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ヌーヴォー・アヴェニール   作者: 龍槍 椀
泣き言は言わない
41/111

クロエ 医務室で秘匿された陰謀を感じる

サブタイトル、若干変更しました。




 


 見知らぬ、真っ白な天井…… どっかで、似たような事有ったね。







 何時だったっけ…… でも、今回は理由は判ってるし、枯渇したの魔力だから…… まぁ、 ” 意識を失うまで使うって、どうよ? ” な、訳だけど、体力は全然、問題ない。 ちょびっと魔力が戻ったら、意識だってすぐ戻る。 しんどいけどね。


 でも、ここ、何処? まだ、意識は微睡んだまま。 もうちょっとしないと、覚醒出来ないわよね。



 私は…… 



 そうか、医務室に居たんだっけ。 あの子…… 助かってればいいんだけど。 大公家同士がどうとか、相手が嫌悪感ヘイト貯めてるとか、そんな事、 ” 人の生死 ” の前では、ちっぽけな事。 まず、龍王国の民なんだ。 失われていい魂なんて、一つも無い。 




       そう。  私は信じているのよ。 




        世界は悪意に満ちているって




 一つでも多く、その悪意に対峙出来る、人の子の魂が必要だって。





 まぁ、今回は、ちょっとヤバかったよね。 まさか、大魔法があんなに魔力を使うものだったなんて、思いもしなかった。 宝珠に魔力を注ぎ込んだ時よりも、あっさりと、魔力を吸い取られた。 


 ほんと、気を付けないと。


 まぁ、そんな訳だから、あの魔導書は、固く封印されているのよね。 理解した。 もしさぁ……要求される魔力よりも、自分の魔力の保有量が少なかったら、体力やら、体を構成する血肉が、消耗されるのね。




 母様が、枯れ木みたいになったのって、そう言う訳だったのかぁ……




 意識が、浮かび上がってきた。 段々と、周囲の状況がわかって来た。 私の事を心配そうに見ている、顔、顔、顔。 大好きな人達の顔。 心配かけちゃったな…… ゴメン。


 しっかりと、意識が戻る。 うん、大丈夫。 魔力も随分回復した感じがした。 力が戻って来てるね。 あれ? 学院の医務官じゃなくて、アレクトール医務官! 久しぶり! 元気にしてた?





「アレクトール様? お久しぶりです」


「……お嬢様……またこんな無茶を……わしの心臓を、止める気じゃな! 知らせを聞いた時、気が気では無かったんじゃぞ」





 ふと横を見ると、なんと、アレクサス黒龍大公翁おじいちゃん。 優し気に微笑んでいる。 やっぱ、私のやった事は、間違いじゃ無かったんだね。





「良くやった。 セラフィムから知らせを受け、アレクトールと一緒に来た。 ラージェから、一連の報告は受けておった。 此処に居る、ホテップ男爵令嬢から、何を盛られようと、しておったのかもな。 仕掛けて来た、馬鹿の事は、任せろ。 単なる ” 邪な ” 想いからの「馬鹿な振舞い」か、それとも、背後に何かあるのか……  ―――調べねばな」





 やっぱり、大公翁おじいちゃんだ。 私が思っていた事、ズバリと言い当てる。 でも、セラフィムって?





「孫娘の【サロン】で、おぬしが、倒れたと聞いた。 直ぐに、アレクサスに連絡を入れた。 どうも、情報が交錯していたようじゃな。 慌てたぞ」






 低く無いが、渋い声。 優しくもあり、冷徹さも感じさせる。 ん~~、孫娘の【サロン】? って事は…… だ。


    やべ~~~!!! 


青龍大公翁閣下だ!!! お、御名前は!! 思い出した! 挨拶せねば!!






「 誰か……座らせて下さい……」






 アレクトール医務官が、どっさりのクッションを背中に当ててくれた。 上体を起こして、ベットに座ったままだけど、出来るだけ丁寧に頭を下げる。






「このような姿で、誠に失礼致しましす。 お初にお目に掛かります。クロエ=カタリナ=セシル=シュバルツハントと申します。 セラフィム=エルグランド=アズラクセルペンネ青龍大公翁様。 以後、お見知り置きを」


「うむ、ご丁寧な挨拶いたみ入る。 話はマリーから聞き及んでいる。 と云うより、学院の話で、そなたの名が出ない事は無いくらいに、聞いている。 仲良くしてもらって、誠に有難う」


「もったいのう御座います、青龍大公翁セラフィム様」







 青龍大公翁セラフィム様の頬に、笑みが浮かんでいる。 マリーは、そんな青龍大公翁セラフィム様の顔を見て、驚いているねぇ…… なんでだ?  やっぱ、黒龍大公翁おじいちゃんみたいに、めったに笑わないのか? この年代の男の人って、笑ったら死んじゃうの?



