第十話 神の恋事情
皆さんにお知らせがあります…
今回を持って、東方時空伝は完結します!
皆さん、ありがとうございました!
訓と礫は二日かけてようやく神社に戻った。
あたりは真っ暗。神社の明かりが寂しく光っている。
「おい、訓殿。
なぜ盗人の様に、夜にそそくさと動くのだ?
何か、やましい事でもあるのか?」
「そんなんじゃねぇよ、人間の俺が妖怪のお前と肩並べて歩いてるとまずいことがあるんだよ。」
人間にとって妖怪とは「危険な存在」である。その妖怪と人間である訓が一緒に居ると、訓の人間からの信頼が無くなるのである。これは、巫女の霊夢にもあてはまる。
玄関の鍵は閉まっており、入る事は出来なかった。
「どうするのだ?
なんなら俺が壊してやろうか?」
「お前は何でも壊すな!」
訓と礫の会話を聞いて、霊夢が鍵を開けた。
「お帰り。
ん?隣のは…妖怪?」
「ただいま、こいつの事は後で説明するから先に入れさせて。」
訓は靴を脱ぎ、礫は足を拭いて居間に行った。
霊夢はお茶を出したが、片手には御札を持っていた。
「では…紹介しよう。
彼は礫、もと盗賊で相談屋のメンバーだ。」
「礫という。
霊夢殿、宜しく。」
訓は霊夢にペルト村での出来事を詳しく説明し、礫との経緯を語った。
「……と、いう事なんだけど…」
「事情は分かったわ。
礫が相談屋になるのは認めるけど、人間の前には出ない方がいいわね。」
「それに関しては、明日にとりの所へ行くつもり。
彼女なら、何か作ってくれるでしょ。
あ、そういや股助を見ないんだが…」
「股助ならついさっき、情報収集に行ったわよ。」
あいつ、俺に内緒で何やってるんだ…危ない目に会わなければ良いけど…
訓は股助が心配になっていた。村の襲撃についての情報をくれた時も、傷だらけになってた。股助にはあまり無理をしてほしくなかったのだ。
翌日、訓は礫と妖怪の山にある川へ向かった。
川につくと、そこには雛と楽しそうに話すにとりが居た。
「どもー、にとりー。」
「ん?君は前に文と居た人間だね。」
「ああ、ちょっと頼みたい事があるんだけど…」
〜三十分後〜
「はい、これが出来た物だよ。」
にとりの手には棒人間の絵が書いてある白い無機質なバッジであった。
「こ、こんなので大丈夫なの?」
「うん、出来るよ。」
訓がにとりに作らせたこのバッジ、これは人の目を錯乱させる物であった。
人外がこのバッジを付けると、人間のみの目が錯覚して、人外が人の姿をしてる様に見えるのであった。
礫は早速、バッジを付けた。すると訓の目には、ガッチリな身体を持ったダンディな男がいた。
「へえ、こりゃ良いね。礫の特徴が出てるよ。
イケメンなのが気に食わないが…」
「あはは、バッジがその者の特徴を捉えて人にしてくれるからね。
そうだ、訓の眼鏡も貸してくれないかな?」
「ん?良いけど。」
訓が眼鏡を渡すと、にとりはその場でレンズに何かをしていた。
返された眼鏡を付けるが、訓には何が変わったか解らなかった。
「にとり、何が変わったんだ?」
「礫を見てご覧よ。」
言われるがままに礫を見ると、礫の姿はいつもの岩の塊の姿だった。
「え?何で?」
「レンズに細工して、バッジがついてても、そのままの姿が見れるようにしたんだ。」
「おお!ありがと!」
「訓殿、これで俺も。」
「ああ、おおっぴらに外を出れるぜ!」
訓と礫が今後の活動について話していると、にとりが後ろから訓の肩を叩いた。
「訓、約束忘れたら困るよ…」
「ん、ああ。
そうだった。」
訓はにとりにバッジを作ってもらう代わりに、外の世界の技術について語るという約束をしていた。
辺りは暗くなり、夜になっていた。
「何やってるのだ、訓殿。」
「悪い悪い、語りだすと止まらなくて…」
二人が歩いていると、何処からか胸に響く重低音が聞こえてきた。
「な、何だこの音は……」
「これは…ベース?有り得ない…幻想郷にベースなんて。」
音の聞こえる方向に行くと、
月明かりに照らされて輝くベースと、真っ白な着物を着た男がいた。
「な、なんて音色だ…」
「ああ、ベースなのにまるでオーケストラを聞いてるようだ。」
