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第肆歌<破>

 一行は急いで小屋を出た。


 異様な気配と共に歩いてくるのは男。

 長さの異なる二刀流を手に、ゆっくりと小屋へ向かってくる。

 天鵡織(てんむおり)で両面仕立ての衣服に身を包んだ男。

 その姿は鬼神の如き。

 他でもない、宮本(みやもと)武総(たけふさ)が歩いてくる。


 その修羅の如き形相、双眸に捉えるは流徹(るてつ)一点だ。


強者(つわもの)よ……」


 じりじりと距離を詰める強者の圧に、流徹は足がすくむ。

 ただ強者のみを求め剣を磨き上げてきたその圧倒的な妖気が一行をも包む。


「……武総さん!」


 お継雨(つう)が気配を感じて飛び出した。


「よ……せ……」


 お継雨の声も今は届かない。

 ただ魔人となり果てたその男は、かつて愛した女性に剣を振るう。


 流徹は走り、刀でその一撃を受け止めた。

 地が揺らぐ一撃。


 続けざまに小刀による追撃が放たれる。


 流徹は間一髪でそれを(かわ)す。



 鬼のような猛攻が繰り広げられ、圧に押し負けている一行は動けないままだ。


「……強者よ……」


 それだけ言って、再び剣を向けてくる武総。

 その突きを受け流すも、続く二撃目に肩をやられてしまう。


「がっはぁっ!」


 衝撃が木々をなぎ倒す。


 その怯んだ隙に、再び猛攻が迫る。



 一瞬。

 時間にして一瞬であった。


 武総が突如頭を抑えて呻く。


「あ……うぅ…………」


 戦闘に集中していた流徹の耳に、一つの音が流れてくる。

 それは笛の音。


 お継雨が笛を吹く。それだけの事で、この圧倒的な魔人は動きを止めた。

 そして、頭を抱えながら走り去っていく。


「……お継雨!」


 圧から解放された一行が駆け寄る。


「ご無事でしたか、皆さん……」


 お継雨の涙に、流徹は誓う。


「治世を守り悪人を斬るための剣……か。そうだな」


 その剣を言葉ではなく心で理解した。

 剣に呑まれた武総を目にして、ようやく。

 それが自分の末路と重なったからだ。

 強者のみしか見えぬ盲目。それが悪しき事だと。

 故にこそ刻み込む、真の活人剣(かつにんけん)を。



 また、その様子を見ていた刀鍛冶も、覚悟を決めた。

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