        もう、素敵な笑顔なのに……



 他に、 マーガレット、 アスカーナ、 ビジュリー、 ギルバートの顔もあった。 みんな、ゴメンね。心配かけたね。 でも、もう大丈夫よ。 ちょっと、魔力切れ起こしただけだから。そんな心の中を読んだかのように、言葉でぶん殴られた。





「お嬢様……魔力切れで、死に至る事も有りますぞ! くれぐれも、お気を付けください!!」





 うわっ、アレクトール医務官おじいちゃん、マジで怒ってるね。 ゴメンよ……心配かけた。 でも、マジでヤバかったんだよ。 ほんと、少しでも戸惑って、時間を失っちゃたら…… で、マリアベル……大丈夫なの?





「あちらのお嬢さんも、もう、心配はない。 マーガレット嬢が急ぎもって来てくれた資料で、学院の医務官達も、間違いのない、 ” 治療 ” を、している。 あちらは、二、三日回復に時間が掛かるが、もう、大丈夫じゃ」






 アレクトール医務官。 今度は、ニッコリと大きく笑ってくれた。 ほぉぉぉぉ 大きく息が漏れたよ。 護り切れたんだ。 そうか……   護り切れたんだ!


      やっほい!


 元気百倍だ! 無理に無理を重ねて良かった! 一人で、心の中で、お祝いの踊りを踊っていると、アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんが、重~~い口調で、話し始めた。 此処に居る人たちは、多分一蓮托生なんだと思う。 だって、アレクサス黒龍大公翁おじいちゃん、普通に喋ってるんだもの。





「どうも、今回の件は、色々と裏がありそうじゃな」


「セラフィムもそう思うか」


「まるで、クロエを目標とした、” 暗殺 ” の様じゃな。 ” 誰が ” は、まだ分からん。 事実、問題の公爵子息が単独でした事かもしれん。 単に躍らせて居た可能性もある」


「儂も、同意見じゃな。 あの者がしでかした、” 行為 ” が、別な者の必要条件の一つだったとも考えられるの。 まさしく、踊らされるておるとは、本人も判らんかったのじゃろうな。 しかし、誰がそれを示唆したか……  白龍の奥深い所で、何が行われておるのかの、クーベルも知らされて居らんな、これは……」



 たしか、クーベルって、クーベル=エルネスト=ブランモルカーゴ白龍大公翁様のお名前じゃぁ…… お爺ちゃん達、やっぱ、つるんでるんだ……


 しっかし、私、なんで暗殺対象になってんだ? 考え過ぎじゃね? 今回は、馬鹿が私を…… ホニャララ…… しようとして、やらかして。 問題のクッキーを、妹のマリアベルが、多分つまみ食いしたと。 そんで、エリーゼ様のお茶会で、 ” 特別ブレンド ” の、お茶を飲んじゃった…… って事で。





「偶然が重なったと、思いたいですわ。 第一、私にそこまでする価値があるとは、思えませんもの……」





 暫しの沈黙の後、アレクサス黒龍大公翁おじいちゃんは、重い口を開いたんだ。 トンデモナイ事を私に、ぶちかましてくれた。





「クロエ。 お前が思っているほど、周りは、お前の事を軽くは見ておらんぞ。 強い龍印の持ち主であり、第二王太子の婚約者。 それに、国外の要人から受けている守護の精霊誓約。 更に物怖じしない行動と、胆力。 目の見えている者には、頼もしくもあり、排除すべき敵でもある。 ” 最悪を想定する ” のでは、なかったのか? 悪魔を身の内にとんでもない……」


「御爺様!!!」





 やだ! なんで、その名前で呼ぼうとするよの!  ……もう、嫌だなぁ  ……そんな事無いよ。 力ない、田舎娘にそんな高評価する馬鹿いないって! ふんわりと笑みが顔に浮かぶ。 うん、苦笑いって奴。 そんな、私の笑みを見ても、硬い表情が変わらないアレクサス黒龍大公翁おじいちゃん。 お爺ちゃん……それって、もう、抜け出せない泥沼に首までハマってるって事ですか? 


 ワタシハドウスレバヨイノデスカ?


 アスカーナが、遠慮がちに声を掛けてきた。





「あの…… クロエ様の名誉は損なわれますが…… 「命」には代えられません。 今回は、マリアベル公爵令嬢と同様、体調を御崩しになり、医務室に運び込まれたと、そう発表された方が…… 姿の見えぬ敵も、警備が厳重になったと考え、手出しを控えるのでは……」


「うむ…… よく見た。 そうじゃな。 今は、それが最善じゃな。 アレクトール、学院の医務官と話を。 名誉は彼らに。 事実は隠匿する」


「御意に」





 そんな事を、当事者の私を置いてけぼりに決めて、みんな了承しとった。 なんで? 私の意見は? どうして? 無視かよ!! おや、いやにマーガレット静かだな。 こんな時は、一番に騒いでいる筈なんだけどなぁ…… なんで、涙目?





「ご、ゴメン。 私…… クロエが、ここまで…… するって…… お、思ってなかった…… ゴメン……」





 なんで、泣く!!! 泣いてる女の子は、もっと苦手なんだよ!! り、理由は! 泣いてる理由を!!!





