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第伍歌<急>

「そうだ! カッカッカッカ。この八魔人の力、思い知るがいい!」


 風魔(ふうま)が身体を起こしながら、崩れ落ちた鎧武者に溶け込む。

 お(まち)流徹(るてつ)が刀を構え直し、菊三十兵衛(きくさんじゅうべえ)が術の呪縛から解放された球磨(くま)を介抱する。


(わたし)は復讐には興味がない。ただ、唯一にして絶対の忍神(しのびがみ)である湾宗(わんしゅう)(まさる)を越えたいだけだ」


 皆がその名前を聞いた瞬間、背筋に異様な寒気が奔った。

 それは、体に刻まれた本能的な恐怖だった。

 怖気づいた瞬間、彼と一体化した鎧武者が襲い掛かってくる。


「流石忍者だ。汚い!」


「――戯曲・傀儡(くぐつ)人形は眠らず」


 鎧武者が空中に飛び上がり、回転しながら刀を振り回す。

 木製の地面を削りながらガリガリと進んでくる。


 迫りくる圧倒的な死の具現化に、流徹は皆に声をかけた。


「力を合わせてくれ。あの剣戟(けんげき)の局地を乗り切るには、連携が不可欠だ!」


 戦友一人を失った悲しみを乗り越え、一行は心を一つに合わせる。


「……御意!」


 それぞれ流徹、お町、菊三十兵衛、球磨を武器を構えた。


柳生新陰流やぎゅうしんかげりゅう……秘剣・逆風(さかかぜ)!!」

「忍び(かぶら)突き」

「獣裂き!!」

「空圧斬り!」


 流徹が刀を抜くと同時に斜めに切り抜け、その間を縫うようにお町が三点を一瞬のうちに突く。

 菊三十兵衛が乱暴に十文字に裂き、球磨が風の刃を放つ。


「――逆鏑獣斬り!!」


 四人の気迫と魔人の力が競り合う。


「うおおおおおおおおおおおっ!!」


 徐々に押される四人の技。

 だが、失った者と気を失っている者の手が重なる。

 魔人の力を押し返し、一行の攻撃が黄金の鎧武者に届く。


 鎧武者がバラバラに崩れ落ち、再び本体が露わになった。

 瞬時に土下座をし、命乞いを始める風魔。


「ひぃ! 許してくれェ!」


 それでも毒霧を放つ準備は忘れない。

 それを察知した流徹は崩れる甲冑を着込んだ。

 カチャリ、カチャリと音を立てながら歩いてくる。


「鋼鉄の甲冑を着た武士が革装備の忍者に戦で劣るわけがあるまい」


 奇しくも、鋼鉄の要塞に身を包んだ忍者が敗れる羽目となった今では皮肉にすぎない。

 流徹は刀を構える。


「俳句を、詠めええええええっ!!」


 刀は風魔の身体を貫いた。

 風魔はぐったりとした。

 しかし、徐々に彼の体温が上がっていくのがわかる。

 それはエネルギーの逆流であった。

 流徹は離れようと試みるも、がっちりと捕まえられていた。

 その常人離れした膂力(りょりょく)からは逃げられない。


「おさらば!」と爆発四散した。


 毒にやられた角信(かくのぶ)が飛び出し、流徹を庇った。


「角信!?」

「言ったろう……魔人を倒すまでは……簡単にくたばらぬ、と……」


 それだけを言い残し、彼は息絶えた。


「角信ーーーーっ!!」

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