第肆歌<序>
流徹は小屋の外で、しばし悩んだ。
世の為と常に言って来たが、本質は人を斬りたいというものなのか、と。
彼は刀鍛冶だ。
それ故に刀を見れば持ち主の人柄は理解できるのだろう。
それは彼自身が重々理解していた。
「よいのか?」
球磨は小屋の中で黒乃獄門に聞く。
「あのような刀を見てしまってはおちおち黙って等おれんよ」
「一歩道を踏み外せば、それは……」
流徹は外の林の中に、何かの影を見る。
「誰だ!」
その木の隙間から現れたのは清廉な着物に身を包んだ女性、お継雨であった。
「なぜこのようなところに……」
「武総さん……」
そう言い残して、彼女はその場に倒れこんだ。
急いで駆け寄る流徹。
彼女は小屋の中で目を覚ます。
どうやら、丸一日寝ていたようだ。
「武総さんは!?」
飛び起きる様に上体を起こすと、彼女はすぐに辺りを探した。
「武総? こちらに来ておるのか!?」
球磨が反応する。
「……わからないの。でも、突然行方をくらまして……」
「武総さん……」
悲しみに暮れるお継雨。
「まったく、罪作りな男だな、あやつも」
流徹が呆れた声で言った。
彼女は科戸河湊との戦いの事を知らない。
だが、ここで言うのは憚られるだろうと、黙った。
菊三十兵衛が何かを言おうとしたが、彼は咄嗟に止めた。
目で合図をし、彼に訴える。
その後、菊三十兵衛は笑顔で言った。
「問題ないだろ、いずれ生きていれば会える。そう簡単にはくたばらんよ。腹でもすかせりゃそのうち帰ってくるさ。そういう男だろ」
その言葉に一行はどっと笑いがこみ上げる。
「違いねえ! 奴は剣を極めるまで死ねない。そうだろう?」
「ええ、武総さんは……そういう人間ですね」
黒乃獄門が茶を用意する。
その時、茶の水面が僅かに揺れる。
否、建物自体がカタカタと音を立てていた。
「なんだ!?」
異様な気配がこの小屋目掛けて迫ってきている。




