アマウルの容態
水菜さんに背中をポンと押され、ゆっくりドアを開ける。
「母さん……」
ドアを開けると母さんがベッドで眠り、横にはシャルウルが眠っていた。
ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……。
ゆっくりだが母さんの心臓が動いてることがわかる音がした。あぁ、よかった。
そう思うと腰が抜けて地面に座り込んだ。
「お別れを言いに来たんでしょう。もっと近づいてよく見てあげなさい」
水菜さんが僕が立つのを手伝ってくれ、母さんのそばまで歩く。
「母さん。いやだよ……」
手を握り、僕は泣いていた。
「ガリウル」
翔くんは僕の背中を優しくさする。
「あれ? ガリウル。来てくれたのか。しかしなぁ……アマウルさんは……」
「わかってます。手紙も見ました。覚悟は決めてあります」
僕がそう言うと、先生はニッコリと笑った。奇妙だった。人の容態が悪いと言うのにこの医者はなぜ笑えるのか。
「その時はそうだったんだけど、昨日だったかな。アマウルさんの病気がいきなり……」
「わかってます!! 分かってますから! それに人が一人死ぬかもしれないのによく笑っていられますね」
怒鳴るように声をあげ、先生の話に割り込んだ。この後少しの沈黙が僕たちの間に流れて言った。
数分経つと先生がやっと口を開いたのだ。
「なにか勘違いしてないか?」
先生はそう言いながら僕を見る。互いに目が合い互いに頭にハテナを浮かべている
「どう言うことですか? 母さんはどんな状態にいるんですか?」
頭を傾け、先生に聞く。
「アマウルさんの病気は昨日、突然魔法がかかったように治ったんだ。彼女の病気は僕らがどうしようがもう治らないくらいだったのに……」
「え……?」
僕はまだ頭の中が整理されていなかったその時、横から翔くんの声がした。
「ガリウルのお母さんはもう元気ってことですか?!」
そんなはずはない。そうだったらいいが、そんなこと信じられるはずもない。
水菜さんも翔くんも僕を見る。ここにいるみんなの顔を見渡すと誰一人として悲しそうな顔をしている人は居ないのだ。
「こんなのって……。もしかしてあの手紙は嘘だった? もしかして本当は病気じゃなかった?」
嫌な考えが僕の頭によぎった。
「いや、手紙も病気も全部本当なんだ。僕にもなにがなんだか分からない。ただ1つ分かることはあなたのお母さんはもう元気だと言うこと」
「……」
まだ受け入れられないが、僕は母さんのそばを離れなかった。信じたいと思ったから、母さんがまたきっと目を覚ますと思ったからだった。
僕らがついた日に母さんが目を覚ますことはなかった。知らぬ間に疲れたように僕は母さんの手を握り眠りに入っていた。
「…………」
上からボソボソと声がする。頭には優しいあの手の温もりがあった。
「母さん……」
薄眼を開けると母さんらしき人が僕の頭を撫でている。あぁ、夢で母さんに会えたのかと僕は嬉しくなっていた。
「ガリウル」
そう言って頭を何度も撫でてくれる。起きなきゃいけない。母さんが夢に出てきてくれて嬉しいよ。そう言いながらまた僕はゆっくり目を閉じた。
まだ感じる温かい手のぬくもりが消えないうちに。
何時間寝たのかは分からない。だが、僕がパチっと目を開けるとそこには夢と同じ光景があった。
母さんの優しい顔、優しい手で僕の頭を撫でて僕を呼んでいた。
「母さん!?」
僕は飛び起きて母さんの顔を見た。
「どうして!? 母さん!」
周りを見渡すと翔くんや水菜さんも笑顔で僕を見ていた。
「ガリウルよく眠れた?」
水菜さんが僕に聞く。
「う、うん……? まだ夢?」
「ガリウルもう夢じゃないぞ、つねってやろうか」
そう言いながら翔くんは僕の葉っぱをゆるく抓る。
「いたっ……! 母さん。夢じゃない?」
「ガリウル」
母さんは笑った。
「母さん!」
勢いよく母さんに抱きつくと涙が溢れ出てきた。こんな日がまた来るなんて思っていなかったのだ。
「でも母さん……なんで……? 嬉しいけどなんでだろう……」
母さんを見て聞くと母さんはまた笑ってまた僕の頭を撫でた。
「それはねーーーーーー」




