↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/51

ボイスチェンジ!

 あれからチェリーはすぐに元気になった。

 ブルーノもそこまであと引かなかったらしく、いつも通り読書している。

 ショートも相変わらずかわいいちびっこだ。身長が伸びる気配などない。

 そんな時だった、朝起きてしばらくしてチェリーが変な声をあげたのは。


「なにこれぇ!?」


 聞いたことのない声だった。皆が一斉にチェリーのほうを見た。

 何があったのかと思えば、何も変わった様子はない。

 でも、声が別人だった。


「え、今しゃべったのチェリー?」


 そう……チェリーの声がめっちゃ低くなってたのだ。

 表情もとろんとしてるせいか……なんか色気を感じる感じ。

 十歳とは思えない、ハスキーボイスだ。少し息をするのがつらそうな気もするけれど。もしかして……だけど……。


「声変わりじゃないの?」


 男の人ってはっきり声が変わるんだよね? 小中学生のころ、周りの男子がだいぶ変わっていったのを覚えてる。懐かしいなあ、もうチェリーはそんな時期になるのかあ……。


「声変わりって何? クリスちゃん」


 純粋なチェリーは、声変わりについても知らないようだった。

 当然知っているブルーノがため息をつく。


「お前、変声期も知らないのか」

「え、声が変わるの?」

「そうだ、一定の年頃に声が低くなって大人の声になるんだ」

「……オレまだ十歳なんだけど」


 しょんぼりするチェリー。

 でも、見た目も子供ってより、美少年なうえ,体ががっちりしてるから違和感ないんだよねえ。なんか、キュンキュン来る声。

 私がうっとりしていると、ブルーノが小ばかにした顔で私を見た。


「何よブルーノ」

「たかが声で態度変えるなよ、クリス」

「か、かえないしっ」

「クリスちゃん、オレの事嫌いになるの?」


 半泣きで私にしがみついてくるチェリー。

 私はやっとこさの力で引きはがす。重いよ、チェリー!

 腕力もあるし、あざになるところだった。


「いやっ、ちがう。むしろ逆!」

「……この声好きなの?」

「それはもうすごくいい声だと思うよ!」

「……じゃあ、声変わりしてよかったかな」


 嬉しそうなチェリー。私も嬉しいです!

 私、いい声に弱いんだよね。

 しかし、ブルーノはなぜかご機嫌斜めだ。


「おっさん臭い声」

「えー」


 ぶいーんぐするブルーノ以外。


「おっさん臭いかなあ……」


 落ち込むチェリーに私は肩をつかむ。


「絶対そんな事ないっ」

「本当?」

「ふたりでずっと盛り上がってれば?」


 白けた顔で去っていくブルーノは、どこか怒っている様子だった。


**********


 次の日。朝起きてから、ずっとブルーノは声をあげない。

 いったい何があったのだろう?

 そう思いながらご飯を食べ終えて、いつも通り皆は自由に時間を過ごす。

 最近は旅芸人のふりも、面倒になり始めて宿にこもる日も増えた。

 もちろん動物や人間を使っての聞き込みは忘れないけれど……買い物ついででも結構いけることに気が付いたのだ。何より、目立ちすぎるのもよくないし。


「ブルーノ」


 私は机に身を乗り出してブルーノに話しかけた。


「…………」

「ブルーノってば! 返事してよ」


 うつむいたまま黙々と本を読むブルーノ。

 さっきから、ずっとこんな感じ。


「無視するなら、本を燃やすよ?」


 私は指に炎を宿し、脅した。

 もう起きてから何時間もたってるんだから、さすがに不安にもなる。

 なんか、顔色も優れない気がするし?


「……ああ?」

「! ブルーノ声変わりしてる? 低くなってる……あれ? チェリーよりも高くない?」


 確かに前よりは低いけれど、チェリーと違って綺麗な感じの中性的な声だ。

 アニメだったら、たまに女性が声を当ててるような、そんな感じ。

 頭がよさそうな、そんな声質はブルーノにぴったりだ。


「……そう言うだろうから嫌だったんだ」


 なるほど。比べられるのが嫌だったのか。

 と、後ろからつんつんと誰かがつつく。


「ボクも声低くなったよ?」

「え?」


 ニッコリ笑顔のショートがそこにいた。

 確かに少しハスキーなような。

 子供と少年の間の甘ったるい低めの声。

 なんか、アイドル歌手のようだと私は感じた。

 って……まだ七歳でしょ? 早すぎない?


「声変わりが流行ってるんだねー」

「のんびり言ってるけど、そんなわけないからね? チェリー」

「えー? うつったりはしないの?」

「しません」

「そうなの? クリスちゃん」

「うん、絶対ね」

「じゃあショートのはどういう事」


 さすがに発育も遅いショートに声変わりは早すぎると思うんだけど!


「さあ……」


 首をかしげる私達。

 そこで、ショートがせき込んだ。

 あ、なるほど、のどの風邪か!


「風邪じゃない?」

「……あー、オレものど熱いかも」

「チェリーも? ブルーノは?」

「僕は何ともない。普通だ」

「じゃあ、声変わりはブルーノだけね」


 まあ、年齢的にそれが妥当かな?


「よかったね! ブルーノ!」


 風邪じゃなくて、ラッキーだよ。

 この状況だと、うつっても仕方がないのに。

 まあ、私もぴんぴんしてるけれど……それはバカだからだろうし!

 ……威張ってて悲しくなってきた。


「何がだよっ、別に喜んでなんかないっ」

「え、私そう言う意味で言ったんじゃないけど、嬉しかったの?」

「!」


 真っ赤な顔になるブルーノ。

 もしかして、チェリーより先に声変わりしたのが嬉しかったのかな?

 まあ、そう言うのってあるよね!


「いいなあ、声変わり……」


 羨ましそうに言うチェリーは、次の日声変わりした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。