「私が…… もっと早く気が付いて、もっと負担の掛んない治療法見つけてたら…… クロエがこんなに成るまでしなくても…… あ、アレクトール医務官の言葉で……  凍った。 直前まで笑い合ってた、クロエが…… い、居なくなっちゃうかもって…… そ、そんな事…… わ、私の…… ち、ちから不足……」





 うぎゃぁぁぁ!! 何言ってんだ!!! マーガレットが居たから、貴女が調べてくれたから、一人の命が助かったのよ!! 私は最善を尽くしただけ。 護るべきものを護っただけ! 貴女は、何も悪くない。 畜生! こんなにも思ってくれてるなんて!! よし、ちょっと耳かせ!





「マーガレット様、ちょっとお耳を」


「う、うん。 なに?」




 顔を寄せて来る。 黒~~~い笑いを頬に乗せてから、言ってあげた。





「  辺境生まれ舐めんな  」





 目を丸くして…… 茫然として…… なにか、思い当たったんだろうね。 同じような笑いを頬に乗せた、マーガレット。 やっと、笑ってくれた。



 よかった。



 うん、私は、そう簡単に死なない。 これでも、何度も死線を潜り抜けて来たんだ。 どの位ヤバイか、体感できちゃうんだな。 だから、本当に死にそうな時は、覚悟を決めて、 ” 笑ってる ” ね。



 父様や、爺様みたいに。 



 だから、大丈夫。 私、必死だったけど、あれくらいじゃ、死ぬ事ないもん。 ちょっと、ヤバかったけどね。 だからさっ、 マーガレット。 貴女が気にすることないのよ。 貴女は貴女で、精一杯やったじゃんか。  でも、とっても、嬉しいよ…… そんなに想っていてくれてたなんてね。 だからさっ……



 貴女の気持ち、有難く受け取るよ。




^^^^^^^^^^^



 今、私の着ている素敵なパジャマ、どうしたの? 確か戦装束(素敵ドレス)着てたよね。 お気に入りだったんだ! あぁ、汚れちゃったから、洗いに出したの?





「あの…… この、パジャマは?  ……それに、ドレスは?」





 今度は、マリーが、しおしおになった。 残念なお知らせがあると。 私の素敵ドレス、毒素をたっぷりと吸い込んだんで、焼却処分だって。 アレクトール医務官が、頷いていた。 マーガレットも同意。 どうにも手の施しようが無かったらしい。 なまじ洗ったりしたら、毒素が巻き散らかされて、それこそ大惨事に成るって。


 胸に下げていた宝珠は徹底洗浄。 マーガレットが責任を持って、洗浄したと。 今も胸に有るけど、昏睡状態の時に、してくれたんだと。 分解してから、熱湯で煮沸後、水の精霊の祝福された水で、徹底的にね。 おかげで、毒素は完全に消えたって。 保証するって……




 あぁぁぁぁぁ!!!! 奥様と、ソフィア様になんて言ったらいいの~~~~~




 今回の事件で、一番、痛かった。 これから始まる社交シーズン…… ドレス無しだよ…… あんな、素敵なドレス…… 二度と買ってもらえないよ……   凹む……





 *************




 回復も早かった私は、直ぐに授業に復帰したね。 食らいついたら離れんよ! こっちは道楽で勉強してんじゃない! 手に職を付けるんだからね! もう必死さ! 幸い、そんなに遅れなかった。 それにね、もうすぐ、二年生のメインイベントがあるんだ。 ちょっと楽しみにしてたんだ。


 二年生は、学院の外で、校外実習が義務付けられているんだ。 次代のリーダーになるべく、学院で研鑽を続けているけど、何が自分に足りないかを見つける為にね。


 当然、行政科は全員参加だよ。 騎士科もね。 あいつら脳筋だから、ここぞとばかりに元気出てるよね。 魔法科も実戦派は参加するって。 研究職狙いは、学院に残って専門に勉強だってさ。 貴族科は…… まぁ、有志のみ。 でも、今年はミハエル殿下が居るから、お近づきになりたい高位貴族がたんと、参加するってさ。 



 仲間内で、参加するのは、私とメイドズのエル、ラージェの三人だけ。



 ビジュリーは当然として、マーガレットも、アスカーナも、御残り組。 専門家だもんね。 マリーは社交が苦手だし、野外活動も不得手。 待ってるって。 そうだよね。 生粋のお嬢様だしね。 高位貴族が軒並み居ないから、羽根伸ばすって。 中庭の御茶会で、他家の使用人さんとかと、意見交換会するって。 色んな話、聞いとくって。 流石!


 それで、私とエル、ラージェの三人。 同じ組になった。 きっと、何かしらの圧力をかけたんだろうね。 珍しいもん。 行政科と魔法科と騎士科が、一つの組に集められるって…… でね、その組……


 なんで、騎士科の脳筋達と一緒なの?

 完全、武闘派の中に入るって、どういう事なの?

 その上、高位貴族が、私と、ギルバート様だけって?




         そんで、行先……



      魔物が徘徊する、スターブの森って!!!




   単なる官吏志望の人間に、何を期待してるんですか!!!







ブックマーク、評価 有難うございます。


本日も順調に遅れております。


推敲に時間が掛かる事、掛かる事。

 

御見苦しい点、多々ありますが、何卒ご容赦を!!

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