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赤い果実

凛花はコンビニ袋をガサガサしながら言う。

中には大量の酒とトマトが入っている

「ねえ」


ステフはベランダにいてまた煙草を吸っている


「トマトってさ」


凛花は鬼殺しを取り出す。


「普通に食べてるけど、昔は毒って思われてたらしいよ」


ステフはちらっと見る。


「そうだな」


凛花が止まる。

「なんだ、知ってる感じ?」


ステフは短く言う。


「食べたのは恐らく人類初だ」


「……ほう?」


嵐で荒い波と揺れる船

男たちは新天地を目指していた

嵐を超え陸に上がる


「流石にあれは死ぬかと思ったな」


ステフが呟く。


凛花が小さく言う。


「あんたが言うって事は相当ね」


甲板の上。


一人の男がいる。

エルナン・コルテス


凛花が言う。

「誰だよ」


「トマトを持ち帰ったおっさんだ」

凛花はおまえもおっさんだろという言葉をのみこむ


船には見慣れないものがあった。


赤い実。


「それ、なんだ」


ステフが聞き、男達は答える


「分からん、おぞましい色をしてるな」


「体には良くなさそうだな」


誰も知らない、ただ珍しく持ち帰った物


凛花が言う。

「今だと当たり前の食べ物なんだけどねぇ」


「当時は毒かもしれないって言われてるし」


ステフはその実を見る。


赤い。


丸い。


腹が減った。


「食えるだろ」


凛花が即ツッコむ。

「いやいやいや!!」


周りの人間が止める。


「やめろ!」


「死ぬぞ!」


だが——


ステフはかじる。


周りは絶句、あー死んだわこいつ。といった目を向けられる


「うっ!?」


「吐き出せ!」

「水を持ってこい」

周りがざわつきだす


「うっ、うまい」


凛花が身を乗り出す。

「お約束かーい!」


ざわざわざわざわ


「生きてるぞ…」


「毒じゃないのか…?」


ステフはもう一口食べる。


「問題ない」


凛花が笑う。

「雑な安全確認すぎる」


それから少しずつ広まる。


「食えるらしい」


だが——


「いや、やっぱ怖い」


最初は観賞用。


凛花が言う。

「すぐには広まらないんだ」


ステフは頷く


「疑うのは普通だ」


暫くすると


「食べるやつが増え、問題ないと知る」


やがて栽培が始まる。


凛花は袋からトマトを一つ取りだす。


「これがその結果か」

一口かじる。

「うん、美味い」


トマトを食べながら凛花が言う。


「でもさ」


ステフを見る。


「なんで食べたの?」


ステフはノータイムで答える

「死なないからな」


凛花が固まる。

「それ、お前だけだろ」


ステフは続ける

「後から思ったんだが、最初に食ったのは俺だが俺は毒が効かないからな。実際毒があっても俺には判断出来ない」


「あん?てことはあんたに毒見役は.....」


「勤まらんな」

ステフは小さく笑う。


「あんたからのお裾分けは極力貰わない様にしよう」


赤い実は、今や当たり前のように家庭にある


かつて毒と呼ばれていたことを、ほとんどの人は知らないまま。

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