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「アリシア」
アーロンが1冊の本を差し出す。
(そ、それは⋯!義母にいじめられた令嬢が、助けてくれた王子様と結婚する話!!)
勿論それだけの物語ではないが。
ヒーローが王道とも言えるさわやか王子様キャラで、アリシアとしては比較的安心して読めた1冊である。
「この付箋は、気に入ったとか気になったとか、そう言うページか?」
アーロンがパラパラとページを捲りながら聞いてきたので、アリシアは思わず奪い取る。
「そ、そう!気になったページ!!」
アーロンは気にした様子もなく、次の本に手を伸ばす。
(あ、あれは⋯!義母と義妹に冤罪をかけられた令嬢が、助けてくれた幼なじみと結婚する話!!)
勿論それだけの物語ではなく。
ヒーローが年下甘えん坊キャラで、アリシア的にそこまで琴線に引っかかりはしなかったものの、幼なじみと言う関係性がドキドキした。
「これも?」
「これはこれで気になるページがあって…」
(あれは義母と義妹と義兄に売られそうになった令嬢が、助けてくれた庭師のお兄さん(実は隣国の第三王子)と結婚する話!)
(あれは義母と義妹と義兄に殺されそうになった令嬢(実は黒幕が実父)が、助けてくれた騎士と結婚する話!)
奪っては次の本、奪っては次の本を繰り返すこと17回。
「アリシア、ここにある本を全部読んだのか?」
とっさに奪い取ったロマンス小説達の、背表紙も全部隠すように抱え込む。
自分で選んで買った作品ではないが、タイトルから内容及びヒーローの属性、ひいてはヒーローが言いそうな甘いセリフの数々を推測されたくなかったのだ。
生憎この世界のロマンス小説に、日本で流行った長タイトルのような親切設計はないし、仮にあったとしてアーロンに甘いセリフを推測などと言う高等技術を求めるのは酷であろう。
「全部読んだんだな?」
「⋯っ」
こういう場合、黙秘は肯定と受け取られる。
それはアリシアも分かっているが、付箋だらけの本を抱えて「読んでません」などと答えられるほど、面の皮が厚くなければ、肝が座ってもいない。
「⋯それじゃあ、質問を変えよう。」




