第伍歌<序>
鋼鉄要塞攻略決行の音が法螺貝から奏でられた。
簡易的な投石、弓矢による牽制が要塞に仕掛けられる。
だが、要塞はびくともせずに前進し、側面に備えられた大砲が火を噴いた。
「鉄砲隊、前へ!」
沢木北下で鉄砲隊が前進する。
「よく引き付けるんじゃ……よく引き付けるんじゃ……」
大砲の爆音と火薬の破裂音、金属音が戦いを奏でる。
その頃、少し離れた森の中で足軽衆が少し大きな大砲を運んで来た。
そこに書かれていた文字が一行を驚愕させる。
「人間大砲!?」
「はい。江戸幕府謹製の試作品にございまする」
棋歩が森の木陰から出てくると、金色の装飾が木漏れ日を反射した。
「これで最初から突入すればよかったのでは……」
「最初の攻勢には内部の敵を減らす重要な意味がありまする。これは貴方がたの戦力を最大限に生かす最も有用な作戦です」
しばらく経つと、戦場の方から真っ白な煙が上がった。
「無事に誘導は成功したようですな。では、健闘を祈りまするぞ」
流徹は不安な心を抑えながら、大砲へと入る。
それを見たほかも続いた。
「ッは、中で大暴れできるならこれほど楽しみな事はねえ!」
菊三十兵衛だけは戦を楽しみに……。
「狙いは構造的に脆く着弾時の生存性が高い……側面装甲!」
「測的完了。誤差修正上下角三度」
大砲の射角を合わせる。
「撃ちぃ方始めぇ!!」
耳をつんざくような音と身体を抉るような衝撃、風を切る奇妙な感覚と共に、周囲の景色が過ぎていく。
気が付くと鋼鉄要塞が目の前にあった。
側面装甲は柔軟性を持たせるために木製。
故に破壊できると踏んだのだろう。
音を置き去りにしたような感覚の後に、激しい破壊と力学の暴力がその場を制した。
「皆……無事か?」
「なんとかってところでござるな……」
「おうよ! こんなもんでへばる俺様ではねえ!」
鋼鉄と木材の混合建築がなされ、要塞そのものが巨大な一つの機構と化していた。
「はたらげー!」
巨大な鬼が内部に囚われた人間を馬車馬のように働かせ、歯車を動かす。
お町が巨大な鬼を背後から一突き。
「よっと!」
しかし、その鬼の背後から奇妙な出で立ちの男が現れる。
その奇妙さの一端は巨大な舌にあった。
妖怪垢嘗めだ。
瞬時に、距離をとる。
だが、垢嘗めによる舌攻撃が素早く繰り出された。
直接の接触を避けるものの、少しだけ衣服を掠る。
溶解性の唾液が忍び装束を溶かした。
しかし、その瞬間、彼女がより俊敏に、攻撃的になる。
「忍者は裸の方が、強いのよ!」
お町の苛烈な連続波状攻撃によって垢嘗めが倒れ、塵と消えた。
「大丈夫か、お町」
流徹は駆け寄り、近くにあったぼろ布をかける。
「うん、大丈夫だけど……」
目の前にある床の染みを見た。
それは人の形をしている。
今まで多くの人間がここで強制的に働かされ、殺されていったのだろう。
一行は働かされている人間を逃がしつつ、要塞の最上部へと向かう。




