましか」

「人質だもの、殺さないわよ」

「人間たちだぞ、わからないだろう?」

「ブルーノお兄ちゃん、人間だからって色々勘繰り過ぎ」

「お前は平和ボケしすぎているんだ」

「そうかなあ」

「絶対そうだ。この状況で何で人間に希望を持てる」

「別に、人間に希望持ってるんじゃないよ。クリスちゃんが大丈夫っていうから、信じてるだけー」

「うん、絶対大丈夫だよ!」


 私は笑顔で言った。

 そして、待ち望んだ時間が来る。

 王族に私達は呼ばれたのだ。


「罪人ども、お前らを王様たちがお呼びだ」

「はい」


 護衛の人の言葉に、私達は従う。

 どんどんお城の中を歩いていくうちに、本当に豪華な建物だと実感する。

 ショートの家の数倍は豪華だ。

 大きな朱色な扉を、護衛の人たちがゆっくり開く。


「入れ」

「はい」


 中にはピンク系の茶髪にピンクの瞳のお妃様らしき人と、青系の茶髪の水色の瞳の王様らしき人がそこにいた。とてもゴージャスな服を着て、ふんぞり返っている。

 お妃さまはきつそうな顔立ちで、誰かに似ていた。

 凹凸がはっきりした身体は、とても羨ましい。高いヒールがさらに性格をきつそうに見せていた。

 王様は、少し太めだけれど、やっぱり性格がよさそうには見えなかった。


「シャロック国へようこそ。わたしがこの国の王様、ロックだ」

「わたくしは、ガラナ。御妃よ」


 くすくす笑うガラナ様。そして鼻で笑うロック王。


「立派な耳を持ってるんだな」


 どうやらやっぱり皆ミミが丸出しになっているらしい。

 私の目もきっと黒いのだろう。

 鏡がないので、確認できないけれど……。


「ボクは、ロマンヌ国王子、ショート・シュガーです」


 縛られたまま、強い目力でショートが名乗ったのは意外だった。

 てっきり怖がって泣くかと思っていたのに。


「へぇ、犬の耳の子が王子なんですのね」



 ガラナ様は好奇心あふれた顔で言った。


「とても小さいのね」

「……そうですね」


 シュガーは笑顔で返事をした。体が震えている。


「私の名前はクリスタルです」

「貴女が伝説の少女?」

「……はい」

「ちんちくりんじゃない」

「お妃様は、とてもスタイルがいいですね」

「当然ね」


 ああ、感じ悪い……でもきっと国民には優しくて、私達が嫌いなだけなのだろう。

 過去にいろいろあったから、仕方がない。

 きっといずれ理解し合えるのだから、大丈夫。


「で、あとのふたりは誰かしら。あの伝説の三人のふたりなのよね?」


 ガラナ様は手に持った扇でふたりを指した。

 先に名乗ったのはブルーノだった。


「ブルーノ・リーフです」

「へぇ、猫の獣人ですの」

「はい、そうですね」

「利口な顔をしているのね」

「どうも」

「でも、所詮獣人なのだから期待はできなくってよ」

「……そうですか」

「そして、そこのうさぎは?」


 今度はチェリーを扇で指すガラナ様。

 チェリーは笑顔を浮かべた。


「チェリー・ソルトです」

「あほっぽいわね」

「実際そうなので」


 あわわ、なんかブルーノがイライラしてるよ……。

 いつもチェリーをバカにするくせに、他人にされるのはいやなんだろうなあ。

 なんだかんだで、チェリーを認めているんだ。


「わたくしの息子、ロイはもうすぐ来るわ、そうね、……あの子はまだ体調が悪いの?」

「らしいな」


 ロック王たちが言う、あの子って誰だろう?

 首をかしげながら私達。

 そうしているうちに、ロイ王子がげんなりした顔でやってきた。

 目が、何で逃げなかったのかと問いかけてきている。


「シャロック国王子、ロイです……」


 声にも元気がない。ごめんなさい、という気持ちはもちろんあるけれど、まさか捕まるとは思ってなかったから……。


「皆さんを、人質にさせていただきます。それは父上達が決めたことです」


 淡々とロイ王子は言った。


「そちらの国をどうにかするかは、父上達が後で決めるでしょう。俺には決める権限はないので」

「…………」


 私達は返す言葉がない。


「また、元いた檻に戻ってもらうかは考え中ですが、おとなしくしているなら色時ぐらいは優遇しましょう」

「ご飯……」


 チェリーがぼそりとつぶやいた。やっぱりチェリーには空腹の限界だったのか、よだれが出かかっている。

 ブルーノがチェリーの足を踏んで、チェリーは正気に戻った。


「もうどうにもならない状況ですから、俺的にはいい条件だと思いますけど」


 ロイ王子は悲しそうに言った。


「あがいても、無駄なんですよ、皆さん」


 敬語の彼を見ていると、どこか寂しくなる。

 前みたいに普通にはもう会話できないのだろうか。


「あきらめてください」

「嫌よ」


 私ははっきり言った。


「クリスさん、ですっけ」


 まるで他人のようにロイ王子はふるまう。

 それが切なくて、泣きそうになる。

 私は深く頷いた。


「クリスよ」

「貴女は人間です。こちら側の人間なのでは?」

「……こちら側もあちら側もないわよ」

「言葉が乱れてますよ」

「もう、敬語なんかまどろっこしいわ」

「そうですか」

「私は自分の意思で獣人のそばにいるの。別に選ばれたからじゃない。好きでそうしてるんだから……」

「クリス」

「クリスちゃん」

「クリスおねーちゃん……」


 皆が私の名前を呼んだ。


「それに、腐っても私は選ばれし少女なの。特別な能力があるのをご存知?」

「……それは、何です?」

「いうわけないじゃない、ロイ王子。でもね、私は決めているの」

「何を?」


 聞き返してきたロイ王子と、注目する王族達。

 不安そうな三人の仲間。

 それを見て、私は笑顔で答えた。


「私達を攻撃するなら私の力でこの国を滅ぼすわ」


と。


更新ミスで、日にちがずれました。

申し訳ございません(´・ω・`)

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