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真面目で口うるさい婚約者が言わなさそうな事をチートスキルでこっそり言わせています。  作者: モチダ


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13/15

13 アーロンの後悔

アーロンは後悔していた。


アリシアを守るために、アリシアの抱えているものを知りたかった。

頼ってほしかった。

話してもらうことがアリシアを苦しめるなんて、思いもよらなかった。


(ヤバい??口止めをされているのか?もしかしてアリシアは命を狙われている!?)


あのアリシアが震えている。

声を詰まらせ、逸らした目には涙が溜まっている。


(別れたくないって何だ?まさか、僕を巻き込まないために別れを選ぼうとしていたのか!?)


そんなことはさせない、認めない、と思わずアリシアを抱きしめる。

「大丈夫、大丈夫だからアリシア。」


不甲斐ない自分に腹が立つが、アリシアをこれ以上不安にさせてはいけない。

なるべく優しい声色を心掛け、アリシアを落ち着けるため背中をトントンと叩く。


「無理に聞き出そうとして悪かった。もういいから、話さなくていいから。」



心なしか、腕の中のアリシアの緊張が少し解けたように感じる。

良かった、今度は間違えなかったみたいだ。


「アリシア、何も聞かないけどこれだけは言わせてくれ。僕はアリシアと別れるつもりはない。何があってもそばにいる。」


アリシアがおずおずと顔を上げた。

ようやく、ちゃんと顔を見れた気がする。

涙と鼻水でぐちゃぐちゃな事以外は、元気そうでよかった。


「⋯⋯」

ハンカチで拭いてやりながら、アーロンは話題を変えようとして少し悩んだ。


本の話は避けた方が良さそうだ。

また街に誘いたいけど、あの日を思い出させる話も駄目だろう。

街、カフェ、カツラ(隠語)⋯

新しいカフェが出来たと聞いたから、連れて行ってやりたいけど、誘うのは今じゃないな。


鼻水を拭ってやった所で、アリシアの落ち着かない様子に気が付いた。

心なしか顔が赤い。


「アリシア?もしかしてまた熱が⋯?」


慌ててアリシアの額や首筋に手を当てて確認をする。

そこまで不自然な熱さは感じないから大丈夫だと思うが、念のため医者を呼んだ方が良いかもしれない。

メイドに伝えようと立ち上がりかけた所で、アリシアの小さな声が聞こえた。


「アーロンは⋯」


向き直ってアリシアの顔を見る。


「アーロンは私のこと、妹か何かだと思ってる…?」


涙を拭かれ鼻水まで拭われ、額や首筋への触り方も、異性に接していると言うよりは、育児か介護を連想せずにいられなかったアリシア。

アーロンへの不満が思わず口から出てしまい、アリシアは後悔した。


(仕事と私どっちが大事?くらい面倒くさいこと言っちゃった)


実際に妹としか思えない婚約者からこんな質問をされて、「そうだ」と答える人間もそうそういないだろう。

アーロンは間違いなく、そんな人間じゃない。


「アリシア⋯?」



(僕はまた何か、アリシアの気に入らない事をしてしまったのだろうか…)

考えても分からない。


分からないから聞きたいけど、先刻の今だ。

聞いて良いのか分からない。

分からない事だらけだどうしたものか、と悩んで、返事をしていない事に気付かないアーロン。


「え、もしかして妹でもない?ペット??森の野生動物???」


「ん??…何を言ってるんだアリシア?確かにきみは小動物の様に愛らしいが⋯」

微笑ましいアリシアの言葉に笑いそうになり、「ちょっと待て」と思い直す。


(はっ!もしかしてこれも何かの隠語だろうか?妹?ペット??野生動物?????)


「ペット…」と呟きながら何やら考え込むアーロンの隣、アリシアはふと1冊の本が目に入った。


(こ、これは⋯!呪いで文鳥にされた令嬢が、人間不信の王子様と結婚する話!!)


勿論それだけの物語ではないが。

呪いの解けたヒロインが他の人間の目に触れる事を疎む王子が、「また檻に閉じ込めたい」と笑っていたのがアリシアには衝撃的だった。


「檻⋯閉じ込める…⋯」


(ペットとして見てるなら、アーロンも私のこと閉じ込めたいと思うのかな…?うーん…でもあれは王子の独占欲からのセリフで、他にも⋯…あ!ダメだ思い出しちゃ!!違うこと!!違うこと考えよう!!!)


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