訓と礫が聞き入ってると暗闇から巨大な蟻の妖怪が出てきた。
妖怪はまっしぐらにベースを弾く男へ向かった。
「まずい!あんた逃げろ!」
訓は大声で呼びかけるも、蟻妖怪は男を襲った。
しかし、奇妙な音と共に蟻妖怪は倒れた。
「な、何だ今のは…」
礫は慌てて構える。
男は無傷のまま、ベースを回した。
「少し、遊ぶかい?」
男はベースを蟻妖怪に触れさせると、両手でベースをかき鳴らした。その音は激しく、蟻妖怪は体を激しく震わせた後、息絶えた。
「な、何て力だ。」
「お、おいあんた。」
訓が呼ぶと、男はベースを背負ってこちらに来た。
「君達か…先から僕を見ていたのは。」
「ああ、俺は河海斬訓。相談屋をやっている。
こっちは礫だ。」
「僕は鞘之弦。
音を司る神だ。」
「か、神様!?」
「なるほど、あの強さはその為か…」
「ふふふ、今日は遅いからもう帰りなよ。
僕はいつもここで弾いているからね。」
〜翌日〜
訓は一人で弦の所へ行った。
「やあ、訓さん。
やはり来たね。」
「その口調だと、俺が来ると分かってたように取れるが…
まあいいや、あんたは何で此処でベース弾いてるんだ?てか何でベース?」
訓は弦の隣に座って質問をした。
「ベースであることに特に理由はない。あえて言うなら、今までで一番僕に合ったからかな…
此処で弾いてるのは…想い人が居るからだよ。」
弦は顔を赤くしながら言った。
「へえ、で誰なの?」
「名前は分からないが、緑の長髪で、白い巫女服を着た…」
どうやら弦は早苗が好きな様だ。
確かに早苗は大勢の男が惚れるだろう。容姿は勿論、性格も可愛らしく、作者も一目惚れしてしまう程だ。
「ふ〜ん、でその人に告白として音楽を捧げると…」
「ああ、もう少しで出来そうなんだが…最近蟻妖怪が邪魔をして完成しないのだ…」
「ふ〜ん、なら俺があんたの護衛をするぜ!
曲が出来るまであんたを守る、邪魔はさせないぜ!」
「ほ、本当か?
なら頼む!」
「おう!任せとけ!」
そして夜になり、訓は礫と共に弦の護衛をする。
「訓殿、何故俺も?」
「強いから。」
「それだけで!?」
二人が話していると、蟻妖怪が三体やってきた。
「おっとお出ましだ、行くぞ礫!」
訓は鞘から刃を出し、一瞬で二体を真っ二つにした。
礫は散岩をはなった。
『散岩
粉々になった石を四方八方に飛び散らせ、最後は目標に一気に当たるいわば拡散弾。』
三体倒すとさらに五体出てきた。
そのうちの一体は、凄まじく巨大であった。
「何だこいつ?!」
「恐らくはこやつらの長であろう。」
近くにいる四体は、訓と礫の攻撃で一撃だったが…長は強く、びくともしなかった。
「くそっ!勝てねぇじゃないか…」
息を切らして汗だくになる訓と礫。
すると弦がいきなり叫んだ。
「出来た!これは傑作だ、【愛の子守唄】と名づけよう!」
その声を聞くと、蟻妖怪はまっしぐらに弦を目指した。
「君、この曲を聞いて落ち着きなさい。」
弦の奏でる曲は、ベースながらも優しく穏やかな物であった。
それを聞いた蟻妖怪は静かに眠ってしまった。
「弦、出来たのか…」
「ああ、あとはこれを彼女に聞かせるだけだ。
」
「なあ、弦。
あんたの能力て…」
「僕のは、【奏でる程度の能力】だ。
ベースの音を奏でる事で、精神に刺激を与えたり、物理的な事もできるんだ。」
〜翌日〜
弦は守矢神社を訪問し、愛の子守唄を弾いた。
そして自分の意思を早苗にぶつけた。
「あ、あのごめんなさい。
他に好きな人がいるので…」
この言葉を聞いて弦は燃え尽きた。
まさか想い人に想い人がいるとは…恋とは複雑なものである。
しかし、弦は諦めずその後も曲を作り続けたそうだ。
ちなみに、弦の結果を聞いて訓は思い切って早苗に誰が好きか聞いてみた。
どうやら、外の世界で流行っているアニメのロボットだそうだ。
流石は早苗、常識にとらわれない。
東方時空伝へ終わるといったな。
あれは嘘だ。
いやー、エイプリルフールていいよね!4月1日さきk……
今日、4月3日じゃん!?
なんで!?え?だってカレンダーと時計は1日だよ!?
誰だよ!カレンダーと時計ずらしt…
あ、俺がずらしたんだ……
(*ノω・*)テヘ




