護衛任務
【警告】ゲートが開きます…ご注意下さい。そしてただちに…付近の適応者以外は退去願います…一般人並びに非戦闘は退避を願います…。
ググッ…と大きな扉が轟音を響かせ…重くゆっくりと開いてゆく、その隙間からうっすら見える目の前の世界は既に荒廃していて危険な雰囲気に満ち溢れている。
そして完全に上がりきった瞬間、大門に設置されていた古びたスピーカから音声が発せられる。
「期限は2日間…それ以上経過した場合…死亡したと見なし、こちら側からの救助・捜索は一切致しません。」
冷酷に聞こえるかも知れないが、この世界ではいつもの事であり…それだけこのゲートをくぐり抜けた先の世界は危険なのだ。
「よしそれじゃ〜行きますか」
そんな過酷な世界に唯一踏み込む事が出来る人間達…適応者達が門を潜って今日も仕事へ向うのだった。
ー【依頼生存者を合流ポイントまで護衛せよ】ー
はァっ!
パンッ!パン!…カチッ
迫りくる敵に武器の照準を合わせ生物の急所である頭部に狙いを定め発砲し応戦するが…。
「チッ弾切れか…」
完全に多勢に無勢だ、周囲を囲まれじりじりと距離を詰められてしまっていた。
こうなった訳は話すと長いが…とある任務を受注したのち…大きな外傷はないものの危険な状態になっていた対象を発見した後…救助する流れとなったのだが。
うっ…ガァーッ!
ッ!?
しかし対象をいち早く救助するため周辺の索敵を怠り警戒を緩めてしまったの失敗だったのだ。
「くっ…完全にしくじった」
そして突如、不意を突く形で背後に現れた食屍達の襲撃に対応出来ずじりじりと追い込まれてしまった。
地面には使い切った薬莢が散らばっており、替えの弾薬が無くなった為、既に拳銃は投げ捨ててしまった。
背後には護衛対象が身を震わせていてこの現実を受け入れられず大粒の涙を流し目を閉じて諦めていた
即座にナイフに切り替え応戦する、首に狙いを定め適度な間合いをとりながら、一体一体斬りかかるが一向に数が減らない…。
非戦闘員を守りながらの戦闘の為、一瞬のミスで取り返しのつかない事になってしまう…このままの状態が続けばやがて、集中力も体力も限界に近づく…だからその前に決着をつけねば…少しでも気を抜けば自分諸共ここで死ぬ。
緊迫した空気の中、頭の中でこの窮地を脱する方法を模索するがいい考え浮かばない…浮かぶのは任務を受けてしまった自分への後悔…。
「やっぱり、護衛系のミッションは苦手だよっ!!」
もうヤケクソといった感じに目の前に立ち塞がる食屍達へと立ち向かっていくのだった。
その後…切って、切って、切って、一体ずつ確実に首を跳ねるが、何処からともくどんどんと湧き出る群れに嫌気がさしてくるとその瞬間。
グォオッェ゙ッッッァ!!
突如とてつもない咆哮が響き渡った
「まずいな…強襲型までいるのかよ」
こちらに向かってくる食屍の中に一際大きな腕を持ち周囲を跳ね飛ばしながら突進してくる。
ガっーァ!!ブッゥゥゥァぁ!!
けたたましい雄叫びを上げ物凄い速度でその巨大な剛腕を武器にタックルを仕掛けてきた。
(まともに食らったら死ぬッ)
ほぼ反射的にナイフを前に出し姿勢を低く保ちカウンターの体勢に身構える。
「これは…受け流すしか無いな頼むぜ、一か八かタイミングを合わせて…決まれッ【パリィ】」
ガチンッ!ナイフと腕の衝突によりとても鈍い音が響き渡る、敵との力の差は歴然で普通ならぺしゃんこだが紙一重で受け流しが間に合い【パリィ】を成功させ、強攻撃を受け流され狙いを外された強襲型の剛腕は地面に突き刺さった。
ヌッグァぅ゙ッッッ!?
動きが完全に止まり強襲型の最大の武器であるその剛腕は地面に封印されている今がチャンスだ。
「いまだ!【致命の一撃】」
その一瞬の隙を見逃さず即座にナイフで強襲型の首を跳ね飛ばすその体はやがて力を無くし地に伏せた。
「あとは食屍の群れだけ…」
強敵を難なく討伐し次へのターゲットへと的を絞っていると。
うっ…あッぁ、ああッぁ!?
グチャッ…グチャッ
強襲型だけに気を取られてる間、完全に無防備だった護衛対象は……
見るも無残に食い潰されていた。
ー【ミッション失敗…護衛対象の死亡】ー
敗因は分かっている、対象から目を離した事…油断した事…そして…
グッギャァ!!
「!?、くそッ!不味い速く逃げねぇと!!」
護衛対象を食した直後の食屍達は狂暴化するのだ、普段の鈍い動きは活発化し一時的に"覚醒"する。
ピピピッ【危険】敵の暴走を確認至急退避を…。
【危険】敵の暴走を確認至急退避を…。
【危険】敵の暴走を確認至急退避を…。
左腕に装着していた小型デバイスから多数の警告文章、これは…。
「やっぱり俺には護衛任務なんて!無理なんだよぉ!!!」
今まで長年と培ってきた技術と経験で切り抜けてきたが…敵が暴走した以上、この盤面をひっくり返す事はほぼ不可能そして、事実上…この状況からの戦線離脱は絶望的となってしまった。




