第伍歌<序>
再び下総の大橋へと差し掛かる一行。
一帯が異界と化しているため、ここを通らなくては江戸には行けない。
流徹は妖刀無瀬刺魔に手を添えて歩みを進める。
すると、一行目掛けて大岩が飛んでくる。
各々、跳躍でそれを回避する。
濃霧の中から徐々に巨体が姿を現した。
その巨大な脚部が橋を踏み抜き、めり込む。
大薙刀を薙ぎ払い、大きな咆哮を上げた。
暴れん坊譚五郎と再び相まみえる事となった。
流徹は妖刀を構え、跳躍し斬りかかる。
そして、懐へと潜り込み、大きく薙ぎ払った。
「水流剣!」
水飛沫が舞い、その水飛沫には譚五郎の血が混ざる。
「――!!」
譚五郎も驚愕している。
妖刀のその切れ味、そして、自らに傷を負わせたこと。
その傷が修復できない事。
「効いている……!」
葛の葉、球磨、介郎、菊三十兵衛と次々攻撃に加わる。
彼らはあくまで牽制だ。
しかし、譚五郎を撹乱するには十二分。
譚五郎は木槌や熊手など、様々な武具を駆使し始めるも、多勢に無勢。
初戦とは打って変わって徐々に譚五郎を追い詰めていく。
「やれる……これなら……やりきれる」
流徹が妖刀を再び構え、心臓に突き立てようとする。
だが、それは叶わなかった。
千を越える剣が宙を舞っていた。
譚五郎の意のままにその剣は宙を駆り、流徹へと襲い掛かる。
無銘千振。
それが譚五郎の奥の手であった。
「やはり……その無数の刀の逸話……」
球磨が呟く。
来る前に事前に作戦会議をしていた。
その時に、魔人としての譚五郎の正体。
それが話題に出ていた事を思い出す。
譚五郎、その真の名は……。
「権現より賜った大薙刀、岩融、その僧兵然とした格好にその体格、千の剣、七つ道具、おそらくはかの武蔵坊弁慶であろう」
怪力無双の豪傑として有名な比叡山の僧兵。
鬼の子としても知られる古き強者であった。




